習近平訪米へ 中国経済の苦境と第21回党大会をにらむ対米融和

2026/09/17
更新: 2026/09/17

中国共産党の習近平党首は9月24日、米トランプ大統領との会談に向けて訪米する見通しだ。体制内関係者によると、共産党指導部は関税・制裁をめぐる対立の緩和と米中関係の安定を通じ、経済の立て直しと来年の第21回党大会に向けた政治的な時間を確保しようとしている。米中両国は約300億ドル規模の商品を対象とする相互関税引き下げも協議していると報じている。

中国共産党の体制内事情に詳しい関係者2人によると、共産党指導部は今回の訪米を通じて米中関係を安定させ、経済・貿易摩擦が中国経済に及ぼす影響を抑えたい考えである。来年に予定する中国共産党第21回全国代表大会、いわゆる第21回党大会に向け、時間を確保する狙いもあるという。

取材に応じた研究者は、中国共産党(中共)がこの時期にアメリカに融和的な姿勢を示しているのは、国内経済の立て直しや政治日程の安定に向けて、猶予を得るためだとみている。

トランプ氏と習近平の会談予定日が近づくなか、中共がなぜアメリカとの関係の安定を急ぐのか、注目が集まっている。

体制内関係者が語る訪米の狙い 米中関係の安定化

体制内事情に詳しい唐国英氏(仮名)は記者に対し、習近平の今回の訪米で最も重要なのは、米中関係を安定して維持することだと語った。

唐氏によると、この点では共産党指導部の中で一定の認識が共有されているという。

「双方は各分野で、衝突を防ぐための仕組みをつくり、危機を管理したいと考えている。アメリカはレアアースの安定供給を必要とし、中国は制裁の緩和や解除を求めている。習政権は、米中関係が安定して初めて、国内経済も持続的に発展できるとみている。これが習近平の訪米の主な目的だ」

唐氏は、こうした考え方は、かつて鄧小平がアメリカとの関係を改善し、経済発展につなげようとした姿勢に通じると指摘した。

ただ、現在の中国は経済的な困難を抱え、社会の不満や対立も高まりやすい状況にある。来年の第21回党大会を控え、党内の政治的な駆け引きも続いている。

このため指導部としては、それまでに外部からの衝撃が、中共上層部の人事や党内政治に影響を及ぼす事態を避けたい考えだという。

経済停滞と貿易摩擦 共産党指導部が抱える国内事情

別の体制内関係者によると、今年上半期の一部の経済指標は、指導部内部の想定を下回った。対外貿易は今も、中国経済を支える重要な柱となっている。

同関係者は、商務部が中央財経委員会に提出した資料で、欧米との経済・貿易関係を改善し、中国製品や中国企業が直面する障害を減らす必要性を、特に強調していたと明かした。

この関係者は、習近平の訪米の最大の狙いは、今後3年間、米中関係を安定させ、中国経済の苦境を乗り切るための時間を確保することだとみている。

こうした資料の内容や指導部内での協議は、いずれも公表されていない。

中国商務部は9月10日、米中の経済・貿易担当チームが、双方でおよそ300億ドル規模の商品を対象に、相互関税を引き下げる取り決めについて協議していると発表した。早期の実施を目指しているという。

同じ日、中国外務省も、年内の首脳間のやり取りについて、双方が引き続き意思疎通を図っていると述べた。

共産党指導部は対外貿易の安定を望んでいる。しかし、相互関税の引き下げが実現するかどうかは、今後の協議が左右する。

アメリカ側も首脳会談前の交渉に向けて準備を進めている。

米ベッセント財務長官は9月15日、下院金融サービス委員会の公聴会で、週末に中国の何立峰副首相と会談すると明らかにした。

米中両国はこれまで、非公開の場で建設的な協議を重ねてきたと述べ、今後の協議の進展に期待を示した。

第21回党大会を前に「時間稼ぎ」を急ぐ理由

中国の研究者、邢辰氏(仮名)は、習近平が商務代表団を率いてアメリカを訪問する方向で調整を進めていることについて、アメリカとの全面対決を避け、協力を優先する姿勢の表れだと語った。

邢氏によると、現在の中共の対米戦略は、明確に戦術的な性格を帯びている。外部環境を比較的安定した状態に保つことは、最高指導部にとって譲れない政治課題だという。

「現在の体制では、経済の安定は政権の安定や、権力移行を円滑に進められるかどうかと直結している。内需は大きく低迷し、製品の販売も伸び悩んでいる。日本、韓国、インドとの関係も不安であり、特に日本とのあつれきは続いている。複数の課題が重なるなか、対外貿易と外国資本は、代わりのない経済的な支えになっている」

邢氏は、習近平が訪米を通じて、重要な経済・貿易分野でリスクを避けるための枠組みを整え、第21回党大会前にアメリカが新たな制限措置を打ち出すことを防ぎたいと考えていると分析する。

その上で、国内経済の立て直しと政治日程の調整に向けて、時間的な余裕を確保しようとしているとみている。

アメリカ側の条件 農産物・非関税障壁・対イラン金融取引

米通商代表部(USTR)のグリア代表は以前、アメリカが目指しているのは、米中の経済・貿易関係を管理することであり、包括的な貿易協定の締結ではないと述べた。

習近平の訪米期間中に、農産物の取引拡大や、それに関連する非関税障壁をめぐり、取り決めを発表する見込みだ。

中共は米中関係の長期的な安定を望んでいる。一方、現時点でアメリカ側が議題としているのは、農産物や非関税障壁といった個別で具体的な問題にとどまっている。

ベッセント長官はまた、中国とイランの金融取引を巡る問題について、首脳会談でも引き続き議題になる見通しだと述べた。

中共はアメリカとの経済関係で障害を減らしたい一方、イランとの関係も維持したい考えである。

習近平が今回の訪米で、関税やアメリカ産品の購入拡大をめぐって一定の進展を得たとしても、こうした対立点が同時に解消するとは限らない。

江菲