「2009年ウイグル騒乱」から12年 中共建党100年に隠された汚点

2021/07/10
更新: 2021/07/10

中国共産党が大々的な宣伝活動の下に建党100周年記念大会を開催した2021年7月、奇しくも中国共産党の長く衰えることのない人権侵害の歴史の一片を呼び起こす「2009年ウイグル騒乱」から12年目を迎えた。

中国の新疆ウイグル自治区で2009年に発生したこの騒乱事件は、中国共産党が執拗なウイグル民族迫害へと進む岐路となったと言われている。同事件発生日から12年目を迎える数日前にインド太平洋地域の同盟・提携諸国であるオーストラリア、カナダ、フランス、日本、ニュージーランド、英国、米国を含む40か国以上が共同声明を発表し、 国連人権高等弁務官の早急な新疆ウイグル自治区への立ち入りと束縛のない調査を認めるよう中国に求めた。

6月22日に国連人権理事会会合で同声明を発表した上記諸国は、「信頼性の高い報告書によると、新疆ウイグル自治区では100万人以上が恣意的に拘留されているだけでなく、ウイグル人や他の少数民族に対する偏った監視が広範囲で実施されウイグル人の基本的自由と文化が束縛されている」と指摘した。同声明はまた、強制的な不妊手術、家族の分離、強制労働、性的暴力、拷問に関する報告内容にも言及している。

この2日後、中国による新疆ウイグル自治区の「残酷で非人道的な」強制労働への関与が疑われる中国企業から、太陽光パネルの材料となるシリカベース製品を輸入することを禁止すると発表したジョー・バイデン(Joe Biden)米政権は声明を通して、「新疆ウイグル自治区で発生している中国による強制労働は、ウイグル人や他の少数民族的と宗教的少数派に対する組織的かつ重篤な虐待である」と述べている。

複数の報道によると、2009年7月に発生したウイグル騒乱は、新疆ウイグル自治区の首都ウルムチから南東約4,000キロの地点に位置する広東省韶関市の玩具工場で、民族的な争いに伴い漢民族の従業員が労働者のウイグル人2人を殺傷した事件に端を発している。同事件を受け、何十年にもわたる中国共産党の支配の結果として同自治区で蔓延していた教育、雇用、政府支援、宗教上の差別に以前から不満を募られていたウイグル人のデモが発生した。当初は平和的な抗議活動であった。

しかしまもなくして、中国政府が投入した数千人の軍隊や治安部隊が催涙ガスを使用し、家庭や企業を襲撃した結果として数百人に上る逮捕者が発生しただけでなく、当局は2,000万人超の住民が居住する地域のインターネットを数ヵ月にわたり遮断するなどの取り締まりを実施した。

新疆ウイグル自治区の状況はこの数十年の間に悪化し、アムネスティ・インターナショナルが6月に発表した2021年報告書には、「同地域で大規模な侵入監視、恣意的拘禁、政治的な教化、文化的同化の強制が行われていることを示す不穏な証拠が浮上した」と記されている。資源豊富な同地域で中国共産党は、主に「テロ防止と宗教的過激主義対策」という口実の下で弾圧政策を展開している。

アムネスティ・インターナショナル同様に国際的な擁護団体であるヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)が新疆ウイグル自治区で「人道に対する罪」を犯しているとして中国を批判しただけでなく、米国を含む複数諸国も同自治区に対する中国政策を大量虐殺(ジェノサイド)と認定した。 権威主義体制の中国の反応は想像に難くない否定、宣伝、反訴、報復というお決まりのパターンであった。BBCニュースが2021年3月下旬に発表したところでは、新疆ウイグル自治区の弾圧に関する報道で受賞歴のある同社のジョン・サドワース(John Sudworth)北京特派員が、中国当局から脅迫と圧力を受けたことを理由に台湾に転出した。

チベット自治区と内モンゴル自治区の民族に対する強制的な文化的をそのまま映し出す新疆ウイグル自治区の人権侵害だけでなく、香港市民の法治と自由を急激に剥奪した中国共産党の香港弾圧により、2022年冬季に予定されている北京五輪ボイコットを求める声が高まっている。

世界各地で北京五輪ボイコットを訴える民主団体が増加する中、ラジオ・フリー・アジア(RFA)の報道では、2021年6月に十数に上る台湾の人権擁護組織が議員にロビー活動を行って自国政府に五輪不参加を要求した。 ウイグル族擁護団体「台湾東トルキスタン協会」の何朝棟(He Chao-tung)会長は、「中国政府が新疆ウイグル自治区の全住民を監視する厳格なシステムを導入したことで、同自治区は『壁のない刑務所』と化した」とし、「まだ自由な言論が許される台湾は、国際的な自由、人権、正義を支持する姿勢を示す必要がある」と述べている。

(Indo-Pacific Defence Forum)