処理水サンプル「異常なし」 中共の狙いは?

2025/01/23
更新: 2025/01/23

中国共産党(中共)の機関紙・環球時報などは、昨年10月に中共が採取した処理水サンプルを検査した結果、水中の放射性物質の濃度などに異常はなかったと報じた。

中共の研究機関が2024年10月中旬、国際原子力機関(IAEA)のモニタリング(監視)枠組みを通じて、日本の福島第一原発近海で海水を独自に採取し、検査・分析を実施した。その結果、トリチウムやセシウム137、ストロンチウム90といった放射性物質の濃度に異常は確認されなかった。国際原子力機関(IAEA)の作業手順に基づき、関連する具体的なデータはIAEAが取りまとめた後、統一して公表される予定だという。

今まで、日中政府は水産物輸入の再開について合意には達したが、中共側は海洋放出について「利害関係国の一つとして責任のないやり方に断固として反対する」と従来の立場を崩さなかった。

環球時報はこれまで、日本の処理水放出について「東京電力はデータを隠蔽し偽装している」などと批判し、IAEAが日本から提出された限定的な情報に基づいていると主張してきた。

2024年9月16日にオーストリアのウィーンで開かれた国際原子力機関(IAEA)の総会で、中共は福島第一原発から放出される処理水を「汚染水」と呼び、その放出に「強く反対する」と主張した。処理水の海洋放出について、世界の海洋環境や公衆衛生に関わる重大な問題だと批判した。

自国原発のトリチウム放出と矛盾

しかし、経産省によれば、中国の原発も大量のトリチウムを海洋に放出している。

具体的には、年間で浙江省の秦山第三原発では約143兆ベクレル、広東省の陽江原発では約112兆ベクレル、福建省の寧徳原発では約102兆ベクレル、遼寧省の紅沿河原発では約90兆ベクレルの放射性物質が放出されている。しかし、中共政府はこれらの放出について周辺国との合意や説明を行っていない。日本の処理水放出を批判しながら、自国の放出について透明性を欠く対応が指摘されている。

処理水問題の経済的影響

中共政府は日本の水産物輸入を停止したが、その影響は日本の水産業よりも中共の水産業に大きな打撃を与えている可能性がある。輸入停止後、中国国内では日本産だけでなく中国産の海産物も売れ残り、多くの在庫が発生した。日本から中国への水産物輸出額は2022年に871億円に達していたが、同年の中国の漁業経済の総生産額は約60兆円を超えており、禁輸措置や市民による海鮮ボイコットが中国の漁業全体に大きな損失をもたらすリスクを示している。

絶えず変化する立場と原則

大紀元が発表した社説「共産党について9つの論評」では、中共はの立場と原則は絶えず変化すると指摘した。



共産党についての九つの論評【第一評】共産党とは一体何ものか

人はしばしばある問題に対する見方を変えることがあるが、決して問題を見る原則を変えてはならない。そうでなければ、その人は信頼できる人ではない。この話は大いに示唆に富んでいる。共産党が正にその典型である。中国共産党を例にとると、結党以来80年間で開かれた16回の中共全国代表大会において、なんと党規約を16回も修正し、政権奪取後の50年で中国憲法を5回も大きく修正した。

「立場と原則の改変は、いつも中共の合法性と生存が回避できない危機に直面したとき引き起こされたものだということを説明しておかなければならない。国共合作、親米外交、改革開放、民族主義の推進は、どれ一つとしてそうでないものはない」

トランプ政権発足以降、日中関係の安定を図るため、中共が対話や協調姿勢を強める可能性があると考えられている。処理水問題をめぐる姿勢がその一環ではないかとの声も多い。