中国製EVに情報流出リスク 欧州で警戒強まる、米国は規制拡大

2026/11/04
更新: 2026/11/04

9月中旬から10月中旬までのわずか1か月で、ノルウェーとフランスが相次いで警告を発した。中国製自動車、特にEVに搭載された技術が、中共によるデータや情報の収集手段となる恐れがあるという。

中国製自動車 が軍事演習を記録 兵士の行動や暗証番号も

米国の団体「繁栄する米国のための連合」のウェブサイトによると、中国製自動車が収集するデータには、メーカーが運転者の利用状況を把握し、製品の改良に役立てるためのものもある。しかし、多くの車両は記録装置としても機能し、大量の情報を収集・保存している。

報道によると、9月14~18日にノルウェーのオスロ空港で行われた軍事演習中、兵士らは車両システムに保存された映像に、自分たちの行動や走行ルート、軍事施設の出入りに使う暗証番号まで記録されていることを発見した。

演習中、兵士らは少なくとも2台の「ディーパル」のレンタカーを使用していた。ディーパルは、中国共産党(中共)の国有企業である長安汽車が製造する自動車ブランドだ。

ノルウェー郷土防衛隊の報道官を務めるペル・グンナル・グロスベルグハウゲン陸軍中佐も、兵士らが実際に車両システム内で映像記録を発見したことを認めた。

その後、ノルウェー国家安全保障局のアンドレアス・ショルドロランゲ氏は、中国の自動車メーカーが収集した車両データであっても、最終的に誰に渡るのか分かっていないと警告した。

フランスのセバスチャン・マルタン産業担当相も10月13日、ラジオ局RMCに出演し、中共に遠隔操作される恐れのある車両は、ない方がよいとの考えを示した。

その後、フランスのBFMTVは、サイバーセキュリティー専門家でハッカーでもあるガエル・ミュスケ氏にインタビューした。

ミュスケ氏は、冷蔵庫など、インターネットに接続されたほかの機器にもセキュリティー上の脆弱性があると警告した。冷蔵庫に脆弱性があるなら、次は自動車でも同じ問題が起こり得ると指摘した。

欧米で中国製自動車への警戒強まる

フランスは2017年から、この問題を継続的に注視してきた。

フランスの独立した個人情報保護監督機関、情報処理・自由全国委員会は今年6月、コネクテッドカーの位置情報の利用に関するガイドラインを発表した。基本原則は利用者の同意を得ることだ。

原則として、自動車メーカーが車両の位置情報やその他の個人データを収集・利用する場合、事前に利用者の同意を得なければならない。ただし、利用者が希望するサービスの提供にデータ収集が不可欠な場合は例外となる。

この規定は、コネクテッドカーや中国製自動車そのものを禁止するものではない。一方、政府が消費者に慎重な判断を促すことはできる。

消費者が中国の多国籍企業による個人データの収集や、さらには政府へのデータ提供まで認めるのであれば、車両を購入し、データ収集に同意することもできる。

米国も遅くとも2024年には、この問題への対応を始めていた。

当時、民主党のシェロッド・ブラウン上院議員は「外国の敵対勢力による偵察への対抗法案」(S.4763)を提出した。しかし、規制範囲が十分に広くなかったためか、最終的に成立には至らなかった。

同法案は、中共政権下の中国を含む外国の敵対国で製造したコネクテッドカーやその部品を搭載した車両について、米軍基地、連邦政府施設、重要インフラの周囲25マイル(1マイル × 1.6 = キロ)以内での走行を禁止する内容だった。

ただし、この規制には実施や監督が難しいという問題があった。その後、新たな法案ではブラウン氏が提案した規制対象を大幅に拡大した。

自動車メーカーのポールスターが、サウスカロライナ州の組立工場の閉鎖を一時検討するほどだった。ただし、ポールスターの生産ラインに直接的な脅威となったのは、米商務省による新たな規制上の判断だった。

