SNSだけでは世論や「空気」を作れない? 現場で見たオールドメディアの功罪

2024/05/05
更新: 2024/05/05

不思議な現象がある。メディアが作り出す世論、すなわち「空気」は、SNSでは作ることができない。例えば、パンデミック条約に反対する人々が1万人とも2万人とも都内に集まり、大きなデモ集会を行った。本当だったら一大ムーブメントになってもいい社会現象だが、国民みんながパンデミック条約に反対だという「空気」はできていない。オールドマスコミが封じていることが原因だろう。

SNSと新聞・テレビには決定的な違いがある。例えば、子供はなにか面白いテレビ番組を見たら、翌日学校に行き、友達と情報交換することができる。「昨日何々を見たよ」と言えば、「あ、見た見た」と返ってくる。みんなが同じものを見ていると、共通の話題に上がってくる。

ところが、自分が好きなネット配信を見て学校に行っても、必ずしも共感を得られるわけではない。チャンネルが固定されているテレビと違い、インターネットは千変万化だ。「パンデミック条約の反対デモ大きかったね」と自分で思っていたとしても、職場で同僚に伝えるとは限らない。つまり、共通認識にならないのだ。

私はこれを「タコツボ状態」と呼んでいる。知っている人は知っている、もしかしたらここに10人いたら10人みんな見ているかもしれない。しかし一人ひとりが「タコツボ」に入り、周りが見えないので、孤独な群衆の状態だ。

こうした問題は、メディア報道の偏向が著しい沖縄でなおさら顕著に現れている。本来であれば、マスコミの偏向した論調に抗って、ムーブメントを作らないといけない。しかし、田舎や離島に行けば行くほど、人は目立ちたがらない。マスコミと戦うとなると、知り合いや友人から「目立つことをやるなんて、馬鹿じゃないの」という目で見られる。

私の知る限りでは、中国のリスクを認知している沖縄県民はかなり増えている。例えば、タクシーの運転手と世間話をすると、中国共産党の危険性や、核シェルターの必要性といった話題になる。

しかし、そのような声を新聞やテレビは報道しない。真実を隠蔽し、隠したいのだ。取り上げられるのは、基地反対やシェルター反対を訴える、ごく一部の人たちの意見だけ。1万人のデモがあっても無視するのに、5人のデモを報道する。

沖縄では、本当の情報を流しても、メディアによって偽情報のレッテルを貼られる。「フェイクチェック」の名目で、フェイクが広まっている。そのため、沖縄の本当の世論はどうなのかと聞かれても、誰にも分からない。

「台湾琉球統一戦争」を画策する中国共産党は、嘘の連続で塗り固めたような政権だ。嘘をつける人しか出世できない。本音を言えばすぐ消されてしまう。李克強という元首相の死因さえ、疑わしい点が指摘されているほどだ。そのような勢力が、沖縄をあの手この手で取り込もうとしている。しかしメディア報道は、対中宥和一辺倒だ。

中国共産党の情報戦や世論工作に対抗するには、民間レベルだけでは力不足だ。政府が主体的に、国民に対して抑止力とは何か、国防とは何か、国家とは何かを教育しなければならない。国家がなくなれば人権は保証されないことを、多くの人々は知らない。

本当の戦いはこれからだ。オールドメディアが隠しきれないようにどう戦うか。昔は沈黙こそ美徳とされてきたが、今では沈黙は罪だと言いたい。皆が沈黙しているうちに、沖縄の未来がなくなってしまうのではないかと危惧している。県民が本当の情報を入手できなければ、民主主義の根幹が揺らいでしまう。

(了)

この記事で述べられている見解は著者の意見であり、必ずしも大紀元の見解を反映するものではありません。
仲村覚
一般社団法人日本沖縄政策研究フォーラム理事長、ジャーナリスト。陸上自衛隊少年工科学校(横須賀)入校後、航空部隊に配属。退官後、沖縄県の中国浸透工作に警鐘を鳴らす活動を行う。著書に「狙われた沖縄― 真実の沖縄史が日本を救う」(ハート出版)、「沖縄はいつから日本なのか 学校が教えない日本の中の沖縄史」(同)ほか多数。