英下院のビジネス・イノベーション・科学・貿易委員会は11月2日に公表した報告書で、中国製のコネクテッドカーやIoT(モノのインターネット)機器が、国家安全保障上の脅威となる恐れがあると警告した。
委員会は、重要インフラで使用する機器の監視・管理を強化するとともに、安全保障上のリスクが高い国で製造されたネット接続機器や部品の導入を制限するよう政府に提言した。機密情報の流出や、外部からの不正操作を防ぐ狙いがある。
現代の自動車には多数のセンサーやカメラ、通信機器が搭載されており、車内外の情報を収集し、インターネットを通じて送信できる。一部の自動運転車には遠隔操作機能もあり、こうしたシステムが悪用されれば、人の安全を脅かす恐れがある。
報告書は、中国共産党(中共)の安全保障機関が中国メーカーに対し、システムへのアクセスを認めるよう要求する可能性を指摘した。これにより、外国の機密情報を収集したり、現地の交通網や物流システムを妨害したりする恐れがあるという。
対中経済活動に「レッドゾーン」 安全保障分野での協力禁止を提言
「中国と英国経済 リスク管理を伴う成長の必要性」と題する報告書は、英国政府の現在の対中政策には、明確で一貫した原則が欠けていると指摘した。
一部の商業協力は認められる一方、別の案件は最終段階で阻止されるなど、企業や投資家にとって政府の方針を予測しにくい状況にあるという。
委員会は、対中経済活動をリスクに応じて「赤・黄・緑」の3つに区分する仕組みの導入を提言した。
このうち「レッドゾーン」は、英国の安全保障や国家主権に直結する重要分野を指し、政府はこれらの分野で中国との経済活動を禁止すべきだとした。
コネクテッドカーについては、英国の通信事業者と協力し、防衛や緊急サービスなどの重要分野で使用する車両と外国の組織との間で行われるデータ通信を監視するよう求めた。
また、安全保障上のリスクが高い国で製造されたネット接続機器や部品について、英国の重要インフラへの導入を制限するよう提言した。
さらに、EUの取り組みを参考に、既存の機器についても安全保障上のリスクを検証すべきだとした。
公正貿易・技術流出防止・供給網強化が柱
委員会は、英国政府が対中政策を進めるうえで、次の3つの戦略目標を掲げた。
1. 公正な貿易環境の確保
貿易救済措置を強化し、公共調達制度を改革することで、英国企業が公平に競争できる環境を整える。中共が不公正な競争慣行の是正を拒む場合、英国は関税措置を取る準備を整えるべきだとした。
2. 機密技術・データの流出防止
研究活動の安全保障体制を強化するとともに、英国国内のコネクテッドカーと外国の組織との間で行われるデータ通信を監視する。
また、安全保障上のリスクが高い通信技術の重要インフラへの導入を禁止し、戦略的産業で外国資本が保有する資産について、政府が継続的に審査できるよう権限を強化する。
3. 経済的威圧とサプライチェーンのリスク軽減
英国のサプライチェーンの安全を確保するための計画を策定し、強制労働によって生産された製品の輸入を禁止する。
英国政府は、委員会の提言について2か月以内に正式に回答する必要がある。
英大学と中共軍関連機関の共同研究に懸念 MI5も警告
報告書は、非政府組織「英国・中国透明性組織」の調査を引用し、英国の一部大学が中共軍とのつながりを指摘される中国の研究機関と共同研究を行っていたことも取り上げた。
報告書が挙げたのは、北京航天制御機器研究所、上海大学無人艇工程研究院、江蘇自動化研究所などだ。
このうち江蘇自動化研究所は、海上作戦に使用するドローンの設計に携わっている。
報告書は、中共とロシアがドローン技術の開発で協力しているとの情報があることから、英国の大学とこれらの研究機関との共同研究は、特に懸念を招いていると指摘した。
また、英国の情報機関MI5(保安局)が2026年9月に発した安全保障上の警告についても取り上げた。
MI5によると、英国と関係のある約100人の研究者が、中国通用技術研究院のために研究を行っていた。その多くは、同研究院が中共国家安全部と関係していることを知らなかったという。
MI5は、通用技術研究院が主に中共の国家安全保障機関の技術力を直接高める研究に資金を提供していると指摘した。研究対象には、AI、サイバーセキュリティー、秘密通信システム、データ内に情報を隠す技術「ステガノグラフィー」などが含まれる。
MI5は英国の大学に対し、同研究院との研究協力関係を見直すよう強く勧告した。
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