中国沿岸部を射程に 国産12式地対艦誘導弾 空中発射型が飛行試験

2026/08/06
更新: 2026/08/06

政府は先月30日、国産の12式地対艦誘導弾の空中発射型について、飛行試験を実施した。同ミサイルは最大射程約1000キロを有し、台湾周辺海域や中国沿岸部の一部を射程に収める能力を備えるとされる。防衛能力の抜本的強化に向けた取り組みの一環と位置付けられる。

7月30日、航空自衛隊岐阜基地(岐阜県)周辺で航空機愛好家が撮影した写真には、三菱F-2B戦闘機の主翼下に、弾頭を搭載しない12式地対艦誘導弾改良型(空中発射型)の試験弾2発が確認された。この画像により、同改良型が飛行試験段階に入ったことが公の場で初めて裏付けられた形となる。

今回の試験の主眼は、ミサイルの空力特性および機体に加わる構造荷重の検証にあるとみられ、今後予定される分離試験、さらには実弾射撃試験に向けた基礎データの取得を目的としているもようだ。

スタンド・オフ防衛能力の中核装備に

12式地対艦誘導弾の空中発射型は、日本が推進する国産スタンド・オフ防衛能力構築計画の中核装備の一つに位置付けられる。地上発射型は今年3月に部隊配備が完了しており、従来約200キロにとどまっていた国産対艦ミサイルの射程は、約1000キロへと大幅に延伸された。

艦艇発射型と空中発射型は来年度前後の配備開始が見込まれるほか、潜水艦発射型についても開発が継続されている。

地上発射型はすでに陸上自衛隊の健軍駐屯地(熊本県)に配備済みである。射程1000キロの範囲には、台湾海峡北部、中国・浙江省、江蘇省、山東省の沿岸部、および朝鮮半島の大部分が含まれるとみられる。

空中発射型については、航空機の前方展開能力と高い機動性を活用できることから、ミサイル自体の射程を超えた形で、実質的な攻撃可能範囲をさらに拡大し得るとの指摘がある。

軍事専門メディア「ネイバルニュース」の報道によれば、撮影された同機は航空自衛隊飛行開発実験団に所属し、新型装備の各種試験を専門に担う部隊とされる。

低被探知設計とリアルタイム指令更新機能

同ミサイルはレーダー探知を困難にする低被探知設計を採用しているとされる。加えて、衛星通信を利用した「Up-to-Date Command(リアルタイム指令更新)」機能を備え、発射後も発射母体から飛行中のミサイルへ指令を送信し、目標情報を含む更新を行うことが可能とされる。これにより、移動する艦艇に対する攻撃能力の向上が期待されている。

最大の特徴とされるのが長射程性能である。航空自衛隊がこれまで運用してきた80式空対艦誘導弾(ASM-1)の射程は約50キロ、93式空対艦誘導弾(ASM-2)は約200キロとされるのに対し、改良型12式対艦ミサイルは最長約1000キロ先の目標に対応する能力を有するという。

この長射程化は、燃料搭載量の増加、大型主翼の採用、高高度域で効率的に作動するエンジンの搭載など、複数の技術を組み合わせることで実現されたとみられる。

航空自衛隊は同ミサイルの運用に向け、F-2戦闘機の能力向上改修を進めており、2027年度以降、茨城県の百里基地に改修型F-2戦闘機と改良型12式対艦ミサイル(空中発射型)を配備する計画とされる。

 探知・追尾能力の整備が課題

もっとも、こうした長射程ミサイルを効果的に運用するには、数千キロ離れた海域で活動する目標艦艇を継続的に探知・追尾し、高精度の目標情報を取得・更新する能力が不可欠とされる。

このため政府は、低軌道衛星コンステレーションの整備を急ぐとともに、敵の脅威圏内に進出して情報収集を担う戦術無人機の開発も並行して進めている。

偵察・監視・目標捕捉(ISR)能力が一体的に整備されることで、改良型12式対艦ミサイルは本来の性能を十分に発揮できるようになるとの見方が示されている。

「戦後最も厳しく複雑な安全保障環境」

12式対艦ミサイルの改良は、日本が推進するスタンド・オフ防衛能力の中核をなすものと位置付けられる。政府は2018年末に策定した「防衛計画の大綱」において、初めて同能力の整備方針を明確に打ち出した。同年には米国製長距離精密打撃ミサイルの導入検討と並行し、国産長射程ミサイルの開発にも本格的に着手している。

スタンド・オフ防衛能力の基本的な考え方は、航空機、艦艇、地上部隊が敵の防空網の射程外から装備を運用し、日本への侵攻を阻止するというものである。中共による海軍力の急速な拡張や、北朝鮮のミサイル能力向上を踏まえ、日本政府は同能力の整備を通じて周辺の安全保障上の脅威への対応能力強化を図っている。

防衛省は昨年8月29日、改良型12式対艦ミサイルに関する情報を公表した際、「我が国を取り巻く安全保障環境は、戦後最も厳しく複雑な状況となっている」との認識を示した上で、「スタンド・オフ防衛能力をより早期に構築するため、不断の取り組みを進めている」と説明している。

同省はまた、「国産スタンド・オフ・ミサイルの開発は順調に進展している」とも明らかにした。

日本は国産ミサイル開発を着実に進める一方、7月29日には米国製巡航ミサイル「トマホーク」の国内初となる発射試験も実施した。日米両政府はこれを、共同で進める海洋作戦能力強化における重要な節目と位置付けている。

李思齊