【プレミアム報道】トランプ大統領、違憲の箝口令と闘う

2024/05/07
更新: 2024/05/07

米前大統領ドナルド・トランプ氏のソーシャルメディア上での絶え間ない口論により、批判者や一部の支持者から「口を閉じてほしい」という声が上がった。

しかし現在法廷は、トランプ前大統領に対し、4月15日にニューヨークで始まった刑事裁判についてすでに沈黙を命じていた。これに対して一部の弁護士は、この命令は違憲であり、言論の自由の侵害を指摘している。

「口止め料事件」に適用される法廷からの命令は、現代で最も発言力のある公人に、かん口令を敷くことを意図したものだ。弁護士たちは、憲法に基づくものだというこの命令に異議を唱えた。しかし、ニューヨーク州最高裁判所のフアン・マーチャン判事代行は、自らの命令に固執。 4月23日に開かれた公聴会で判決を下した。

マーチャン判事の命令はトランプ前大統領をターゲットにしているが、「トランプ前大統領よりもはるかに大きな」意味を引き起こすと、法学者のマイク・デイビス氏は言った。

デイビス氏は、政府高官が、トランプ前大統領や他の市民、特に保守派や非民主党員の憲法上の権利を侵害するのはよくあることだ。「共和党を終わらせるための戦略 」である。「共和党と民主党が法的ないたちごっこを繰り広げ、法廷での「内戦」に発展する可能性がある」と指摘した。

トランプ前大統領のかん口令をめぐる争いによって、言論の自由と、選挙運動と刑事手続きで衝突する事実が出てきたということだ。

オハイオ州の弁護士であり、検察官や裁判官を務めた法律アナリストのマイク・アレン氏は、「この事件の裁判官は難しい立場にいる。トランプさんの憲法第一修正案の権利と犯罪プロセスのバランスを取らなければならない」と述べた。

アレン氏はエポックタイムズに「アメリカ合衆国の前大統領であり、おそらく将来の大統領でもあるという事実が、この事件を複雑にしている。そして、これらの事実はまさに選挙戦の真っ只中にある」と語った。

危険

かん口令は、裁判官が当事者の発言を制限するために使用するが、使われることはめったにない。禁止命令が非常に具体的であれば、違憲とみなされる。ほとんどの場合、命令は両側に適用される。しかし、今回のこの命令はトランプ大統領とそのチームにのみに適用した。

デイビス氏は、トランプ氏の同盟者であるロジャー・ストーン氏(Roger Stone)が、以前に箝口令を受けたことを指摘した。トランプ氏は後にストーン氏を恩赦し、彼が「ロシアのデマ」で議会に嘘をついたとして、不当に起訴されたが、このスキャンダルでは、トランプ前大統領を指摘する証拠は見つからなかった。

デイビス氏は、トランプ前大統領に対するマーチャン判事の命令を「危険」という言葉で表現した。マーチャン判事は4月1日、当初の3月26日の命令は、「アメリカの有権者に向け自由に発言し、公の場で自己防衛する憲法上の権利 」を守るため、トランプ氏の「狭い範囲での調整 」であったと述べた。

このかん口令は、別の事件でトランプ前大統領に対して出された連邦政府のかん口令に続くものだ。しかし、マーチャン判事とこの事件を起訴したマンハッタン地方検事アルビン・ブラッグ氏についてコメントすることは可能だ。

トランプ前大統領は「トゥルース・ソーシャル」というプラットフォームで、裁判官や検察官を繰り返し批判した。 「トゥルース・ソーシャル」は、他のソーシャルメディアでブロックされた後、トランプ大統領が2022年に立ち上げたものだ。

マシュー・コランジェロ氏(Matthew Colangelo)は、プラハオフィスに加わる前の2022年末まで、ジョー・バイデン大統領の司法省で高官だった。 彼はトランプ大統領に対する箝口令を申請した。

コランジェロ氏は、制限を実施する理由は、トランプ前大統領が「長い間、ソーシャルメディア、スピーチ、集会、およびその他の公開声明を利用して、彼が敵と見なすものを攻撃してきたからだ」と述べた。

ニューヨークのかん口令を敷くにあたり、マーチャン判事はトランプ前大統領の言論の自由は認めているが、彼の発言は自分自身を守るためではない。むしろ 「脅迫的、扇動的、中傷的 」と解釈した。

トランプ氏の弁護士、ニアーマン氏(Joseph Nierman)は、「トランプ前大統領のかん口令を解く」努力の一環として、ニューヨークの控訴裁判所にマーチャン判事を提訴した。

「GoodLawgic」という名前でソーシャルメディアに投稿された3分間のビデオの中で、ニアーマン氏は、この訴訟はすべてのアメリカ人のために、憲法を支持することを求めるものだと述べた。ニアーマン氏は、マーチャン判事の命令は、かん口令の法的根拠として引用されている最高裁判決の範囲を超えていると主張した。

