中国政府は2年前から、海外メディアの記者を招待して10カ月間滞在させ報道のトレーニングを行い、海外における中国関連報道の世論を形成しようとしている。インドの英字ネットメディア・プリントが11月24日に報じた。
中国外務省は2016年から毎年1期10カ月間、アジアとアフリカの主要メディアから約100人の外国人ジャーナリストを迎え入れている。2016年はインド、パキスタンを含む東南アジア、そしてアフリカの計12カ国が参加した。
米シンクタンクのブルッキングス研究所のブルッキングス・インディア客員研究員で元インド紙インディア・トゥディ記者アナンス・クリスナン氏は、この取り組みは、「中国の良い話を伝える」という共産党政権の宣伝工作を実現させているという。
中国英字紙チャイナ・デイリーによると、記者たちは厚遇で迎えられている。北京市の高級市街・建国門外交公寓にある家賃約2万2000元(約35万円)のマンション一室が与えられ、毎月5000元(約8万円)の奨励金を受け取る。さらに、月2回の中国内地方への視察がある。
記者たちは政府の指導要領で期間中に中国の大きな政治ニュース、国際ニュースを取材する。トレーニング期間中は語学クラスに参加し、修了時に中国の大学から国際関係学の学位が授けられる。
また、多くの在中の外国メディア特派員が取材されない中国政府関係者や公官庁関係者の接触が許可されている。
中国国営メディアである中国中央テレビは2016年に再編した。習近平主席はこれについて「中国と世界の関係は歴史的な変化を遂げている。中国は世界についてより良く知る必要があり、世界は中国についてもより良く知る必要がある」と述べた。
再編により中国国際テレビネットワーク(CGTN)が生まれ、米国支局、アフリカ支局の規模を拡大させた。
海外メディアへの影響力も増幅させている。中国国営メディアは数年前から米国、日本、英国、オーストラリアの公営および民間のメディアと提携している。アフリカやアジアでの強化は顕著で、2014年には中国アフリカプレスセンターが設置され、2018年までに中国南アジアプレスセンター(CSAPC)と中国東南アジアプレスセンター(CSEAPC)も立ち上がった。中国外務省と中国公共外交協会が運営している。
クリスナン氏によると、10カ月トレーニングに参加したあるインドの特派員は、この取り組みは報道の質に影響を与え、利益相反にあたる恐れがあると述べた。多くのジャーナリストは単独で報道に取り組むことは非常にコストがかかることだが、中国当局からふんだんな資金を受け取ることは不公平だと同特派員は考えているという。
トレーニング中、記者たちは単独での中国地方取材は許可されていない。チベット、ウイグル自治区には当局者の同意で入域できるが、現地の人権侵害問題などについて報道することは許可されないという。
東南アジアの国からのある記者は、中国当局から南シナ海の係争については報道してはならないとの通知があったという。
中国公共外交協会の胡正躍副会長は2017年、中国の期待感は記者の手から伝わると述べた。「アフリカとアジアの記者は中国と各国との協力に注意を払い、特に一帯一路に重点を置くべきだ」
クリスナン氏は、こうした海外メディアによる中国共産党政策の「良い話」に関する報道は、対外宣伝工作であると同時に、中国国内では党の求心力を高めることを目的としていると考えている。
(翻訳編集・佐渡道世)
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