日本がレーダー設置する島国キリバス、中共警察が闊歩…米「緊張あおる恐れ」

2024/03/12
更新: 2024/04/09

中国共産党太平洋島しょ国への浸透が危険な水域に達している。キリバス共和国が2月下旬、治安維持のために中国(共産党)警察を投入すると発表したことを受けて、米国は深刻な懸念を示した。同国には日本が建設した衛星追跡用のレーダー基地があり、我が国の安全保障にも影響を及ぼしかねない。

キリバスの警察当局は2月24日、「コミュニティ警察プログラムとIT部門を支援するため、中国警察官が派遣されることになった」と明らかにした。ロイター通信によると、中国側は地域の犯罪データベースを構築しているという。

米国は中国共産党のキリバスへの進出に警戒感を示している。米国務省の報道官は2月26日、中国警察の受け入れは「太平洋島しょ国の助けになるとは思えない。むしろ地域的・国際的な緊張をあおるリスクさえある」と述べた。

米議員からも懸念の声があがる。対中国共産党特別委員会のラジャ・クリシュナムーティ下院議員は「中国の警察活動はキリバスにおける影響力の増大を示す深刻な兆候だ」と指摘した。

キリバス軍事拠点化の懸念も

中国共産党が将来的に、キリバスに軍事基地を設置する可能性があると、米軍の専門家は警告している。もし設置されれば、西太平洋では初となる人民解放軍の海外基地となる。

フジイ・タカモト空軍大佐は米専門誌『インド太平洋外交ジャーナル』への寄稿で、キリバスと中国の経済的・政治的つながりが近年急速に深まっていることに着目し、ジブチのように、経済支援を強化してから軍事拠点化を図る「前例」があると説明した。

キリバス政府は軍事拠点化を否定しているが、「状況次第では中国がその機会を窺う可能性がある」とタカモト大佐は警告する。

キリバスは2019年、台北政府の代わりに北京政府と関係を確立し、20年には中国大使館が開設された。さらに中国共産党は21年、米軍が第二次世界大戦中に建設したカントン島空港の改修計画に着手している。

タカモト大佐はまた、キリバスの戦略的重要性について指摘した。同国はハワイからおよそ3千キロ離れた太平洋中部に位置し、人民解放軍の弾道ミサイルが配備されれば、オーストラリアやニュージーランド、米国にとって大きな脅威となる。主要な海上交通路にも近く、有事の際には米軍の船舶や航空機の展開に重大な影響を及ぼしかねない。

対中抑止、欠かせぬ国際協力

中国共産党が太平洋島嶼国への影響力を強めるなか、日本も積極的に関係強化を図っている。昨年4月から150日間に渡って「第7回インド太平洋方面派遣(IPD23)」を実施し、過去最多の17か国・地域を訪問した。潜水艦1隻を含む4隻の艦艇と1190人が派遣され、各国海軍との信頼関係の強化を図った。

艦隊はソロモン諸島やトンガ、フィジー、そして中国共産党が浸透を続けるキリバスに寄港した。艦隊指揮官の西山高広・海自第1護衛隊群司令は朝日新聞の取材に対し「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)の趣旨は地域の平和と安定、逆説的に言うと、力による一方的な現状変更を許さないというメッセージ」と述べた。

日本政府は昨年度から、レーダーや通信システムなど安全保障分野での装備支援を開始し、これまでフィリピンを含む4か国への供与が決まった。長年続いたODAに代わる、発展途上国支援の新たな柱と目されている。日経アジアレビューによれば、新制度の対象国は今後さらに拡大する予定で、艦船の供与も検討されているという。

外交面でも、日本が主導する多国間外交サミット「太平洋・島サミット」(3年に一度開催)が今年7月、東京で開催される。太平洋島嶼国・地域が直面する問題について首脳レベルで意見交換が行われる。中国共産党の拡張を抑止するという重大な局面において、日本政府のリーダーシップが問われている。

日本の安全保障、外交、中国の浸透工作について執筆しています。共著書に『中国臓器移植の真実』(集広舎)。
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