社会問題(LIFE) カードで我々のお金の使い方が決まる?

キャッシュレス決済は支出を増やす=調査

2024/06/18
更新: 2024/06/18

オーストラリアの大学の研究者らによると、消費者は、従来の現金よりもキャッシュレス決済方法を使う方が、より多くのお金を使う傾向があることを明らかにしました。

この調査結果は、1万1000人の個人から収集したデータを含む17か国71の研究論文を分析し得たものです。「商業界Journal of Retailing)」誌に掲載されました。

論文の中で著者らは、40年にわたる研究により、クレジットカードやApple Payなどのキャッシュレス決済方法が、消費者支出の増加につながることが分かっていると指摘しました。これは「キャッシュレス効果」とも呼ばれている現象です。

アデレード大学の博士課程の学生で、筆頭著者のラクラン・ションバーグ氏は「この研究は、決済方法が私たちの消費行動にどのような影響を与えるかという、この過程における見過ごされてきた側面に光を当てており、非常に重要だと私は信じている」と述べました。

「この理解は、より賢明な購買決定を下す助けになるうでしょう」

「自制心」のために現金を持ち歩く

ショムバーグ氏は、無駄遣いを避けるために現金を持ち歩くことを推奨しています。「現金を使用するとき、人々は実際に紙幣や硬貨を数え、手渡すので、消費行動がより実感を伴います。何も手渡さないと、いくら使ったかを忘れやすくなります」と説明しています。

同氏は「計画外の支出を防ぐため、消費者には可能な限りクレジットカードではなく現金を持ち歩くことを推奨します。これは自己制御の一方法です」と述べました。

「キャッシュレス効果」に影響を与える要因

この論文は、メタ分析(あるトピックに関する実験論文を集めてきて、それらをさらに分析)を用いて「キャッシュレス効果」を強化または弱化させる要因を特定しました。研究によると、特に宝飾品などのステータスシンボル商品を購入する際や、経済が好調な時期(例:GDP成長率が上昇している時期)に、キャッシュレス決済での支出が増加する傾向が見られました。

一方、キャッシュレス決済に慣れるにつれて「キャッシュレス効果」が時間とともに弱まることが研究で明らかになりました。また、小額のチップに関しては「キャッシュレス効果」が観察されませんでした。

アデレード大学のウェブサイトに掲載された記事によると、「予想に反して、現金と比較してキャッシュレス決済がチップや寄付を増やすとは限らないことがわかりました。これにより、従来の現金収集方法(例えば、チップ瓶や寄付用のコインスピナー)とキャッシュレス決済端末を使った募金が同等に効果的であることが示された」とのことです。

ショムバーグ氏は、後払いサービスや暗号通貨決済が将来の支払い行動に影響を与える可能性が高いと指摘しました。

「どちらも目新しいため、現時点では学術研究は限られており、今後の研究が必要だと考えています」と述べました。

 キャッシュレス社会は「ほぼ不可避」

ショムバーグ氏は、キャッシュレス社会への移行が将来「ほぼ不可避」であると述べ、企業が「キャッシュレス革命」を受け入れなければ、収益の可能性に悪影響を及ぼす可能性があると指摘しました。

「政策立案者は、銀行口座を持たない人々など、キャッシュレス取引に不慣れな人々と対話し、キャッシュレス決済が過剰支出を招く可能性について理解を深めるべきです。」

現金使用を守る法案の議会提出

オーストラリアは現在、世界的にデジタル決済のリーダーの一つですが、一部の人々はキャッシュレス社会への移行に対して懸念を示しています。2007年には現金決済は69%を占めていましたが、2022年末までにわずか13%に減少しました。

6月3日、無所属議員のカレア・アンドリュー・ジー氏は、「2024年オーストラリア現金取引保存法案」を提出しました。この法案は、オーストラリアの国民経済における「現金の使用」を維持することを目的としています。

同議員は、この法案が「対面取引を行う企業は、1万豪ドル(約104万円)以下の現金支払いを受け入れなければならない」とする立法措置を含んでいると述べています。

ジー氏は「法案では、個人には最大5000豪ドルの民事罰が、企業には最大2万5000豪ドルの民事罰が科されるべきだと規定しています。これは刑事罰ではなく、民事罰であることに留意する必要があります」と述べました。

ジー氏は、オーストラリアの多くの高齢者が「そもそも銀行カードでの取引を望んでいない」と指摘しました。

「すべての人がオンライン銀行サービスを利用できるわけではありません。多くの人々にとって、オンラインでの口座管理や銀行カードの使用はストレスがたまり、混乱を招くものです」

ケネディ地域から選ばれたカッター・オーストラリア党のボブ・カッター議員は、この法案を支持し、「自分がパンを買えるかどうかを、銀行の担当者に決めてもらいたいですか?」と述べました。

同氏は「間違いなく、我々は少数の人々が生活のすべての側面をコントロールする、ある種のディストピア(ユートピアとは真逆な世界)的な社会に向かっています。そして(銀行の担当者は)小切手を現金化したり、カードの使用を許可したりしないほうがいいと考えるかもしれません」と付け加えました。

 

オーストラリア在住の記者。以前はMotley Fool Australia、Daily Mail Australia、Fairfax Regional Mediaの記者を務めていました。