【寄稿】2024年は史上最大の選挙イヤー…日本への影響はいかに

2024/01/10
更新: 2024/01/11

今年は世界的に見て重要な選挙が目白押しだ。世界の主要国が運命の岐路に立ち、諸国民は「親米・親中」の究極の選択を迫られる。果たして、日本はどのような影響を受けるのだろうか。

台湾総統選の死角

今年は世界的に見て重要な選挙が目白押しだ。主だったものを挙げると、まず1月に台湾総統選があり◇2月にインドネシア大統領選◇3月にロシア大統領選◇4月に韓国国会議員選とウクライナ大統領選◇6月に欧州議会選挙◇9月に自民党総裁選◇そして11月に米国大統領選である。これ以外にも時期は未確定ながら年内に行われる可能性がある衆議院総選挙と英国下院総選挙がある。

まず台湾総統選だが、有力候補者は与党、民進党の頼清徳、野党第1党の侯友宜、野党民衆党の柯文哲の3人である。現在のところ与党、頼清徳が優勢と見られているが、確定した訳ではない。

もし頼清徳が勝利すれば、蔡英文政権の親米路線を引き継ぐと考えられるが、実は同時に行われる国会(立法院)議員総選挙では、野党が優勢と見られており、ここで野党が過半数を占めれば、頼清徳政権は少数与党となってレームダック化が避けられない。

国会は予算案の審議権を有するから、親中派が多数を握れば、米国から高額な兵器を購入できなくなり、中国の台湾侵攻を利するような状況が生まれることが危惧されよう。

ロシア大統領選とウクライナ

2月のインドネシア大統領選では、プラボウォ国防相、アニス前ジャカルタ州知事、ガンジャル前ジャワ州知事の3候補の争いで、プラボウォが優勢と言われているが、インドネシアは中国の強い影響下にある国であり、誰が当選しても親中路線は変わらないものと見られる。

3月のロシア大統領選は、現職のプーチンが圧倒的な支持率を誇っており、当選確実と見られる。これと対照的なのが4月に予定されているウクライナ大統領選であろう。現職のゼレンスキーの支持率は高いのだが、ウクライナは戦時下で戒厳令下にある。

しかも国土の6分の1はロシアに占領されており、600万人が国外に避難している状態で適正な選挙が行われる見込みはなく、延期される公算が大である。もし延期された場合、ロシアは、ゼレンスキーを民主的な正当性のない独裁者として非難することは確実だ。

米国はウクライナ=民主主義国家、ロシア=独裁国家と言う図式でウクライナを支持しているわけだから、プーチンが選挙で再選され、ゼレンスキーが選挙なしに大統領職に居座れば、この図式が崩れてしまい、ウクライナ支持を継続することに困難を感ずることになろう。

韓国尹政権は崩壊するか?

4月の韓国国会議員総選挙について述べよう。現在、韓国国会では野党すなわち親北派が過半数を占めており、尹大統領を支持する与党すなわち親米派が少数与党となっている。従って与党が巻き返せるかが焦点になっている。

ところが尹政権の評判は芳しくなく、現状では野党が優勢だ。もし4月の総選挙で野党が多数派を維持すると、尹政権は危機的な状況になることが懸念される。

というのは、野党優位の国会で、韓国の情報機関である韓国国家情報院が北朝鮮の韓国内における情報工作を捜査できないとする法律が既に成立しており1月から発効している。4月の総選挙で野党が勝利すれば、この法律は継続され、事実上、北朝鮮の韓国への情報工作は野放しとなろう。

北朝鮮は、この機を逃さず大規模な世論工作を仕掛けて来ることが懸念される。左翼系の労働組合やマスコミが連動すれば大規模な反政府運動が展開され、尹政権が崩壊する可能性がある。

尹政権は親米、親日、反中、反北であり、日米韓の連携で東アジアの安定を支えていこうとしているわけだから、ここで尹政権が崩壊することは日米にとっても致命的な打撃となろう。

衆議院解散と米大統領選

6月の欧州議会選の争点は移民問題だ。そして、その結果は11月の米大統領選に影響する。ちなみに6月は日本の通常国会が閉会する時期であり、ここで岸田内閣が衆議院の解散総選挙に踏み切るかどうかが注目される。

解散しなかった場合、9月の自民党総裁選に岸田首相が出馬するかどうかが次の焦点になろう。どういうことか。岸田内閣と自民党の支持率が6月段階であまりに低迷している場合、岸田首相は解散に踏み切れなくなり、同時に自民党内では岸田降ろしが顕在化するだろう。

この場合、岸田首相は、総裁選を断念し潔く身を引いて次の総裁を総理にして、新総理のもとで解散総選挙に踏み切るというシナリオである。

そして11月の米国大統領選だが、米国の最大の問題は、不法移民の流入であり、これが争点になることは間違いない。トランプ政権は不法移民に厳しかったが、バイデン政権は大甘で、それが裏目に出て大量の不法移民が押し寄せ、米国内では収拾のつかない状況になっている。

バイデン政権の失敗は誰の目にも明らかで、トランプが復権する公算は極めて高い。

トランプが当選した場合、大統領に就任するのは来年1月だから、ここでの予測の対象外にしている。

中国経済危機と米中首脳会談

昨年11月15日にバイデン・習近平による米中首脳会談が米カルフォルニア州で開かれたが、その5日後、ホワイトハウスのカービー戦略広報調整官は、「11月15日の会談で、両首脳は、また会うことで合意していた。時期はまだ決まっていない」と述べた。

従って米中首脳会談が今年中に行われるのは確実だ。議題は明らかではないが、米国の中国に対する経済制裁の解除が主要な議題になるのは間違いないだろう。昨年の会談で中国は経済制裁の解除を求めたが、米国は応じなかったことから、米中間の積み残しの課題になっているのである。

中国経済は既に相当、深刻化しており、人民元の暴落がいつ起きても不思議はない。人民元が大暴落した場合、その影響は中国に投資している日米欧の経済に及ぶことは必定だ。一説にはリーマンショックの数倍とも言われる。

この国際経済危機を回避するためには、米国による中国に対する経済制裁を解除するしかない。しかし米国の議会では民主・共和両党とも対中強硬路線で一致している。大統領予備選が始まるので、バイデン政権も中国に対して妥協的な態度を示す訳にはいかないのである。

中国の経済危機を睨みながら米中首脳会談が模索されることになる。

(了)

この記事で述べられている見解は著者の意見であり、必ずしも大紀元の見解を反映するものではありません。
軍事ジャーナリスト。大学卒業後、航空自衛隊に幹部候補生として入隊、11年にわたり情報通信関係の将校として勤務。著作に「領土の常識」(角川新書)、「2023年 台湾封鎖」(宝島社、共著)など。 「鍛冶俊樹の公式ブログ(https://ameblo.jp/karasu0429/)」で情報発信も行う。