北京拠点のIT開発企業・字節跳動(バイトダンス)が作成した短編動画アプリ「TikTok(ティックトック)」は、中国共産党政権の検閲を導入している。TikTokの動画管理者は、中国当局が「社会の不安定をもたらす」事件や世界の政治リーダーについての動画を検閲し、意図的に表示回数を抑制したり、表示を禁止したりしている。英紙ガーディアンが9月24日、独自入手した同社の内部資料を報じた。
TikTokのモデレーション(投稿検閲機能)ガイドを詳述した同内部資料によると、検閲方法は2つに分類される。1つは「違反」とみなし、サイトから完全に削除する。2つ目は「多少容認できる」として、削除しないが、TikTok独自のアルゴリズムを使い、表示回数を制限する。
1998年5月に発生したジャカルタ暴動、ポル・ポト政権によるカンボジア虐殺、六四天安門事件などに関して「歴史の歪曲」を対象に禁止している。チベット独立運動、中国で弾圧を受けている気功団体・法輪功に言及する動画を検閲するようモデレーターに指示している。
より一般的なルールには「分離主義、宗教対立、民族集団間の対立、たとえばイスラム教宗派対立の誇張、北アイルランド、チェチェン共和国、チベット、台湾の独立運動を扇動し、民族を誇張する内容」も検閲対象となる。これらの情報を含む動画は、投稿してもユーザーの目につきにくくなる。
ガイドラインによると、世界で影響力のある指導者20人も禁止にしている。その20人は日本の安倍晋三首相、米国のドナルド・トランプ大統領、バラク・オバマ前大統領、インドの精神指導者マハトマ・ガンジー氏、ナレンドラ・モディ首相、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領、北朝鮮の金日成氏、金正日氏、金正恩氏など。習近平国家主席は含まれていない。
バイトダンスは、このガーディアン紙が報じたガイドラインについて、すでに廃止されていると説明する。同社は、プラットフォーム上の争いを最小限にするために対策を取っているという。
2016年9月に発表されたTikTokは、世界で最もダウンロードされているアプリのひとつ。10代後半からミレニアル世代を中心に人気を集め、iOSとAndroidでの累計ダウンロード数は約10億回以上だ。
中国サイバーセキュリティ法では、中国の民間企業は当局に情報提供を協力することが義務付けられていることから、情報安全保障のリスクがあると指摘している。米ワシントンDCに拠点を置くピーターソン国際経済研究所は2019年1月、「TikTokは中国当局に個人情報や位置情報のほか、各国の軍事施設などの機密情報を提供している可能性が高い」と分析している。
(翻訳編集・佐渡道世)
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