ニアーマン氏は、かん口令は誰かの憲法上の権利の保護につながるものでなければならないと主張した。 しかし、マーチャン判事の命令は、そのような関連性はなく、 その代わりに判事は、「公正な司法行政という国家の利益」を促進するためにこの措置を取ったと述べた。

その主張は「事実上、どんなシナリオ」についても可能だとニアーマン氏は語った。

かん口令に対する4月12日の異議申し立てに関する口頭弁論で、ニアーマン氏は、他の弁護士たちが 「ドナルド・トランプは人々を怖がらせている 」などと抗議してきたと述べた。彼の反論: 「怖い 」人のために特別な法律があるわけではない」

「この命令が許可されれば、裁判所がかん口令を敷くことができる状況が一気に拡大する」と、ニアーマン氏はビデオの中で述べ、他の弁護士にも彼の取り組みを支持するよう呼びかけた。

一部の攻撃者に対して無防備

トランプ大統領の言論を批判することもある法学者ジョナサン・ターリー氏は、この命令によって前大統領が、辛辣な批評家たちに返答できなくなることを憂慮している。

ターリー氏のウェブサイトに掲載されたコラムでは、数年前の疑惑を選挙シーズンに刑事訴追するようなものだ。これは不公平だと彼は主張した。

トランプ前大統領に対する4つの刑事事件では、すべての検察が、11月5日の選挙前に裁判を行うよう推進している。ターリー氏は「選挙は法廷闘争の疑惑に左右される可能性が高い」と述べた。

多くのアメリカ人は、トランプ前大統領に対する訴追は政治的な動機によると考えており、特にニューヨークのケースは、専門家も 「法的欠陥がある 」と考えている。

しかし、マーチャン判事の命令により、トランプ氏は、彼を起訴する支持者を批判できなくなった。コランジェロ氏も含まれる。コランジェロ氏は過去にもトランプ氏と関係のある法的問題で、重要な役割を果たしてきた。

コランジェロ氏の案件の果たした役割は、多くの人々にとって検察官の 「トランプを追い詰めるキャンペーンの証拠」とターリー氏は述べた。「コランジェロ氏をこのキャンペーンの調整役として「最も話題になっている人物」と呼んでいた。

かん口令はまた、トランプ氏とその弁護団が、ニューヨーク事件の証人供述に、公に答えることを禁じている。その中でも特に注目すべきは トランプ前大統領の元弁護士マイケル・コーエン氏と、AV女優として知られるステファニー・クリフォード氏。

ドナルド・トランプ氏が大統領選に初出馬する10年前に、彼女は不倫関係にあったと主張した。

コーエン氏は、2016年の大統領選挙キャンペーンに打撃を与える疑惑について口をつぐむよう、彼女に13万ドルを支払った。しかし、このような支払いや秘密保持契約は合法であり、有名人が告発者を黙らせるための一般的な救済策だ。

現在進行中の裁判で検察側は、「口止め料」の返済を隠すために、トランプ氏がコーエン氏の業務記録を違法に改ざんしたと主張。これが違法な「選挙資金」献金にあたると主張した。しかし、多くの弁護士や選挙資金の専門家は、この法律の解釈に反対している。

ブラッドリー・スミス元連邦選挙管理委員会委員長は、2018年のコーエン氏の判決時にエポックタイムに対し、コーエン氏は以前、秘密保持契約に対する支払いなど「犯罪ではない可能性が高いー選挙資金疑惑」を含む多くの犯罪を認めていたと述べた。

7 違反の疑い

マーチャン判事がかん口令を敷いた翌日の3月27日、トランプ前大統領はコーエン氏とクリフォードさんについて、「2人のゲス野郎が、嘘と虚偽の陳述で、我々の国に大損害を与えた」と述べた。

トランプ大統領は、クリフォードさんの元弁護士であるマイケル・アヴェナッティ氏がかん口令の非難をソーシャルメディア投稿をしたことに感謝しながら、トゥルース・ソーシャルにそう書いた。

アヴェナッティ氏は、コーエン氏とクリフォードさんが「無数のテレビインタビュー」やソーシャルメディアへの投稿、そして金儲けのための「インチキドキュメンタリー」で第45代大統領をバッシングする自由を残しておきながら、トランプ前大統領を黙らせるのは間違っていると述べた。

4月18日の陪審員選任の中、検察はトランプ前大統領を7つのかん口令違反で告発した。

その中には、トランプ前大統領は追加コメントを出さなかったものの、ターリー氏がコーエン氏について論じた記事の共有も含まれている。トランプ氏の弁護士は、コーエン氏の口撃に対抗するために、このような投稿を許可すべきであると考えていると主張した。

同命令では、トランプ前大統領は「捜査またはこの刑事手続きに参加する」公判証人について公言することは禁止されている。しかし、トランプ氏を支持する、あるいは反対する他の人のSNS投稿を共有できるかどうかについては触れられていない。

