中国 陳思敏コラム

一歩も引かない習陣営 反腐敗運動の嵐が吹き荒れる

2017/06/29
更新: 2017/06/29

6月11日、中紀委は、12回目の中央巡視組巡回のフィードバック状況をインターネットで公開した。今回は第18回中国共産党中央委員会による最終回の巡回で、中紀委は「すべての部門を網羅した」と評価している。

中央巡視組とは、党中央規律検察委員会(中紀委)から各省庁、国有企業、地方政府に派遣される巡視チームで、各機関に党規に対する違反がないかをチェックするため、不定期に巡視を行っている。

この巡回により多数の腐敗官僚が摘発され、政府メディアは、これまで正式に通報のあった「有毒な」大トラ(腐敗した党高官)は少なくとも周永康、令計画、郭伯雄、徐才厚、蘇栄、王珉、薄熙来、王立軍、黄興国、武長順、白恩培、仇和の12人、と実名を挙げて公表した。

これらの腐敗官僚は例外なく江派。彼らはこれまで、軍、政府、公安局、検察局、法院や地方政府にまで幅広く勢力を伸ばして権勢をふるっていた。今回のリストは、「現在の中国における汚職高級官僚は、全て江沢民につながっている」との世論と一致している。

今回の任期において、習主席は江沢民の腹心で、軍部に大きな影響力を持っていた徐才厚と郭伯雄、公安・司法部門の「皇帝」との異名を取る周永康、国家安全部副部長の馬建を失脚させ、「大トラ狩り」が、31省自治区直轄市すべてをカバーした。

今後、官僚と財界の間の癒着関係を一掃し、金融系統に山積する数々の弊害を解消するため、習主席は腐敗官僚に対し、さらに追及の手を強めてゆくとみられる。

 

今年初め、香港から北京へ連れ戻された中国人富豪の肖建華は、江派の不正資産を自身の企業集団「明天系」で資金洗浄していたことが明らかになっており、元中国人民銀行頭取・元天津市市長戴相龍の娘婿・車峰、元国防長官梁光烈の息子・梁軍、元政協主席賈慶林の娘婿・李伯潭、元国家副主席曽慶紅の息子・曽偉など、多くの江派有力幹部家族の名前が挙げられている。つまり、肖の調査を進めることは、腐敗幹部家族の利権を追及することに直結している。

ある政治評論家は、肖建華事件とほぼ同時に発生した、逃米中の富豪郭文貴による党内部スキャンダルの暴露は、江派が習陣営反腐敗勢力に抱く不満が結集したもので、江派は19大までに、反腐敗運動の陣頭指揮を執る王岐山を失脚させることを狙っていると分析している。また、習政権は海外逃亡中の郭自身より、中国国内にいる郭の後ろ盾に対する調査・処理には重点を置いているとの情報もある。

ここで、4月末に海外の消息筋が「習近平、王岐山、孟建柱の3人は、郭文貴を陰で操る人物を厳罰に処すことで合意している」と伝えた後、5月に起きた一連の大きな動きを振り返ってみる。

反腐敗運動においては、この1カ月で12人もの腐敗官僚に実刑判決が下された。この数は18大以来のハイペースで、「大トラ狩り」がさらに加速していることを表している。しかもこの中には、習主席に「18大以降、悪行を続け、無法の限りを尽くしている」とまで言わしめた武長順も含まれていた。武長順に終身刑が下されたことで、18大以来、全国31の省自治区直轄市級の地方政府にある失脚した腐敗官僚のトップ全員の刑が定まったことになる。この31カ所の「大トラ」には、いずれも共通点がある。江派メンバーだという点、うち少なくとも28人について、江派の法輪功弾圧政策に追従していたことが明らかになっているという点だ。

軍制改革については、中国当局は16年3月、軍部による有償サービスを順次停止させ、18年6月末までには全て完了させることを確認している。「軍部による有償サービス」とは、軍所有の資産やサービスを一般社会に有償で提供することを指し、典型的なものが軍の病院の一般開放で、その他、芸能公演を行う歌舞団、科学研究機関や倉庫、港湾など多岐にわたる。これらは、しばしば軍関係者の不正蓄財の温床となるほか、所有する有償サービス部門の多少によって、地方の軍当局の福利厚生にばらつきが出るなど弊害が多い。大規模に強制的臓器摘出(臓器狩り)が最初に行われるようになったのも、軍の病院だった。

高層人事面においては、習主席はかつての部下、蔡奇を北京市長から北京市共産党委員会書記に昇格させた。江派以外の官僚が首都北京のトップに就任したのは、95年以来実に22年ぶり。

5月からの政局を分析すると、習陣営は江派に対し、一歩も引けない立場にあるのが分かる。6月11日に王岐山が主管する中央巡視組が、全ての地域を網羅したフィードバックリストを提示したが、これで決着がついたわけではない。引き続き、巡回調査を受けた部門に関しては、これまで同様、腐敗状況に応じてそれ相応の処理が行われるとみられている。

19大までに行われる反腐敗運動の嵐は、海外からの暴露で失速するどころか、加速したと思われる。

(翻訳編集・島津彰浩)

この記事で述べられている見解は著者の意見であり、必ずしも大紀元の見解を反映するものではありません。