4月4日は、日本のお彼岸にあたる中国の清明節(せいめいせつ)だった。
中国各地では死者があの世で幸福を受け、裕福に暮らせるようにと、軒先や墓前などで焚かれる供物として「紙銭(しせん)」が供えられ、また紙銭を焼いて死者弔う「紙銭焚き」もあちこちで見られた。
紙銭を焼くことによって死者にお金を送る意味があるとされ、焼かれる紙幣は本物ではなくてもよいようだ。
しかし近年、中共当局は「封建迷信の撲滅」を名目に、さらに「火災防止」「環境保護」などを理由に、清明節の「紙銭」の焚焼(ふんしょう:もやすこと)を各地で禁じ、特に公共の場での焚焼行為に対して取り締まりを強化した。
しかし、古来から続くこの風習を守ろうとする民衆の思いは根強く、街頭や住宅地などでの紙焚き行為は後を絶たず、一部地域では墓地での紙銭焚きを禁じているため、墓地へ行く道中や街角、集合住宅の空地などで紙を燃やす市民が続出した。
地面に直に紙銭を置いて燃やす人、バケツや金属の桶のなかで燃やす人などまちまちだが、残念ながら灰の後始末をする人は少なかった。

こうした市民の静かなる抵抗に対し、当局側も徹底的な監視体制で応戦し、無人機による空中監視、監視カメラの強化、そして夜間の人員巡回によって、紙銭焚焼行為の取り締まりが強化されているが、民衆はそれらを巧みにかいくぐって風習を守ろうとする。
毎年、紙銭焚きを起因とする火災が起きており、当局はそのたび大々的に報じているが、紙銭焚き行為は止まらない。
紙銭焚きの炎は単なる儀式ではなく、亡き人への「思い」を乗せた炎でもあるため、伝統を消そうとする者たちに、民衆は燃え続ける「炎」で答えている――。
(2025清明節期間、街中で紙銭焚きをする市民)
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