当局によって突如販売禁止になり、今月17日までに全面的に回収された書籍「崇禎:勤政的亡国君(崇禎帝:勤勉な亡国の君主)」。この明末の皇帝である崇禎帝(すうていてい)を題材にした歴史書の価格が今、高騰していることがわかった。
禁書になれば「人気も、値段も高くなる」
販売禁止になったことで、かえって書籍の知名度が上がり、人気が高まったようだ。
実は、この本は2016年に「崇禎往事」という書名で、すでに出版されていた。その改訂版である「崇禎:勤政的亡国君」が先月、再出版されたばかりだったが、当局の「印刷の問題」という不可解な理由によって急遽、回収されたのだ。
そのため、いま中国の古本市場に残っているのは、主として7年前に出版された「崇禎往事」のほうである。なお、流通量は不明だが、すでに販売されて回収できていない「崇禎:勤政的亡国君」も、かなりの高値がついて闇の古書市場に出回っているだろう。古書に定価はないので、需要次第でいくらでも高騰する。
あるネット書店では、2016年出版の「崇禎往事」は在庫の8割近くが売れたという。しかも、販売価格は希望小売価格の27倍にあたる1,280元(約26,000円)まで高騰した。また、今年8月に出版された別の書籍である「崇禎伝」のほうも、希望小売価格の7倍に相当する380元(約7,800円)で売られていた。
「崇禎往事」は出版当時から人気があった本であるが、今回再版されるにあたり、タイトルを「崇禎:勤政的亡国君」に変更された。その新タイトルからは「国を滅亡させた君主」の意味が濃厚に読みとれる。
そのうえ、新しい表紙には「愚策に次ぐ愚策。勤勉であればあるほど、国は滅びる」という宣伝コピーまで付けられた。
驚くほど迅速な「回収ぶり」
もちろんこの本は、明朝のラストエンペラーである崇禎帝を描いたものであり、現代中国に関係するよう意図された内容ではない。明の滅亡は約380年前の1644年である。にもかかわらず、出版されたばかりの本が、大慌てで「回収」されたのである。
こうした当局の動きは、当然ながら上層部からの特別指示があったからに違いない。なぜなら「あまりにも迅速で、見事な回収ぶり」だったからだ。
こうした当局の動きについて、民間では、そのような書名や宣伝コピーの文句からして、崇禎帝が現政権の習近平国家主席を暗示しているとともに、明朝の滅亡と同じく「中国共産党政権の終焉」を民衆に連想させかねないことが当局に問題視され、販売禁止になったとする見方が広がっている。
明末の崇禎帝は、10代の若さで即位してから政務につとめ、特に悪名高い宦官の魏忠賢を排除した点は評価されている。
しかし崇禎帝は、猜疑心が異常につよく、有能な忠臣を次々に誅殺した。
残った重臣は、無能な愚者ばかりだった。それが明の滅亡を早めたことは間違いない。李自成の反乱軍に攻められ、紫禁城の北側にある景山に追い詰められて首を吊る崇禎帝の側には、1人の宦官のほかに、誰もつき従う臣下はいなかった。重臣たちは、全て逃亡していたからだ。
この時、崇禎帝が首を吊った「槐(えんじゅ)の木」は、当時から何代目かの樹木ではあるが、今も景山公園のなかにある。その言い伝えとともに、明末の皇帝が首吊り自殺をしたことは、全ての中国人が知っている史実である。
習氏の姿と重なる「崇禎帝の最期」
このような崇禎帝の最期は、今の中国人から見れば、どうしても現在の習近平氏の姿に重なるのである。
NTD新唐人テレビの討論番組「菁英論壇」に出演したテレビプロデューサーの李軍日氏や「大紀元時報」編集長の郭君氏も、この点について「崇禎帝と習近平国家主席には、多くの共通点がある」と分析している。
李軍日氏:「二人とも反腐敗を通じて民心を獲得し、最高権力の座を手に入れた。しかし、二人とも猜疑心が異常につよく、権力の座に就いてからは失策を重ねた。周囲には信頼できる人間が1人もおらず、官僚たちは、みな躺平(寝そべり)状態だ」
郭君氏:「経済の急速な減速。相次ぐ天災と人禍(人災)。対外関係の悪化。そして、最高権力者が非常に猜疑心がつよく、裸の王様になっている。今の中国は、少なくともこの4つの点において、明朝の最末期と酷似している」
浮き彫りになった「現体制の脆弱さ」
時事評論家の周暁輝氏は、次のように指摘している。
「習氏と崇禎帝は、あまりにも多くの類似点がある。そのため中国当局は、民衆の連想を誘発することを懸念するとともに、習氏が崇禎帝と同じ運命をたどることを恐れている。だからこそ、この本に禁令を下した。しかしこの愚策は、かえって中南海の上層部の脆弱さを浮き彫りにしてしまった」
近頃、習近平国家主席はロケット軍司令官をはじめ、中国軍の高官を立て続けに粛清している。そのため、中国共産党の政治の中枢である中南海は今、大変な混乱状態にあると見られる。
さらに、エポックタイムズが信頼できる情報筋から得た情報によると「習氏本人は(自身が暗殺されるという)予言を非常に信じている」という。
つまり、予言にあるクーデターや暗殺が自分の身に起きることを、習氏は心底恐れているのだ。そのため、予言のようなことが起こらないよう、習氏は「先に手を打っている」ことになる。
李尚福国防部長など、中国軍の高官を片端から粛清した理由について、表向きは「汚職疑惑」などとされている。その真相は明らかでないが、仮に「暗殺されることを恐れて(習氏が)先に動いた」と見ると、不思議なほど辻褄が合うのだ。
まさに「時は明末」と言ってもよいほど、それらは酷似している。
中共の高官の多くは、すでに自分の個人資産を海外へ移している。彼らが習近平氏を捨て、一斉に国外逃亡を始める日も、明末の「先例」からして遠くないかもしれない。
ご利用上の不明点は ヘルプセンター にお問い合わせください。