日米拡大抑止協議 中国の核拡大やロシア 北朝鮮の脅威に対応

2024/12/13
更新: 2024/12/13

日米両政府は、東アジアの安全保障環境が一層厳しさを増す中、拡大抑止の強化をテーマに協議を行った。特に、中国共産党による急速に進む核戦力の拡大、北朝鮮とロシアの軍事協力深化、ロシアによる核威嚇など、地域における脅威に対する認識を共有し、これらに対し連携して対応する方針を確認した。また、同盟の抑止力をさらに高めるため、防衛能力の連携や政策調整の具体的な強化策について議論した。

日米政府は12月10日から12日にかけて、日米拡大抑止協議を開催した。外務・防衛当局の担当者が出席し、「日本の防衛力によって増進される米国の拡大抑止の強化」という日米首脳のコミットメントを改めて確認した。

背景

日米拡大抑止協議は2010年に設立され、日米同盟の中核である拡大抑止を維持・強化するための議論の場として機能している。

現在、東アジアの安全保障環境は、北朝鮮の核開発とミサイル発射、中国共産党の軍事的台頭、ロシアによるウクライナ侵攻などで不安定化し、日本に対する脅威が高まっている。

ここ数年、中国共産党は急速に、核戦力を拡大しており、9月25日、中共は太平洋に向けてICBMを試射した。

2024年版の米国防情報局「核の課題」報告書によると、中国は現在500発以上の核弾頭を保有し、2030年までに1千発に達する見込みとされている。報告書は、中国が「多様な核戦力」を目指し、核兵器を用いた反撃能力の向上を目指していると指摘。また、「台湾問題などで通常軍事作戦が失敗した場合、核兵器の使用を検討する可能性がある」と警告している。

一方、ロシアはウクライナ侵攻の中で核兵器による脅迫を強化し、公式発言や「核ドクトリン」の更新を通じて核抑止の安定性を揺るがしている。さらに、北朝鮮とロシアの軍事協力が進み、北朝鮮兵士がロシア軍と共同で作戦を展開していることが、米国務省によって確認された。12月4日には北朝鮮とロシアの両国間で「包括的戦略パートナーシップ条約」が発効し、協力関係が一層深まっている。

協議の内容

協議では、ロシアの核威嚇や北朝鮮の核・ミサイル活動、中国の核戦力拡大の透明性不足など、地域の安全保障上の課題に対応するため、こうした敵対勢力の軍事的影響力の拡大抑止の強化が議論された。日米両国は、同盟および地域に対する侵略を防ぎ、必要に応じて対応するため、政策調整や防衛能力の連携を強化する重要性を確認した。

特に、厳しい安全保障環境の中で、潜在的な攻撃や核使用を抑止するための協力の必要性が強調された。また、核と非核の関係性や平時・緊急時の抑止メッセージの調整、エスカレーション管理についても議論を深めた。さらに、軍備管理、リスク低減、不拡散が、地域の安定促進と紛争リスク軽減に果たす重要な役割について、意見を共有した。

協議の一環として、日米代表団は熊本県の陸上自衛隊健軍駐屯地を訪問。指揮所演習「ヤマサクラ87」の視察や最新装備(12式地対艦誘導弾、ネットワーク電子戦システム*)の紹介を受けた。

*12式地対艦誘導弾(12しき ちたいかんゆうどうだん)は、日本が独自に開発・配備している地上発射型の対艦ミサイルシステムです。主に、陸上自衛隊が沿岸防衛や離島防衛のために運用しています。

*ネットワーク電子戦システムとは、従来の電子戦(電磁スペクトラム領域での攻撃・防御・支援活動)を、複数のセンサー、通信機器、解析装置、指揮統制システムをネットワークで結合・統合することで、より効果的かつ迅速に展開する仕組みや体系を指します。