中共紙編集長、台湾関与なら豪本土にミサイル打ち込むと威嚇 豪専門家「大使追放を」と非難

2021/05/13
更新: 2021/05/13

中国共産党機関紙・人民日報傘下のメディア「環球時報」の編集長は5月7日、中国SNS微博(ウェイボー)で、オーストラリア台湾を守るために軍隊を派遣すれば、中国はオーストラリア本土にミサイルを打ち込むべきだと主張した。豪専門家からは、こうした中国共産党の論調は「物理的な暴力の脅威」であり、駐豪中国大使の追放を検討するよう促す意見も出ている。

遠距離ミサイルで「懲罰的に」本土攻撃

米国やその同盟国に対して強弁を振るうことで知られる環球時報の胡錫進(フー・シージン)編集長は「オーストラリアが台湾情勢に手出しした場合に備えて、中国は報復的な懲罰作戦を立案するべきだ」と述べた。

胡氏はさらに、もし両軍の衝突が起きれば「中国はオーストラリア本土にある軍事施設や関連設備に対し、遠距離弾道ミサイル攻撃を行う」ことを計画案に入れるべきだと主張。さらに、情勢の緊迫化に応じて、中国はミサイルを増産できると付け加えた。

胡氏の意見がウェイボーに投稿されてからおよそ2時間半後、環球時報にはオーストラリアの動きに反発する評論が掲載された。記事は、台湾有事の際に出兵を検討するオーストラリアを痛烈に批判し、オーストラリアの「タカ派と過激派」に頭を冷やすよう「忠告」した。

環球時報の過激な意見は、オーストラリアに対して強硬姿勢を強める中国共産党政権の姿勢と連動する。中国国家発展改革委員会は5月6日、中豪戦略経済対話に基づく全ての活動を「無期限停止」すると発表した。そして、オーストラリア当局が「冷戦的思考とイデオロギー的な差別」に基づいて、両国の関係を損なう政策を打ち出したと非難した。胡錫進氏による投稿はその翌日である。

中国大使の追放を

5月9日、豪カーティン大学の国際外交史学者であるジョセフ・シラクサ氏は大紀元の取材に対し、環球時報は中国共産党のプロパガンダ機関であり、中国共産党上層部の許可がなければ、攻撃的な論調の記事は掲載しないだろうと述べた。また、同氏は、環球時報の評論はオーストラリアに対する「物理的な暴力の脅威」であり、政府の中国大使の謝罪要求や追放を視野に入れるべきだとした。    

「この見方は机上の空論ではなく現場の意見であり、上層部が承認したものだ」とシラクサ氏は指摘し、そして環球時報はあくどい編集者のいる単なる新聞社ではなく、中国共産党指導者の代弁者だと強調した。

そのうえで、シラクサ氏は、ロシア外交官を追放したチェコの事例を引き合いに出して、「オーストラリア政府は中国大使を呼び出し、(武力による威嚇をほのめかす報道について)否定させるべきだ。もし彼がそのようにしなければ、48時間以内に出て行ってもらう」と語った。

強硬姿勢のオーストラリア

豪政府やメディアでは、台湾有事やオーストラリアの関与の可能性について意見が出されている。オーストラリアン・フィナンシャル・レビュー(AFR)紙は4月16日、豪軍の情報筋の話として、台湾海峡有事の際には駆逐艦を米空母打撃群に派遣することや、日米の作戦のために空中援護を提供することなどが軍内部で議論されていると報じた。

さらに同国のクリストファー・パイン(Christopher Pyne)前国防相は4月12日、インド太平洋地域で米中が武力衝突する危機が急激に高まっているとし、台湾で戦争が勃発する可能性があると警告した。

2017年、中国共産党の政界や経済界など多岐に渡る浸透工作が露呈すると、オーストラリアは反スパイ法や外国投資規制を強化。2018年、他国に先駆けて中国通信大手・華為(ファーウェイ)を第五世代通信規格「5G」ネットワークから排除することを決定した。また、2020年には新型コロナウイルスの発生源について独立調査を求めた。

中国共産党政権はオーストラリアに対して猛反発し、石炭の輸入停止など通商面で報復措置を取った。

オーストラリアは対中強硬姿勢を弱めることなく、マリス・ペイン(Marise Payne)外相は4月、ビクトリア州政府と中国が締結した一帯一路に関連する契約2件を撤回することを明らかにした。シドニー・モーニング・ヘラルドによれば、5月、政府は国内大学にある孔子学院の契約を審査すると発表した。

参考:対立深まる豪中関係 一戦交える可能性も=豪少将

(王文亮)