選挙の投票操作を目的とする中国といった敵対国からの広範な偽情報操作に対して、世界は準備できていない。中国共産党関連の団体がAI(人工知能)で作成した偽画像や動画などが、2024年米大統領選の勝敗に重大な影響を与える可能性があると、調査アナリストが警鐘を鳴らした。
「プーチン大統領や習近平が、情報操作にどれだけの資金と労力を投じているかを計算し、そして我々が、防衛にどれだけの資金を投入しているかと比較すれば、間違いなく『対策不十分』との結論に至るだろう」
台湾のNPO「Doublethink Lab」の呉銘軒最高経営責任者(CEO)はエポックタイムズの取材にこう答えた。
呉氏は、中国の選挙干渉の脅威を取り上げた2月28日のパネルディスカッションに参加した1人だ。
パネルディスカッションは、台北駐日経済文化代表処で行われた。台北のジェームズ・K・J・リー大使は、中国共産党は、台湾を他の民主主義国の選挙干渉の「実験場」として利用していると述べた。
1月の台湾総統選挙を前に、中国に関連した悪質なサイバー攻撃が2倍以上に急増し、政府機関、警察、金融機関などが標的にされていたことが、米国のサイバーセキュリティ会社の調べでわかった。選挙投票日間近には、中国共産党の支援を受けた関係者が、ソーシャルメディアでフェイクニュースを拡散し、食糧不足を印象づけることで、社会的パニックを煽った。人工知能で作成した司会者もユーチューブに多数出現し、台湾の蔡英文総統の私生活について北京語や広東語で偽情報を流した。
11月に大統領選を控える米国も、中国の選挙介入に警戒する必要があると、専門家らは指摘する。
昨年の12月の国家情報会議報告書によれば、中国共産党は2022年の中間選挙で、特定の選挙結果に影響を与えようとした。同月、米連邦捜査局(FBI)のクリストファー・レイ長官は、2024年の大統領選挙における外部からの選挙干渉のリスクが「高まっている」と警告した。マイクロソフトのアナリストも、11月に発表した報告書で同様の懸念を示した。
米シンクタンク、アトランティック・カウンシルのデジタル・フォレンジック研究所シニアフェローのケントン・ティボー氏は、エポックタイムズの取材で、中国共産党が米国との競争を、「存立の危機問題」と見なしていると指摘した。
「過去の行動を考慮すると、中国共産党は、何らかの形で米大統領選に関与してくるだろう。彼らは様々なソーシャルメディアプラットフォーム上で、多くのデジタルインフラを構築している。彼らがこれを利用して中国寄りの言説を広め、米国の政治的な緊張を悪用し、米国を偽善的な国に仕立て上げようとするだろう。これは内部から敵を弱体化させ、『戦わずして勝つ』という政権の戦略の一部だ」
AIは、中国共産党の偽情報戦略の痕跡を隠すための、重要な新手段となっている。
パネルディスカッションでティボー氏は、新型コロナの大流行の責任を米国に転嫁するために、米フォート・デトリック基地からウイルスが発生したとする偽のシンクタンクの報告書を作成し、その後、他のチャンネルを通じて偽情報を広めたという中国共産党の取り組みを挙げた。
2022年夏には、中国共産党関連の団体がボルチモアのミュージシャンを雇い、国際宗教自由サミットの前で、反差別運動「ブラック・ライブズ・マター(BLM)」の抗議デモや、強制労働を理由に、中国の新疆ウイグル自治区からの輸入を禁じる米国の措置に対する模擬抗議デモを行わせた。どちらも録画された動画が、ソーシャルメディアに流され、米国内の社会的緊張を煽った。
米シンクタンク外交政策研究所のアジアプログラム委員長のジャック・デリル氏は、親中派の言説が独り歩きすることが政権の思惑だ、と語った。
「民主主義社会では、一旦ある考えが広まり始めると、それを封じ込めるのは非常に難しい。賛否はともかく、システム内で、意見を表明し投票する権利を持っている人々によって、支持される見解となる。そのため、米国が外国勢力による選挙干渉の試みを、軽減することは非常に難しくなる」
「現在、米国の選挙は接戦であるため、わずかな影響であっても、例えいくつかの選挙区における1%未満の影響であったとしても、結果に大きな影響を与える可能性がある」
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