世界で最も多く豚肉を生産し、また最も多く消費する中国。しかし、その中国では、今年もアフリカ豚熱(ASF)が感染爆発している。
中国におけるアフリカ豚熱の流行は過去に何回も起きているが、近年では、ほぼ毎年発生している。疫病による豚の減産や飼料コストの上昇も重なり、中国の豚肉価格の高騰は止まるところを知らない。
感染豚の食肉は、すでに流通している
こうした状況が常態化している背景もあって、養豚業者は「(中国の)市場には豚熱に感染した豚の食肉が多く出回っている」と警鐘を鳴らす。
このアフリカ豚熱(African swine fever;ASF)は、豚熱ウイルスに豚やイノシシなどに感染し、しかも致死率が高い伝染病。予防に有効なワクチンや治療法はなく、現段階では殺処分する以外に対応策はない。
中国の華創証券は13日、アナリストがまとめた調査報告書を発表した。それによると、豚熱ウイルスの検査を行う企業のデータから見て、春節の連休後から同病の感染が爆発的に増えているという。
感染した豚の単月の頭数が、すでに2022年の通年の総数を越える勢いになっており、中国北部での感染面積は50%前後、南部ではすでに50%を超えた可能性があるという。今年の流行の特徴として、例年より感染爆発時期が早く、ウイルスの感染力も強いとされる。
しかし、養豚場をはじめ中国の農場は、家畜や家禽の疫病が発生してもすぐには政府に報告せず、隠蔽しようとする傾向がつよい。そのため外部からは、本当の感染状況を把握することが困難になっている。
養豚業者「感染はすでに常態化」
広東省陽江市に属する県級市のひとつである陽春市の村、潭水鎮で養豚業を営む彭さん(仮名)は16日、大紀元の記者に対し「地元の養豚場では、アフリカ豚熱の感染で死ぬ豚が毎日出ている。豚熱は昨年からずっと続いていて、すでに常態化している」と明かした。
彭さんは「私は、この業界のことは熟知している」と前置きしたうえで、「豚熱に感染した豚の肉は、大量に市場に流通している。消費者の食卓にも、間違いなく上がっているだろう」と指摘した。
さらに「豚に使用する薬品はあまり良いものではない。そのような薬づけの豚肉を人間が食べれば、間接的にその薬を摂取しているようなものだ」と言う。危険を少しでも避けるために「外食ではあまり豚肉を食べないほうがいい」と、彭さんは注意を促した。
アフリカ豚熱は、1912年にケニアでの発生が最初の事例とされる。中国では2018年に初めて確認され、その後中国全土に広まったことで、これまでに延べ数百万頭の豚が殺処分された。
今回の流行では、飼養頭数が激減したことにより、中国国内での豚肉の供給量は著しく減少した。また、世界的な天候不順や1年に及ぶウクライナ危機の影響で飼料価格も上昇したため、中国における豚肉価格のさらなる高騰は必至とみられる。
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