ベトナムの警察は近年、中国国境地域の街で臓器奪取を目的とした誘拐が相次いでいることから、地域の小学校などに警戒を促す文書を送付している。警察当局によると中国人犯罪グループによる犯行だという。
北部ラオカイ州シーマイカ県警察署による2016年7月付通知文書によると、国境の街ヘギャンで同年前半だけで16人のベトナム人が臓器摘出を目的に誘拐された。肝臓、腎臓、心臓、眼球の奪取があったという。
文書によると、誘拐犯は中国人で3人から5人のグループ。違法なナンバープレートの車両を運転している。被害者は「高齢者、子供のいる家族、学校の課外活動中の生徒、一人で牛追いする子供」であり、犯行グループは被害者を拉致し、車にのせ、人通りの少ないところに連れて行き臓器を摘出したという。
警察は、「犯罪を効率的に防止するために県の警察指導者は各区の警察、学校がこの(拉致と臓器摘出)犯罪の手口を全人民、全学生に知らせるように」と通知している。大紀元の取材に答えた現地の警察署の副署長は、文書の意図について「地域住民に問題の深刻さを伝えるために作成した」と語った。
ベトナム国営メディアが臓器狩りを報道
中国共産党政府は2000年、臓器移植を戦略的に優先する国の新興産業と位置づけ、衛生部や科学技術部、教育部、軍など国家ぐるみで技術研究や人材育成、産業化システムに投資した。
しかし2006年、国際調査チームにより、中国では大規模で組織的な収容者からの強制的臓器奪取があると公にされた。さらに2015年、衛生部が「死刑囚の臓器を移植に利用しない」と公言して以後、国内の臓器移植産業は地下化していった。中国と隣接する国の人々は、新たな臓器収奪の対象となっていった可能性がある。
2017年10月、ベトナム国営テレビ(VTV)は、ベトナム人を狙った中国の闇の臓器収奪産業についての調査内容を放送した。番組では中国での臓器収穫を扱った人身売買問題に関する2件の調査報告を放送した。
VTVの記者は移植用臓器に関心を持つ患者をよそおい、中国とベトナムの臓器売買ルートについて調査した。
最初のケースは中国の臓器移植ブローカーへの取材。売春業への従事や中国人男性の妻になるため、ベトナム人女性は中国に売られている。さらに乳幼児や男性も臓器移植用に売買されていると述べた。2回目のケースで移植希望者を装ったVTV記者はブローカーとともに、「臓器市場」と呼ばれる広東省で適切な移植用臓器を探した。ブローカーは「健康で良い」状態の臓器を手に入れる手順を説明し、価格を提示した。ブローカーはやがて広東省佛山市で中国移植医と接触した。
必ず摘発されなければならない犯罪行為
国際移植機関である「移植社会」代表のナンシー・アッシャー博士は、ベトナムと中国の間の臓器取引は必ず摘発されなければならない犯罪行為だと指摘した。
「犯罪者は裁判にかけられて罰を受けなければならない」とアッシャー博士は大紀元の取材に答えた。「医療従事者がこのような悪行に関わっているならば、その人物は出廷するべきだ」と付け加えた。
中国衛生部は2015年1月、死刑囚の臓器を移植手術に利用することをやめると発表してから、先進国にあるような、自発的な臓器提供システム(ドナー制度)の成立を目指すという。このためアッシャー氏は「制度外で犯罪者が暗躍している可能性が高い」と述べた。
2017年2月、バチカン市国で違法な臓器売買に関する会議が開催され、中国の医師団が参加した。倫理問題の専門家や人権団体は今もなお死刑囚の臓器を移植手術に供給しているとして批判した。
人権団体によると、中国の移植臓器に利用されているのは死刑囚ではなく、思想や活動により拘束された「無実の囚人」が含まれると考えられている。アムネスティによる中国の推定死刑執行数の年間1万人と、国際的な移植問題調査チームの示した移植手術件数年間6万件~10万件とでは、数が合わない。
在日ウイグル団体は、次々と建設される大型収容所に100万人もの人が拘束されているといわれる新疆ウイグル自治区では、遺体から臓器が抜き取られた跡があるという。家族らの情報を、日本ウイグル連盟会長トゥール・モハメット氏や在ドイツの世界ウイグル会議総裁ドルクン・イサ氏が、それぞれ現地メディアなどに語っている。
(翻訳編集・佐渡道世)
ご利用上の不明点は ヘルプセンター にお問い合わせください。