中国共産党(中共)の中央銀行が8月に約20トンの金を購入し、22か月連続で金準備を増やしたことが最新の統計で明らかになった。その狙いは国際的な関心を集めており、インフレ対策や資産分散といった通常の経済的な目的を超えているとの指摘も出ている。
中共国家外貨管理局が9月7日に発表したデータによると、8月末時点の金準備は7673万オンス(約2386.57トン)で、前月から65万オンス(約20.22トン)増加した。
人民銀行による金の買い増しは22か月連続となった。今回の増加幅は、2024年11月に金購入を再開して以降、単月として最大となった。
世界黄金協会によると、人民銀行が2024年11月に金購入を再開して以降、累計購入量は122トンを超えた。2026年に入ってから買い増しのペースは加速しており、3月は約5トン、4月は8トン超、5月は約10トン、6月は約15トン、7月は約20トン、8月は20トンを超えた。
一方、世界黄金協会が最近発表した「2026年中国金飾品小売トレンド洞察」によると、今年上半期の中国の金宝飾品消費量は前年同期比30%減の136トンとなった。
国信先物の首席アナリスト、顧馮達さんは中国メディアに対し、当局による継続的な金の買い増しは計画的な取り組みだと指摘した。外貨準備の資産構成を多様化するだけでなく、金準備には人民元の通貨価値を支える役割もあるとの見方を示した。
一方、独立系投資銀行ジェフリーズの報告書は、中共が世界の金取引でより大きな役割を担うため、関連インフラの整備を積極的に進めていると分析している。
香港では新たな決済・受け渡しシステムの開発が進められ、上海黄金交易所との現物受け渡しを結ぶ仕組みも整備されている。同時に、金の保管拠点網の構築も進む。
香港は金の保管能力を約200トンから2千トン超へ拡大する計画で、単なる金の購入にとどまらず、大規模な保管、決済、受け渡し、取引拠点の構築を目指していることがうかがえる。
報告書は、人民銀行がこうした金戦略の中核を担い、買い増しのペースも再び加速していると指摘した。一方、公式統計が実際の購入量を過小に示している可能性もあるという。
現物需要や税関統計、投資資金の流れ、主要な金精錬拠点からの輸出統計などを総合すると、2024年1月以降の公的部門による金購入量は161.6トンに達したと推計される。これに対し、人民銀行が公表した数字は130.9トンにとどまり、約30トンが公表されていない可能性があるとしている。
フィナンシャル・タイムズは9月5日、今年に入りロシアから香港への金輸出が急増していると報じた。
香港の貿易統計によると、今年1~7月のロシアからの金輸入量は100トン近くに達し、過去最高を記録した。2025年同期の約3倍にあたる。
ロンドン証券取引所グループのアナリスト、デバジット・サハ氏は、「ロシアによるウクライナ侵攻後、ロンドン市場はロシア産金を締め出した。それ以降、ロシアの金生産業者は輸出先を東方市場へ移す傾向を強めている」と述べた。
英地政学コンサルティング会社Gatehouseのコンサルタント、ビタ・スピバック氏は、香港がロシア産金の中国への流入を仲介している状況について、「ロシアと中国の経済関係から生まれたものだ」と指摘した。ロシアが中国に資源を供給し、中国から経済的な支えを得る構図だという。
大西洋評議会などの欧米主要シンクタンクやゴールドマン・サックスなどは、人民銀行が長期間にわたって金を買い増し、そのペースをさらに加速させている背景には、インフレ対策や資産分散といった通常の経済的理由を超え、中国経済の制裁耐性を高める狙いがあるとみている。
現物の金は自国の金庫で保管できるため、西側諸国が国際金融システムを通じて凍結することが難しい。このため、台湾有事などの地政学的危機をきっかけに、全面的な制裁や資産凍結、経済的な切り離しに直面する事態への備えだとの分析もある。
さらに、中共は大量の金準備と関連インフラを活用し、BRICS諸国や中東、東南アジア諸国などに対し、金を中国大陸や香港で保管するよう働きかけているとされる。
長期的には、西側主導の金融システムを介さず、金を決済の基盤とする、ドルに依存しない多国間貿易システムを構築し、世界の主要な準備通貨であるドルの地位を揺るがす狙いがあるとの見方も出ている。
ご利用上の不明点は ヘルプセンター にお問い合わせください。