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中国臓器移植研究論文 国際出版社が8本撤回 倫理違反問題で

2025/11/07
更新: 2025/11/07

世界的に著名な学術出版社エルゼビア(Elsevier)はこのほど、中国の臓器移植に関する8本の論文を正式に撤回した。移植需要と臓器供給の闇、学術界にも波紋が広がる。

論文撤回は、オーストラリア・マッコーリー大学のウェンディ・ロジャース教授が率いる研究チームの調査結果を受け決定したものである。

ロジャース教授のチームは2019年、英医学誌『ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル』(BMJ)系列の学術誌『BMJ Open』に論文を発表し、中国の臓器移植研究論文445本を精査。その結果、多くの論文が、死刑囚由来の臓器使用を禁じる国際的倫理基準に違反していると指摘した。

今回撤回された8本の論文は、エルゼビアが発行する医学誌『肝臓学・消化器病研究と臨床(Liver Research and Clinical Gastroenterology)』に掲載されたもので、いずれも肝臓移植に関する研究である。これらの論文では、臓器の入手経路や研究対象者の同意、倫理審査の手続きといった重要な情報が不明確だったり、欠落していたりした。学術誌側は著者に説明を求めたが回答が得られず、最終的に撤回を決定した。

オーストラリア拠点の非政府組織「中国での臓器移植乱用終結国際連合(ETAC)」と、米国の「強制臓器収奪に反対する医師団(DAFOH)」は、すでに2021年、エルゼビアに対して約1500ページに及ぶ報告書を提出し、「中国の臓器移植システムには構造的かつ体系的な非倫理的運用が存在する」と警告していた。

報告書によると、中国では心臓移植の平均待機期間がわずか3.7日、肝臓移植は1~2週間であり、国際平均(心臓6~12か月、肝臓6~18か月)を大きく下回っている。これは需要に応じた臓器獲得が行われていることを示しており、「注文制の臓器供給システム」の存在を示唆している。

さらに報告書は、中国共産党当局が法輪功学習者やウイグル人など良心の囚人から、生きたまま臓器を摘出していると非難している。中国当局は2015年に「死刑囚の臓器使用を停止する」と発表したが、その声明を裏付ける客観的証拠は今なお示されていない。

今回撤回された論文の一部は、2000~06年のデータを用いており、2015年以前の違法な臓器使用事例を含んでいることが明らかになった。

しかし、撤回された論文は全体のごく一部にとどまっている。ロジャース教授チームが問題を指摘した445本のうち、正式に撤回されたのは44本のみであり、依然として多数の論文が「倫理的懸念」を抱えたまま残っている。

ロジャース教授は「多くの学術誌はいまだに、良心の囚人が殺害されて得られた臓器を基にした非倫理的研究を撤回していない。これは極めて遺憾である」と述べたうえで、「学術誌の編集者は人権侵害の疑いがある論文の掲載を拒否し、研究倫理の水準を高めるべきである」と強調した。さらに、学術出版界全体がこの問題に対して、より積極的な行動を取る必要があると述べた。

李奇灝