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WHO パンデミック条約の条文案で大筋合意

2025/04/12
更新: 2025/04/12

世界保健機関(WHO)加盟国は将来のパンデミックに備えるための国際条約「パンデミック条約」の条文案について、加盟国間で大筋合意に達した。条約は、来月開かれる第78回世界保健総会での正式採択を目指している。

条約は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による世界的影響を踏まえ、今後の感染症拡大に対し国際社会が迅速かつ協調して対応するための枠組みを整備することが目的だ。条文案は、4月7~11日にかけてスイス・ジュネーブで開催された政府間交渉会合でまとめられた。

パンデミック条約は、「予防」「準備」「対応」の3本柱を中心に構成されており、感染症が動物から人間へと拡大するリスクを低減する「ワンヘルスアプローチ」が盛り込まれた。この考え方は、人間、動物、環境の健康を一体として捉え、包括的な対策を推進するものだ。

また、医療資源やワクチンの公平な分配、感染症に関するデータの国際的な共有体制の強化なども条約の主要な項目としている。

採択に向けた課題も

条文案が合意に至ったとはいえ、すべての加盟国の完全な支持を得るには至っていない。採択に向けては、加盟国間の意見調整を残しており、今後の議論の行方が注目される。

特に、途上国と先進国の間では、病原体の提供と引き換えに医療資源を確保する仕組みや、知的財産権の扱いを巡って意見の隔たりが見られる。途上国は技術移転や資金支援を求める一方、先進国や製薬企業側は知的財産権の保護を重視している。資金調達や供給網(サプライチェーン)の整備についても詳細な合意には至っていない。

各国で賛否の声

また条約に対しては各国で賛否が分かれている。アメリカでは一部の議員が、条約は国家主権を損なう可能性があるとして懸念を表明し、大統領宛に反対書簡を提出。日本国内でも市民団体による抗議活動が報告され、ワクチン接種の義務化や情報管理、地域による対応の自由度の低下を指摘している。

これに対してWHOは、ワクチン接種の強制は条約に含まれていないこと、各国の主権は維持されることを明確にしている。ただし、緊急時の対応手順の国際的な統一化により、地域ごとの柔軟性や情報の透明性に関する議論は継続していく。

採択の可否は来月に決定

条約の採択には、WHO憲章に基づく投票が行われる可能性があり、その場合、加盟国の3分の2以上の賛成を必要とする。採択後も、各国が国内法に基づいて条約を批准する必要があるため、実効性は各国の対応に左右される。

テドロス・アダノム事務局長は、「次のパンデミックは時間の問題だ」と述べ、国際的な備えの必要性を強調している。条約を正式に採択するかどうかは、来月の世界保健総会で決定する見通しだ。

大道修
社会からライフ記事まで幅広く扱っています。