大紀元インタビュー 北京の人権弁護士・余文生氏 独占インタビュー

「思考のマヒした中国人、目を覚まして!」北京の人権弁護士(1)

2017/04/17
更新: 2017/04/17

専制政治体制下では、三権分立は成立しないとされる。これに加えて警察権力や軍事まで、共産党の一手に権力が集約する中国で、体制に「ノー」と言うことは、身の危険を冒すことに等しい。ただちに拘束され、監獄では死に至るほどの惨い拷問を受けかねない。

圧政の中国で、命の危険をかえりみず弱者の弁護に取り組む人権派弁護士がいる。拘束や拷問の経験もある北京の弁護士・余文生氏は最近、大紀元のインタビューに答え、自由のない社会に生きているため「思考がマヒしてしまった」という中国人に対して「目を覚ませ」と呼びかける。

余氏は、2014年に香港で起きた民主化運動「雨傘運動」を支持した中国国内の人権活動家の弁護を引き受けたことで、 同年10月に、中国当局により拘束された。2016年からは、中国の人権弱者や法輪功の裁判を担当している。


被告人、大紀元の社説を人に渡しただけで有罪判決に

大紀元記者(以下、記者):余先生が近頃弁護を引き受けられた、北京の法輪功学習者の裁判では、秦尉さんという男性が他人に本を一冊渡しただけで2年半の実刑判決が下されたそうですね?

余弁護士:はい、大紀元の社評である『九評(邦題『共産党についての九つの論評』、博大出版)』を人に渡したため、この方には2年半の判決が下りました。

『九評』には、共産党が政権をとってからの数十年の間に起こった、数々の出来事や事件が記されています。私も手に取ったことがありますし、関連のドキュメンタリー番組(『九评共产党』がYouTube等で公開されている)も見たことがありますが、内容はすべて事実です。本の出版も内容の拡散も、言論の自由に基づく合法的行為です。この本を犯罪の証拠として挙げ、泰さんに「法律の実施を妨げる罪」を適用するとは…でたらめもいいところです。

中国には法輪功をカルトだと定義する法律は存在しません。中国当局は学習者を弾圧するため判決を下していますが、何の法的根拠もないのです。秦さんには「法律の実施を妨げる罪」が適用されましたが、彼はどの法律の実施を妨害しましたかね? 当局の行っていることは政治的迫害に他なりません。

秦さんは信仰を持っている人です。そして憲法には信仰の自由が保障されており、世界人権宣言にも宗教と信仰の自由についてはっきりと記されています。彼はいかなる政治活動にもかかわっていませんし、国や社会に何の危害も加えていないと私は認識しています。弁護を行う中で、私は泰さんが法を犯したという証拠を全く掴んでいませんし、当局も証拠を見つけられませんでした。

ですが政治案件の場合、検察が明確な証拠を掴めなくても、判決に何も影響しないことがしばしばあるのです。特にこの本に記されている多くの歴史的真実を、当局は人々に知られたくありません。『九評』は普通の中国人に真実を知らせるためのものですから。

鮮血に染まるネッカチーフ、指摘したら「反動分子」

記者:たった一冊の本が原因で実刑判決を下されたという裁判を、他にもご存知ですか?

2016年11月、貴州にある「赤軍初等学校」で体操する小学生(GettyImages)
 

余弁護士:聞いたことがあります。他にも、一編の詩が元で逮捕され実刑判決が下された人も知っています。以前に弁護を引き受けた、北京在住の于彦傑さんのケースがあります。彼女はインターネットで一編の詩を公開したために逮捕、起訴されました。その詩には「紅領巾、鮮血染、它的背後有邪霊((少年先鋒隊員の)赤いネッカチーフ、鮮血に染まった、その後ろにあるのはよこしまな幽霊)」という一節がありました。

私はその時の法廷で「子供のころから我々が受けてきた共産党の教育は、まさに『鮮血に染まった赤いネッカチーフ』そのものではないか。『その後ろにあるのはよこしまな魂』という一節については、マルクスが彼自身の著書『共産党宣言』の中で『一つの幽霊、共産主義という幽霊が、ヨーロッパの空を漂う』と自ら表現している」と発言しかけていました。

法的には「反動的」という言葉はありません。「刑事訴訟法」のどこにも共産党に反対すれば有罪だなどと書いてありません。そっちが間違っているのに、それに対して意見を述べるのもダメ、反対票を投じるのもダメだというのなら、人民代表大会も、その代表も必要ないし、検察局、裁判所はもちろん、弁護士だっていりません。公安局が一つあるだけで十分じゃないですか。 ところが法廷は私の発言を中断し、私が反動的な宣伝を行っていると主張しました。『共産党宣言』は彼ら共産党の話です。「赤旗」は(共産党革命に命をささげた同胞らの)血に染まった旗と言っています。私が話しているのは共産党の話なのに、それを反動分子の宣伝だと? ならば彼らだって口を閉じるべきですね。同じ言葉が私の口から出れば、それが反動的な宣伝になるが、彼らが言えば正しい宣伝となるとでも言うのでしょうか。

弁護士とは被告の立場に立って、被告に代わって発言するものです。弁護士の役割は告訴した側と対峙することです。それなのに法廷は、私がたったこれだけを発言するのも許さないのです。

普通のネットユーザーが政治に不満を漏らしても、大したことにはならないでしょう。せいぜい数日間拘留されておしまいです。しかし法輪功学習者の場合は実刑判決を受ける可能性があります。政治的なレベルの話になってしまうと、たった一冊の本や一編の詩を口実に、適当な罪状をでっちあげてその人を拘束し、政治的な弾圧がなされるのです。こんなやり方では、法律が役に立ちますか?

2016年9月13日、法輪功迫害についての裁判で弁護団の一人である余文生弁護士(向かって左から2番目)。天津市東麗裁判所前で撮影(大紀元)

(つづく)

(翻訳編集・島津彰浩)

この記事で述べられている見解は著者の意見であり、必ずしも大紀元の見解を反映するものではありません。