中国経済政策の行き詰まり:分析と展望

2024/03/31
更新: 2024/03/30

 

年次「両会(中国独特の政策決定制度)」会議では、党の指導部が具体的な議題を提示できず、これが北京が今後どのような行動を取るべきか模索している状況を物語っている。 

中国が急速な発展を遂げてきた時代には、議題の少なさがそれほど問題とならなかった。しかし、不動産危機、輸出不足、人口減少、信頼喪失、外国との敵意の増加など、巨大な課題に直面している今、大胆な指針が求められているので、北京はこれまで以上に、行動を起こし、将来の行動計画を示す必要があった。しかし、両会でこの必要性に対応できなかったことは、中国の指導部のアイデアが尽きていることを示唆している。 

特に、伝統的な首相記者会見が行われなかったことは注目に値する。数十年にわたり、すべての両会にはメディアとの対話の機会が設けられてきた。高位の中国共産党幹部が常にオープンであったわけではないが、避けたい話題や気まずく感じる問題が公になることも少なくなかった。今年、記者会見が中止されたことは、共産党指導部が公の場で、恥をかくのを恐れているとしか考えられない。

 中国共産党の経済政策行き詰まり 

当局は、2024年の実質成長目標を約5%に設定した。この目標は、昨年の成長ペースに非常に近く、予想されていたものであるため、地味な提案と捉えられている。しかし、この目標は、2019年までの数年間に中国が達成した成長率の半分あまりに過ぎないから、ある種の失敗の認識とも解釈できる。現状、中国が今後成長率を向上させることができるかは不明であり、専門家の間では懐疑的な意見が多い。また、当局は成長目標の達成方法についての詳細を明らかにしていない。 

1兆元(約20兆5千億円)の追加インフラ支出が提案された。このインフラ投資は、中国共産党による経済刺激策の一環としてよく利用されるが、資金調達の具体的な方法には触れられていない。通常、インフラ資金の主な供給源である地方政府は、巨額の債務を背負っており、一部は市民への基本的な公共サービスの提供さえ困難な状態にある。 

北京は、中央政府が地方の債務を肩代わりし、支出を資金調達するという異例の措置を取る準備があることを示唆している。しかし、これには疑問が残る。中央政府も過去最高の予算赤字に直面しており、超長期債への依存は、政府の財政状況が非常に厳しいことを示している可能性がある。超長期債は、債務返済の必要性を先延ばしにし、政府がその支出から直ちに利益を期待していないことを示唆している。

 

不動産危機 

不動産危機及びその経済的、財政的影響に対する言及はほぼ無いに等しい。この問題への断固たる対応が求められる中、中国共産党から提示されたのは、地方政府が資金援助を検討する前に失敗に瀕する不動産プロジェクトのリストを作成する「白名簿」のみである。しかし、これまでに言及された金額は、必要な額に比べて微々たるものに過ぎない。特に、エバーグランデ(中国本土で 2 番目に大きい不動産開発会社)の初期の失敗額のわずか5%程度でしかない。 

数週間前には、中国共産党が住宅市場の約30%を引き継ぐ計画が話題に上がった。この措置は中国に他の深刻な問題を引き起こす可能性があるものの、不動産危機を隠蔽するには十分な規模だった。しかし、このような大胆な提案は最終的に両会で聞かれることはなかった。 

また、中国が直面するデフレ問題についてもあまり議論されていない。デフレは問題の根本原因ではなく、むしろ民間企業の消費や資本支出の需要不足といった問題の症状に近い。しかし、共産党指導部はこれらの問題に対してあまり言及していない。当局は年間3%のインフレ目標を設定しているが、その目標を達成するための具体的な計画については何も述べていない。 

中国人民銀行(PBOC)が利率を、これまで以上に下げるという方針を打ち出したが、以前の利率引き下げが期待した反響を得られなかったことを踏まえると、この措置が、効果的な解決策とは言い難い状況である。会議後、中国人民銀行は会合でさらなる利率の引き下げを行わない決定を下した。 

また、両会の発言者は、彼らが「新しい生産源」と称する新たな成長の推進力に言及したが、新しい情報の提供はほとんどなかった。以前の発表と同様に、再生可能エネルギー、先端技術、電気自動車が主な焦点となった。しかし、これらの分野において中国共産党がどのように進展を促すのかについて、両会での討論は抱負に溢れるだけで、具体的な提案は見受けられなかった。中国経済の現況を鑑みると、これは明らかに不十分である。 

両会が、中国の将来の方針を示す目的を持っている場合、今年の会議はその目的を果たしていないと言える。特に、中国が現在直面している経済的・財政的な課題を考慮すると、その失敗は顕著である。4月の政治局会議でより具体的で実質的な方針が、示されることを期待する声もあるかもしれないが、両会の内容を踏まえれば、その期待は薄いだろう。中国共産党が新たなアイデアを見出せていないことが問題となっている。

 

(本記事の見解は筆者個人のものであり、エポックタイムズの立場を代表するものではない)

 

著者について

Milton Ezrati氏は、国際的な見識を持つ経済学者であり、ナショナル・インタレストの寄稿編集者を務めるとともに、ニューヨーク州立大学バッファロー校(SUNY)の人的資本研究センターにも関わっている。また、ニューヨークを拠点とするコミュニケーション会社「ベステッド」でチーフエコノミストの職にある。ロード・アベット&カンパニーにおいてチーフマーケットストラテジスト兼エコノミストとしての役職にあった経験も持ち合わせている。エズラティ氏は、シティジャーナルへの頻繁な寄稿や、フォーブスでの定期的なブログ執筆により、経済分析の分野での深い洞察を提供している。彼の最新作「サーティ・トゥモローズ:グローバリゼーション、人口動態、そして私たちがどのように生きるかの次の30年」は、今後30年のグローバルな動向とその影響についての考察をまとめたものである。

この記事で述べられている見解は著者の意見であり、必ずしも大紀元の見解を反映するものではありません。
ミルトン・エズラティは、The National Interestの寄稿編集者であり、ニューヨーク州立大学バッファロー校の人間資本研究センターの関連組織であり、ニューヨークに拠点を置くコミュニケーション会社Vestedの主席エコノミストである。Vestedに加わる前は、Lord、Abbett & Coの主席マーケットストラテジスト兼エコノミストを務めていた。彼は頻繁にCity Journalに寄稿し、Forbesのブログに定期的に投稿している。最新の著書は「Thirty Tomorrows: The Next Three Decades of Globalization, Demographics, and How We Will Live」。