朝鮮半島 評論・郭宝勝

在米専門家に聞く北朝鮮問題をめぐる米中首脳会談(1)

2017/04/04
更新: 2017/04/04

中国習近平国家主席は今月6~7日に米フロリダ州パームビーチで、米ドナルド・トランプ大統領と、トランプ政権発足後初の首脳会談に臨むことになった。両国は朝鮮半島、南シナ海などで意見交換をし、貿易や為替などの通商の面で厳しい交渉を行うとみられる。

米中首脳会談において、北朝鮮の核・ミサイル脅威を解決するため、米国トランプ政権は北朝鮮の最大支援国とも言われている中国当局に対してどのように外交カードを使うかが注目されている。

このほど、大紀元は在米時事評論家の郭宝勝氏(45)にインタビューを行い、今後の朝鮮半島情勢および国際情勢の変化、トランプ政権は北朝鮮に対して武力行使の可能性はあるかどうか、中国当局の対応などについて聞いた。

中国青海省出身の郭氏は1990年に中国人民大学哲学学部に入学し、その後北京の学生運動のリーダーの一人となったため、1994年中国当局に「陰謀転覆政府罪」で3年6カ月の懲役を言い渡された。当局に釈放された後、米国に亡命した。現在、作家として活躍するほか、米VOAなどで契約時事評論員を務めている。

以下は郭氏へのインタビュー内容の抄訳。


中国共産党政権と北朝鮮には共通利益を持つ

北朝鮮の金正恩・労働党委員長の異母兄、金正男氏が2月13日マレーシアで殺害された後、中国共産党政権(以下、中共)は18日に北朝鮮からの石炭の輸入を全面停止すると発表した。しかし、2月の石炭輸入量は前年同月比で43%増えた。また米VOAの報道によると、中国税関総署の統計では、2月北朝鮮からの輸入品目には、国連安全保障理事会が北朝鮮から輸入を全面禁止した金や銀、銅、亜鉛があった。その輸入規模は65万ドルに上った。

中国当局と北朝鮮の間で、互いに共産主義政権を維持していくために、1961年に20年ごとに自動更新される『中朝友好協力相互援助条約』を結んだ。それ以降、中共は経済的かつ政治的に北朝鮮をコントロールしてきた。

この同盟関係の下で、中共は北朝鮮に対して金正男暗殺や核実験などに対して不満を持っているが、まだ容認できる範囲内のことだ。中共と北朝鮮との同盟関係は非常に固い国家間の連携であるため、中共内部のどの派閥であっても、他のどの勢力であっても、その関係を壊すことができない。なぜなら、自由と民主への敵視、欧米諸国に対してどのようにあしらうのかとの面において、中共と北朝鮮の認識は完全に一致している。

国際社会において中共がやりたくないことを全部北朝鮮にやらせるのだ。「大国」としてのメンツを保ちたい中共が、公然と国際社会に挑発する勇気がないためだと推測する。

したがって、中共は表面的に北朝鮮からの石炭輸入をストップしたが、実に鉄道や海運のほか、北朝鮮の物品が中国に入っていく隠れのルートは他に多数ある。核実験に必要な技術もすべて中共が意図的に北朝鮮に伝えた。

 ティラーソン米国務長官の訪問目的

レックス・ティラーソン米国務長官(Mark Wilson/Getty Images)
 

米国務長官のレックス・ティラーソン氏は3月中旬、韓国、日本と中国を訪問した前の6日に、北朝鮮は日本に向けて4発の弾道ミサイルを発射した。その後、北朝鮮は「在日米軍基地が標的だ」と宣言した。米政府は、北朝鮮のミサイルは直接日本と韓国に駐在する米軍の安全を脅かしていると認識し、ティラーソン長官が訪問で、韓国と日本との軍事同盟関係を強化する狙いだった。また、北朝鮮への武力行使を想定した米軍、韓国軍と日本の自衛隊による軍事演習を強化していくことも目的だった。

長官は3月16日、日本を訪問した際、記者会見で米国の対北朝鮮政策について「過去20年間、失敗したアプローチをとってきた」と述べた。

また17日、訪問先の韓国での記者会見において、長官は北朝鮮の核脅威が、米政府が行動が必要だと考える水準に引きあげた場合、武力行使の選択肢が残っていると発言した。

長官の発言は中国当局に向けたシグナルだ。米側が、北朝鮮を操っているのは中共で、中共が北朝鮮に核技術を提供したと心得ているのを中共に暗示した。

しかし米国は、中国当局が北朝鮮に対して核実験などを止めさせる圧力をかけ、着実に経済制裁措置を実施していくのをいまだに望んでいるのも、また事実だ。

そのため、長官が20日中国北京に入った後、一転して発言が柔らかくなり、当局が唱える「対抗せず、衝突せず、互いに尊敬し、ウィンウィンの協力関係を築く」との原則を維持すると表明した。この穏健的な姿勢で中共に対して、北朝鮮への働きかけを強化させていく狙いであろう。

長官のこの一連の動きをみると、米国政府は現在まだ北朝鮮に対して真に武力行使との選択肢を考えていないのを見て取れる。

ただ、長官は米の対北朝鮮政策の最終的な意思決定者ではない。米中首脳会談で、トランプ大統領と習近平国家主席の間でどのような駆け引きをするのかを見極めなけらばならない。また、トランプ大統領は米中首脳会談後、トランプ政権が北朝鮮に先制攻撃に踏み切ることができるかどうかによって、朝鮮半島情勢が大きく変化するだろう。

(つづく)

(翻訳編集・張哲)

この記事で述べられている見解は著者の意見であり、必ずしも大紀元の見解を反映するものではありません。