検察側の法廷侮辱罪の申し立てを、裁判官が判断することになった。トランプ前大統領は、罰金、懲役刑、またはその他の制裁を受ける可能性がある。

判事が命令を拡大

この論争の別の側面として、トランプ大統領は2つの投稿でマーチャン判事の娘に言及した。

3月26日の投稿では、判事の娘がバイデン大統領やカマラ・ハリス副大統領といった有力民主党議員の代理人を務めるマーケティング会社、オーセンティック・キャンペーン社で働いていることを指摘した。

裁判官の退席を求める申し立ての中で、トランプ氏の弁護士は、マーチャン氏の事務所に関連する政治活動について詳述し、これらが裁判官の「不適切さの印象」を与えるとした。

マーチャン判事は退任を拒否したが、トランプ前大統領に対するかん口令の改定を求める検察側の要請を認めた。その理由の1つとして3月27日の投稿で娘の「攻撃」を挙げた。

投稿の中でトランプ前大統領は、判事の娘が「明らかな目的で獄中の私の写真を投稿し、私が公正な裁判を受けることを完全に不可能にしている 」と述べた。

「裁判長や担当弁護士の家族を攻撃するこのパターンは、正当な目的を果たすものではありません。 自分たちだけでなく、その家族も被告の中傷の 『獲物 』だからです」

マーチャン判事は、トランプ前大統領が陪審員、陪審員候補、証人、相手方弁護士、裁判所のスタッフ、アルビン・ブラッグ氏の事務所など、いくつかのカテゴリーに属する人々について「公の場で発言したり、指示したりすること」を禁じる命令を下したと述べた。

4月1日に出された拡大命令は、「弁護人、職員、裁判所、地方検事」の家族も対象だ。これらの発言は、事件に携わる人々に「重大に妨害する意図を持って」なされた場合は禁止される、と判事は書いている。

係争中の権利

Article III Projectの創設者であるデイビス氏は、マーチャン判事に関するトランプ大統領の発言を、判事が 「攻撃 」と表現したのは「誤解」との見解を示した。彼は、トランプ前大統領がマーチャン氏の職業上の役割について、懸念を示したのは正当だと考えている。

裁判官はかん口令を違法に、違憲に拡大することで対応した。「刑事被告人が、刑事事件における裁判官の偏見の証拠を提起しただけで処罰され、暴力的脅迫を引き起こしたと中傷されるのは非常に危険だ」と述べている。

「裁判官の対応は、違法かつ違憲なかん口令の拡張だ」 

「刑事被告人が、自分の刑事事件における裁判官の偏見についての証拠を提示しただけで、暴力の脅威を作り出したとして処罰され、汚名を着せられるのは危険だ」

とデイビス氏は述べた。

さらにデイビス氏は  「かん口令の目的は刑事被告人の権利を守ることであり、政府を守ることではない。刑事被告人にかん口令を敷くことはない。それは非アメリカ的だ」と主張した。

彼は、トランプ前大統領に対するかん口令は、憲法修正第1条、第6条、第14条に基づく彼の権利を侵害していると主張した。

これらの修正条項は、「自由に発言する権利、刑事告発について公正かつ正当な公開裁判を受ける権利、法の適正な手続きなしに生命、自由、財産」を奪われることなく「法の平等な保護」を受ける権利を保証するものだ。

トランプ前大統領の裁判に参加したがらない証人がいるという報道について聞かれたデイビス氏は、トランプ前大統領のソーシャルメディア上での暴言に、人々が恐怖を感じるのは「ナンセンス」だと述べた。

民主党は、自分たちは「法の支配」を守っており、トランプ前大統領の訴追は「法の上に立つ者はいない」ことを示していると繰り返し主張した。

しかし、デイビス氏は反論: 「憲法は、政府から私たちを守る盾であるべきだ。政府が私たちを狙うための剣ではないのだ」

デイビス氏は、トランプ前大統領の件で、政府関係者がかん口令を頻繁に求めるようになるのではないかと懸念した。

デイビス氏は「億万長者で前大統領というのは、この嵐を切り抜けるだけの資源と発言力を備えているが、他の被告はそうではない」と述べ、「トランプ前大統領が関与する裁判のひとつやふたつは、最終的に連邦最高裁判所に持ち込まれるだろう」と予測した。

トランプ前大統領に対する裁判は、共和党に敵対する民主党が支配する司法管轄区で、意図的に起こされたようだと語った。

デイビス氏は「この有害な法廷は、トランプ前大統領をかん口令で封じることに成功するかもしれないが、トランプ前大統領が抱える何百万人もの支持者を、かん口令で封じることには成功しないでしょう」「紙面上でかん口令を敷くことができても、実際にはそうすることで彼の声を増幅させている」と指摘した。

多くの有権者は、「他の候補者が口にすることさえ恐れていることを口にし、他の候補者が恐れていることを実行しようとするトランプを称賛した」とデイビス氏は語った。

「現代に合った古き良きジャーナリズム」を掲げる報道記者。表現の自由や若者のトランスジェンダー運動など、さまざまなテーマで執筆している。エポックタイムズ入社前は、オハイオ州の新聞社で20年以上にわたり記者としての経験を積み、数冊の本を出版した。ケント州立大学ジャーナリズム科卒。
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