中国国内で、反体制を訴える動きが静かに、しかし確実に広がりつつある。
特に2022年の「四通橋事件(北京)」を皮切りに、各地で自由と民主を求める声が後を絶たない。
第二の「四通橋事件」
4月15日、四川省成都の繁華街で、3つの巨大な反中国共産党(中共)スローガンが掲示され異例の事態が発生した。
陸橋に掲げられた反中共の横断幕には白地に赤字でこう記されていた。
「人民は制約を受けない権力を持つ政党を必要としない」
「政治体制改革なくして民族復興なし」
「中国に方向を示す者は不要、民主こそが(向かうべき)方向だ」
X(旧Twitter)では「これは勇者の行動」「中共の抑圧に人民が目覚め始めている」といった投稿が飛び交った。特に、「中国にはもう指導者はいらない、民主が必要だ」という一節には多くの共感と支持が寄せられた。
中共の体制内部に、消息筋を持つオーストラリア在住の法学者・袁紅氷氏はエポックタイムズに対し、その内情を明かした。それによれば、横断幕は車通りの多い場所に設置されたにもかかわらず、最初の2時間は、誰一人として通報しなかった。
その後、巡回中の警官が横断幕を確認し、上司に報告したが、上司はすぐに撤去を命じず、「証拠保存」を理由に現場の維持を指示した。このため、横断幕はさらに30〜40分間掲示され、最終的にほぼ3時間後に取り除かれたと言う
つまり、「繁華街に掲げられた巨大な反共スローガンは、発見後も上からの指示で現場保護が命じられ、およそ3時間にわたり人々の目にさらされた」ことになる。

袁氏は今回の事件が、中共の社会安定維持体制の崩壊を象徴していると評した。
これは2022年に北京で発生した「四通橋事件」と酷似しており、「新たな彭載舟(実行者のハンドルネーム)の登場」として称賛の声が集まった。
4月25日、その安否を懸念していた「実行者」の身元が判明した。
ヨーロッパに亡命している元内モンゴル政府法律顧問室の主任、杜文氏はエポックタイムズに対し、垂れ幕を掲げた人物の身元は、「四川省沐川県永福鎮出身の梅世林氏(男、27歳)」と明かした。
梅氏は行動前に1年以上準備を重ね、行動成功後に、その様子を自ら撮影し、現場の映像(13秒)と画像、そして自身の身分証を杜文氏に託したのだ。

梅氏は、杜文氏にあてたメールのなかで、「自分はもう中国人として生きることに耐えられない。たとえ身を焦がそうとも、叫びたいのだ」と訴えたという。
杜氏は梅氏に対し、いますぐ中国を離れるよう勧めたが、拒まれ、梅氏は中国に留まった。
しかし、4月15日を最後に、梅氏とは連絡が取れなくなり、音信不通の状態が十何日も続く。「彼は拘束された可能性が高い」として、杜氏は、国際社会に彼への支援を呼びかけた。
「自分はこれまでの反体制派を支援してきた経験からして、梅氏はいまおそらく身が危ない。国際社会が広く関心を寄せることだけが、彼を救える道かもしれない。彼が中共当局によって秘密裏に処刑されたり、非人道的な拷問を受けたり、精神病院送りにされるのを止めるためにも、どうか彼に関心を寄せてほしい」と杜氏は呼び掛けた。
杜氏はつづけて、「本当に残念だ、悲壮すぎる『風蕭蕭として易水寒く、壮士一たび去りて復た還らず』(訳:風がもの寂しく吹いて、易水は冷たく、壮士はひとたび去れば、それっきり戻らない)」と嘆いた。

閉塞する中共体制の中で、なお命を賭して声を上げる若者たちがいる──梅青年はたとえ生きていたとしても、現在も非人道的な拷問を受けている可能性が高く、しかし、彼の勇気ある行動は、「四通橋事件」の実行者「彭載舟」に続く燎原の「星火」の一つとして、中国全土に静かに、そして確実に広がったことは間違いない。
中共政権がどれだけ力で押さえつけても、民の心に芽生えた「自由への希求」は、もはや消せない。今、中共が抑え込んでいるのは一時の沈黙にすぎない。抑圧の積み重ねは、やがて制御不能の大爆発を招く運命にある。
ご利用上の不明点は ヘルプセンター にお問い合わせください。