政府は27日、経済安全保障に関わる重要な情報を保護するため、資格制度「セキュリティー・クリアランス(適性評価)」の導入を定めた「重要経済安保情報保護・活用法案」を閣議決定した。日本企業の国際ビジネス展開を容易にするとともに、プライバシー権の保護にも十分配慮する。
セキュリティー・クリアランスは、政府が保有する安全保障上重要な情報にアクセスする政府職員や民間人に対し調査を行い、信頼性を確認した上でアクセスを認める制度。保護の対象となる情報を「重要経済安保情報」として指定する。
資格付与に際し、犯罪歴や情報の取り扱いに関する経歴などを調べる。漏洩には5年以下の拘禁刑か500万円の罰金、またその両方を科す。
資格の有効期間は10年以内で、政府職員および民間企業の従業員も対象とする。防衛と民生が一緒になったデュアル・ユース技術が重要度を増すなか、民間企業の海外ビジネス展開にも資する狙いがある。
林官房長官は27日午前の記者会見で、「本法案によるセキュリティークリアランス制度の整備は、我が国の情報保全の強化につながるほか、日本企業の国際的なビジネスの機会の拡大につながると考えている」と語った。
内閣では高市早苗経済安保相を筆頭に議論を進めてきた。1月30日の経済安全保障推進会議では、岸田首相が経済・技術分野においても「情報保全を更に強化する必要がある」と強調。「関係大臣は高市大臣と緊密に連携し、政府一丸となって取り組んでほしい」と述べた。
セキュリティー・クリアランス制度では、情報を取り扱う人員に対して、犯罪歴や薬物の使用歴、家族の国籍など7項目について調査を行う。プライバシー権の保護の観点から、対象者に対して調査内容などを事前告知し、同意を取る。さらに、調査を通して収取される個人情報は、目的以外での利用を禁止する。
安倍政権下では2014年、特定秘密保護法が成立し、防衛、外交、スパイ防止、テロ防止の4分野に限定して情報保全を行なってきた。中国共産党による浸透工作やスパイ工作が横行するなか、より広範囲な情報保全法の整備を求める声は年々高まっていた。
林官房長官は「国民の皆様の理解を得られるよう、同法律の経済安全保障上の意義や、企業の国際ビジネスの拡大を通じた経済活動への効果について説明していく」と述べた。
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