中国の全国人民代表大会(国会相当)で5月28日、香港に国家安全法を導入する提案を採択した。香港の金融センターとしての地位への打撃は必至だ。
米国務省のポンペオ長官は27日、「香港が中国から高度の自治を維持しているとは言えない」とし、香港に対する米国内法に基づく優遇措置を認められないと議会に報告した。米トランプ政権が、香港からの輸入品に適用している優遇関税措置の停止を検討していると報じられている。
投資マネーの流出懸念
昨年から続いた「逃亡犯条例」改正案に反対するデモの影響を受け、一部の投資家はすでに新たな投資地を選び始めている。ロイター通信によると、ヨーロッパに本拠地を置くある民間銀行の上級バンカーの話として、一部の顧客は、昨年のデモ後、状況が早く収束するだろうとまだ様子見をしていたが、今は香港に財産が集中しないようにリスク分散の動きが早まるようになった。
ロイター通信によると、すでに資金移転を計画している顧客から、その実行に関する問い合わせが多くなっているとも話している。香港の政情不安を懸念した動きとみられる。
在香港米商工会議所主席Robert Grieves氏は、「香港国家安全法」は国際ビジネスの将来の展望を脅かす可能性があるとの懸念を表明し、もし香港の国際ビジネスと世界の金融センターとしての地位が侵食されれば、利益を得られる人はいなくなると話した。
「一国二制度」で担保された独立した司法システムなどが香港の世界金融センターの地位を有する重要な保障だ。しかし、今回の香港国家安全法の制定に向けての動きは、香港の民主派からは、香港の高度な自治を認めた「一国二制度」は完全崩壊しており、香港は「一国一制度」の時代に入るとの認識を示した。
米国で2019年に成立した香港人権・民主主義法は一国二制度が損なわれていると判断した場合、香港に与えてきた優遇措置を取りやめるという内容だ。
人材の流出は避けられない
一部のバンカーの間で、個人や金融機関などが北京の動きによるマイナスの影響に注目する中、今後優秀な人材を集めるのは難しくなるとの見方を示している。香港浸会大学政治学部と国際関係学部の高敬文学部長が英紙フィナンシャル・タイムズの取材に対し、北京が香港で社会統制を強める「香港国家安全法」は、火に油を注ぐ行為であり、香港の大規模な抗議活動を再燃させる行為であると話した。
すでに中共ウイルス(新型コロナウイルス、武漢肺炎)の影響を受けた不動産関連事業は、北京が進めてきた香港国家安全法の制定に関する報道発表を受け、香港株式市場の不動産関連の取引はさらに大きな打撃を受けた。新鴻基不動産(Sun Hung Kai properties)は7.1%、新世界発展(New World Development)は8.1%、九龍倉置業(Wharf Real Estate Investment)は8.7%と大幅な値下げを見せた。
金融業も同様な影響を受けている。ロバート・オブライエン大統領補佐官(国家安全問題担当)は24日、同法が採択されれば、金融機関は香港での事業展開ができなくなると発言した。香港で上場する中国企業の業績粉飾や当局のGDP(国内総生産)統計の水増しを指摘する外国企業は、「外国勢力による干渉」と見なされ、罪を問われる可能性があるからだ。
AxiCorpのStephen Innesは、香港国家安全法の詳細が明らかになり次第、株式市場への影響が評価され、ホワイトハウスは香港国家安全法の実施による香港の経済地位に対する影響を見極めることとなると話した。
日経アジアレビューのコラムニスト・ウィリアム・ペセク氏は25日の記事で、国家安全法の導入は香港経済に壊滅的な打撃を与えるとの見方を示した。「逮捕される危険性のある市場で上場する企業はないだろう」という。
(大紀元日本ウェブ編集部)
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