両会の期間中「草木皆兵」となった北京 あふれる検問所と監視員、中共は何を恐れるのか?

2024/03/06
更新: 2024/03/06

今年、中国では3月4日から5日にかけて「両会」と呼ばれる2つの重要会議(全国政治協商会議と全国人民代表大会)が開催された。その間、開催地の北京では、例年以上の厳戒態勢が敷かれている。

草木皆兵(そうもくかいへい)」と言われる通り、中国共産党は明らかに何かを恐れている。街の草木までもが、まるでスナイパー(狙撃手)にでも見えるのだろうか。

北京の街頭には大勢の警官や警備員、市民ボランティアなどが出て、総がかりで同じ市民の一挙一動を監視している。これらの「治安維持要員」は、街を歩く市民に対していつでも職務質問をするほか、持ち物の抜き打ち検査なども行うのだ。

これに先立ち、北京市公安局は「3月1日から、ドローンなどの飛行活動を禁止する」通達を出している。また「両会」閉幕までの間、北京に送られる郵便物や配達の荷物は「二次安検」が行われる。中国語の「二次安検」とは、X線機器などを使った、空港と同等レベルの安全検査のことだ。

このほか、地方からの陳情民が北京入りすることを阻止するため、列車などを利用して北京へ来る(陳情者以外の)民衆に対しても、執拗な検査や実名認証が行われている。

北京をはじめ、福建省や山東省など各地の反体制派や人権活動家は、現地警察によって厳重に監視されている。なかには「軟禁状態」に置かれたり、当局によって「旅行させられる人」もいる。

この「旅行させられる(被旅遊)」というのは、当局が目を付けている反体制派や人権活動家に対して、重要会議の期間中、北京から離れるよう「強制的に他所へ行かせる」ことを指す。

1人の北京市民が陸橋に横断幕を掲げて、中共と習近平に抗議した「四通橋事件」が起きたのは2022年10月であった。その再発を防ぐため、北京市内の交差点や陸橋には、常に見張りが立っている。

そうした異様な警戒ぶりは、もはや一種の「滑稽な風景である」というしかない。

つまり「重要会議」期間中の中国は、例えば海外からのテロリズムや破壊活動に対して警戒しているのではなく、自国のなかで「本当のことを言う、覚醒した民衆」の出現を恐れているのだ。言い換えれば、この仰々しいほどの警備は中共自身が内包する恐怖心の反映である、と見てもよい。

北京の中心部を東西に貫く大通り「長安街」の全ての交差点には、新たに検問スポットが設置された。それにより、中心エリアへの「入場」を希望する市民は、身分証明証などを何回も検査される。

香港紙によると、武装警察や私服警官の数も平常時の数倍に増えただけでなく、通行人の監視に当たる市民ボランティアの密告組織「朝陽群衆」の数も明らかに増えているという。

北京市東郊の「建国路」を起点として、約500メートルおきに「朝陽群衆」の「詰所」が設置されている。そこには、赤い服や赤い帽子、あるいは赤い腕章などをつけた3、4人を1組とする60歳前後の「朝陽群衆」の男女がいる。彼らは、おしゃべりしながら「任務」を遂行しているのだ。

天安門広場周辺の住宅では、なんと「両会」が終わるまで、窓に「封鎖シール」が貼られて開閉できない。また周辺を自転車で走るだけで、何回も止められて「検問」を受けなければならないほどだ。

もちろん一般市民にしてみれば、これらは大いに迷惑なことに他ならない。「両会」の会場内で議論されることと言えば、国民の幸福などは皆無であり、ただ共産党体制の維持だけである。

北京の至るところに、密告するための治安要員「朝陽群衆」が目を光らせている。(微博)
李凌
エポックタイムズ記者。主に中国関連報道を担当。大学では経済学を専攻。カウンセラー育成学校で心理カウンセリングも学んだ。中国の真実の姿を伝えます!
鳥飼聡
二松学舎大院博士課程修了(文学修士)。高校教師などを経て、エポックタイムズ入社。中国の文化、歴史、社会関係の記事を中心に執筆・編集しています。