<赤龍解体記>(49)中共2012の政情を占ういくつの要素(二)

2012/01/23
更新: 2012/01/23

【大紀元日本1月22日】『求是』(中共機関誌)の2012年第1号には、胡錦濤の文化に関する談話と共に、ペンネーム「秋石」の社説『我が国の現段階の道徳状況を正しく認識せよ』が掲載されている。

「秋石」は『求是』とほぼ同じ発音のペンネームであることから、この文章は個人や団体の主張ではなく、中共政治局の方針として打ち出されたものと推測され、その主旨は温家宝道徳堕落論を否定したものとされる。

2011年4月14日、温家宝首相は、国務院参事および中央文史研究館館員と会談を行った。近年相次いだ「毒ミルク」「マンホール油」など悪徳事件に触れ、信用の喪失、道徳の堕落により、これほど深刻な状態に陥ってしまったと述べた。温家宝のこの発言は国内外で反響を呼び、大きな共鳴を得ていた。

しかし、9月27日に行われた「全国道徳規範」表彰会議において、中共中央の文明事務室の王世明副主任が中国の道徳の堕落を否認し、10月31日の『光明日報』も広東省の小女ひき逃げ事件について「道徳崩壊などとやたらに言うな」という時評を掲載し、この中国の道徳崩壊論を「かなり偏りに失した独断的なものだ」と批判した。そして、1カ月後の12月6日、『光明日報』はまた第一面トップ記事「光明専論」にて、「堕落かそれとも上昇か―我が社会主義道徳の建設について」を掲載し、温家宝の道徳堕落論と張り合った。

こういった経緯を背景に、前記の『求是』の社説も打ち出された。この文章は、今日の中国の道徳状況を評価する根本的な標準は、生産力、経済基礎、社会進歩、人民の根本利益と、それぞれの基準に基づくしかないとし、レーニン理論までも持ち出し、例の道徳堕落論を「断片的、随意的なでたらめ」とした。そして社会主義の新中国は、人民の道徳や精神において巨大な躍進を成し遂げ、社会制度を完全化した改革開放が人民の道徳と精神をより一層巨大な進歩を促した、と主張している。

この文章は、温家宝の中国道徳堕落論に立場の問題があると批判したものと読まれている。この批判は実際、中共の機関紙が温家宝首相に対する4回目の批判なのである。

2010年8月から9月までの間に、温家宝は国内外で8回も政治改革を呼びかけ、「中共がもし停滞、後退し、人民の意志に背ければ、最終的には死ぬしかない」と明言した。

温家宝の言論に対し、『人民日報』は10月27日にペンネーム「鄭青原」(本源を正すという意味)の文を掲載。文章は中共の政治改革の停滞と後退を否認し、指名しないにもかかわらず、実際は温家宝が正確な政治方向を失い、その言論が空中楼閣だと批判した。

これに対し、温家宝はまれに見ない反撃を見せた。2011年4月23日に、温家宝は、香港の左派長老・吴康民氏を招き、中南海で1時間半ほど単独会談を行った。中国改革が苦境に陥った原因について、温家宝は主に2つの勢力による邪魔であると明言し、1つは封建主義の残余、もう1つは文革大革命の余毒である。この2大勢力の存在により、人々は真実を言うことができず、法螺を吹くのを好むようになり、社会の風紀が悪化したと話した。そして、温家宝はこの談話および会見の写真を、香港のメディアで公開するのを許した。

一連のことで、温家宝の中共指導部における境遇が次第に明らかになってきた。

注目すべきは、『求是』の文章が公表されてから、温家宝はふたたび中国の道徳堕落論を言及しなくなったことだ。

 <続く>