台湾政府は11日、在米中国人社会学者・李毅氏の入国許可を取り消したうえ、12日、国外退去処分を科した。李氏は9日、台湾の親中団体「中国平和統一促進会」(以下、統促会)の招きで、講演を行うため台湾に入国した。同氏はかねてから台湾への武力統一を主張してきた。
統促会は13日、台中市で「2019年第1回平和統一融合発展フォーラム」を開催する予定。李毅氏は、「平和統一の見込みを持ちながら、台湾における1国2制度を模索する」という同フォーラムのテーマで、スピーチをするとみられた。
民進党関係者からの指摘を受けて、台湾内政部(省)移民署は11日、観光ビザで入国した同氏は政治関連の講演ができないという規定に基づき、同氏の入国許可を取り消し、同日中に出国するよう命じた。しかし、李氏が11日台湾から出国しなかったため、移民署職員は12日同氏を香港に強制送還した。
統促会は13日のイベントで、講演のほかに、「一つの中国」や「1国2制度」に関する集会およびデモ行進を行うという。
台中市の黄守達・市会議員(民進党)はフェイスブックで、李毅氏による講演は「自由民主憲政の秩序を害する権利の乱用である」と批判した。黄議員によると、武力統一を強く支持する李毅氏は過去、中国軍が台湾海峡を越えたとたんに、台湾人民は「台湾独立を忘れるだろう」と述べた。
黄議員は、対中国大陸政策当局である行政院(内閣)大陸委員会と移民署に対して、李毅氏の入国がいわゆる「両岸人民関係条例」に違反するか、詳細に調査するよう呼び掛けた。
「自由民主の看板を掲げながら、台湾に危害を与えるという行為を許してはいけない」
台湾人作家の顔擇雅氏もフェイスブックに投稿し、李毅氏は米国で博士号を取得したが、「現職は中国人民大学の研究員だ」と指摘した。
顔氏によれば、李毅氏は2016年台湾に入国し、同年の総統選挙を視察した後、「平和統一の見込みがもうない。武力統一しかない」「武力統一後、(中国本土から)2500万人の新移民を台湾に送り込めば、『台湾独立』の問題が解決できる」と強調する評論記事を発表した。
また顔氏は、武力統一を吹聴する人物が台湾でその思想を宣伝できることについて、「われわれの法律には抜け穴があるのではないか」と疑問視した。
内政部の陳宗彦・政務次官は、武力統一に関する李毅氏の過去の発言から、「李氏が国家安全および社会安定に害を与える可能性がある」とし、今後李氏の入国を規制すると表明した。
(記者・鍾元、翻訳編集・張哲)