9月3日、米自動車イノベーション協会は議会に対し、無線ネットワーク機能を備え、車載データを中国本土へ送信できる中国製自動車を恒久的に規制するよう求めた。

同協会には、米国に本社を置く国内外の大手自動車メーカーが多数加盟している。2020年に米自動車製造業者連盟と世界自動車製造業者協会が合併して発足した。

米上院で新たに提出された「コネクテッドカー安全保障法案」は、中国製のソフトウェアやハードウェアを使用する自動車への規制を法律に明記することを目指している。

一方、米商務省も規制措置を明確に打ち出している。

バイデン前政権下の商務省は2025年、中国と関係のあるコネクテッドカーや一部の車載ソフトウェア、通信機器について、米国への輸入や米国内での販売を直接制限した。規制対象には中国製の車載通信モデムも含まれる。

フランスとの違いは、米商務省の規定が自動車製品やサプライチェーンそのものを直接規制する点にある。

フランスでは消費者の同意を得れば企業は事業を続けられるが、米国では消費者の同意を得ても規制対象となる。

トランプ政権も発足後は、バイデン前政権が定めたこの規定を引き続き施行している。

規定の重要な点は、米国内で製造された自動車であっても、中国製の通信機器を使用していれば規制対象となり得ることだ。

規制は、特定のソフトウェアやハードウェアに加え、中露と関係のあるメーカーが製造する関連製品にも及ぶ。米国内で組み立てられた車両も例外ではない。

ただし、規定には認可制度も設けられており、条件を満たした企業は引き続き販売許可を取得できる可能性がある。

こうした規制の影響で、サウスカロライナ州リッジビルの工場で生産するEVのSUV「ポールスター3」が、今後も米国で販売できるかどうかは不透明だ。同工場を運営するのはボルボ・カーズだが、同社の支配株主は中国の吉利グループである。

ポールスターは今年上半期の決算発表で、2027年モデル以降について、米商務省産業安全保障局から米国内での販売認可を拒否されたと明らかにした。

一方、ボルボはポールスターの出資者であり、同じ工場で「EX90」も生産している。

ボルボは、情報管理において「完全なファイアウォール」を構築しており、「中国企業や中国の担当者に、いかなる情報や顧客データも漏れることはない」と保証すると説明した。そのうえで、米国内での自動車の生産・販売を継続する許可を取得した。

しかし、ポールスター3とボルボEX90は、同じ車両プラットフォーム「SPA2」を採用している。

つまり、ハードウェアを交換するだけでは、企業の株主構成や中国側の支配権という別の問題は解決できず、米国での販売許可を得られる保証もない。

米国の安全保障審査が拡大 自動車から家電製品へ

中共が先端技術分野で影響力を拡大するなか、米国や自動車イノベーション協会などの国際的な業界団体は、中国企業が既存の自動車ブランドの市場での地位を脅かす可能性を懸念している。

米国や欧州でコネクテッドカーの安全保障上の問題への関心が高まることで、今後はさらに多くのインターネット接続機器が同様の審査を受ける可能性がある。

例えば、米連邦通信委員会(FCC)は今年7月28日、「外国製の高度なロボット機器」を国家安全保障上の規制対象リストに追加した。

これにより、対象製品を米国へ輸入するには、それ以降、認可が必要となった。

FCCがこの措置を講じる約6か月前、マサチューセッツ州ベッドフォードに本社を置くアイロボット(iRobot)の全株式を、中国・深センのロボットメーカー「杉川機器人」と香港の「Santrum Hong Kong」が取得した。

杉川機器人は、アイロボットの主要な製造委託先だった。この買収により、かつて米国を代表するブランドだったアイロボットは、中国資本が100%保有する企業となった。

FCCの規定では、すでに認可を受けた機種を基にした新しい「ルンバ」は、引き続き米国へ輸入できる。しかし、新たな製品シリーズについては、別途認可を申請しなければならない。

このため、アイロボットが今年9月に発表した掃除・水拭き両用ロボット「Roomba Max 875 Combo」は、新規制により米国での販売を一時停止した。

FCCの新規制は、米国の安全保障上のリスク審査が、自動車分野から家庭用製品にまで広がったことを示している。

米商務省によるコネクテッドカー規制は、中国と特定の関係があるソフトウェア、ハードウェア、メーカーを主な対象としている。

これに対し、FCCによる高度なロボット機器への規制は対象がさらに広く、外国製の関連製品すべてに及ぶ。

こうした一連の動きから、米国が安全保障審査の対象をさらに拡大していく流れは、もはや避けられないとみられる。

李平