「狂気的な値下げ」されど消費者は動かず 今年の「双11」は完全に不発=中国

2023/11/13
更新: 2023/11/14

中国は今、未曽有の不景気にある。将来への大きな不安にかられた消費者は、完全に「買い控え」のマインドになっているため、ただでさえ瀕死状態にある中国経済が、凍りついたような低消費のため一向に活性化しないのだ。

そうした経済の現状を打開する起爆剤になったのか。中国でいう「独身の日(11月11日)」別名「双11」に毎年恒例となっているECイベント(ネットショッピング)、つまり1年で最大の「お買い物の狂歓節(大セール)」は11月1日から始まり、11日をもって終了した。

大セールは不発、できたのは「返品の山」だけ

今年も売り手側は、固く締まった消費者の財布の紐をなんとか緩めようと、あらゆる知恵を絞って各種のセールを展開した。

各社は相次いで「全ネット最安値」「50%引き」「1元(約21円)から~」など、桁外れの「超低価格」を前面に出して、熾烈な価格競争を繰り広げてきた。

しかし、こうした販売側による「狂気的なほどの値下げ攻撃」にも、今年は、期待されていたほど消費者の反応はなく、完全に不発のままあっけなく終わった。

注文した商品を届けた後でも、キャンセル可能な期間には「大量の返品」が生じた。結局、消費者の財布の紐は、ほとんど緩まなかったのだ。

この「双11」の後、「今年の双11は『静か』」だった」のトピックスが中国SNSのトレンドとなった。

 

「双11・お買い物狂歓節(大セール)」の広告板。(NTD新唐人テレビの報道番組よりスクリーンショット)

 

「溜まったマグマは、いずれ爆発する」

景気低迷や失業率の高止まりが続き、中国経済が「長い冬」に入ったいま、「人々は、躺平タンピン、寝そべり)することで中国共産党に反抗している」と分析する声もある。

中国問題専門家で、エポックタイムズのコラムニストでもある王赫氏は、次のように指摘する。

「今、中国人は皆、本当にお金がない。今日だけでなく、明日も、明後日も、将来までも、とにかくお金がありそうな気にもならないのだ。今、中国全体における消費の落ち込みからしても、中国人は将来に対して極めて悲観的になっており、中国経済がすでに『長い冬』に入ったという事実を浮き彫りにしている」

「この冬が、いつ終わるのか、どれくらい寒くなるのか、誰にもわからない。だから、予測不可能な明日に対して、とても楽観視できないという雰囲気が社会全体に広がっている」

中国の国家統計局が9日に発表した、先月(10月)の消費者物価指数(CPI)は下落が続いた。あわせて発表された、企業が製品を出荷する際の値動きを示す「生産者物価指数」も13カ月連続のマイナス成長だったという。

王赫氏は、さらに次のように分析した。

「中国の消費者は『双11』のような商業的刺激にすでに慣れすぎており、飽き飽きしている。中国の経済問題の根源は政治にある。そのため、今こうした現状に大きな不満を持つ国民は国の呼びかけに反抗して、あえて消費せず、子供も作らない。つまり『躺平(寝そべり)』をすることで中国共産党に抵抗していると言えるだろう」

「今、中国社会全体が、すでに人々にとって、生きていても楽しいことがない状態にある。そのような喜びのない生活が続けば、どうなるか。最後に人々は、必ず立ち上がる。今は一見何もなく、みな沈黙しているが、地下に溜まりに溜まったマグマはいずれ爆発するだろう。中国の社会情勢は今、そのような急変を目前にしているかもしれない」

中共政府に背を向ける「躺平(タンピン)」

「躺平(タンピン)」とは、中国語の新語で「寝そべる。横たわる」の意味である。努力せず、抗わず、ただ流れるままに生きるという「消極的ライフスタイル」のことだ。

結婚せず、子供をもつこともせず、出世もマイホーム購入もあきらめた。生命を維持するだけの労働はするが、それ以上の努力はしない。そうした「寝そべり主義」は、今の中国の若者の生き方として、幅広い共感と支持を集めている。

ただし、中国の若者の名誉のために捕捉するが、彼らが怠惰になったり、生きることに無気力になって「躺平」するわけではない。

今の中国社会には、あまりにも多くの不条理がある。社会そのものが劣化し、腐敗しきっているのだ。そのため、若者がどんなに頑張っても正当に評価されず、努力が全く報われないという彼らなりの理由がある。彼らの「躺平」は、その結果なのだ。

また「躺平」することは、そのような中国社会の現状に対して、若者が選んだ一つのレジスタンス(権力への抵抗)でもある。

例えば、中国では今、急速な人口減少が起きている。これに対し、中共政府は「一人っ子政策」を止め、手の平を返すように、あわてて多産を奨励するようになった。しかし、若者たちが選んだのは「結婚せず、子供も持たず」であった。

そこにあるのは、結婚費用や子供の養育にお金がかかりすぎるという現実の事情だけでない。「中共政府に背を向ける」という彼らの姿勢が「躺平」の根底にはある。

李凌
エポックタイムズ記者。主に中国関連報道を担当。大学では経済学を専攻。カウンセラー育成学校で心理カウンセリングも学んだ。中国の真実の姿を伝えます!
鳥飼聡
二松学舎大院博士課程修了(文学修士)。高校教師などを経て、エポックタイムズ入社。中国の文化、歴史、社会関係の記事を中心に執筆・編集しています。