民主と自由を唱える温首相のCNN独占インタビュー 発言の真意は?

2010/10/16
更新: 2010/10/16

【大紀元日本10月16日】「(国内の)新聞が報道を拒絶すればするほど、この問題を真剣に話し合う必要性が高まるね」。10月3日に米国で放映された、中国の温家宝首相に対する米CNNの独占インタビューは、中国の政治改革を切に願うような論調で、検閲の隙間から発言を垣間見たネチズンたちの注目を浴びた。しかし、温首相の真意を疑い警戒するアナリストの声も出ている。

言論の自由を唱える発言 中国では検閲

冒頭のコメントは、 SinaWeibo(新浪微博)(「Sina.com(新浪)」の簡易ブログサービス)上に送信されたもので、10月7日付の米ウォール・ストリート・ジャーナルが引用している。 話題のCNN報道は、米タイムズの編集者ザカリア氏によるもので、 国連会議出席のためニューヨークを訪れていた温首相のテレビ出演となった。ザカリア氏による温首相へのインタービューは、2008年に続いて2度目のことだ。

インタビューは、天安門事件、言論の自由、ネット検閲、人権、米国の経済危機、中国の政治改革など、幅広い話題に及ぶ。

インタビューの中で温首相は、1989年の天安門事件の背後の原動力ともなった胡耀邦・元総書記を再評価した。ネット検閲に関しては「国民の民主と自由への願望と要求は阻止できるものではない」と回答。「政治改革」に関しては、断固として取り組む姿勢を強い口調で語るなど、従来の中国政権下での政治家とは違い率直な印象を与え、欧米人の視聴者に対して説得力のあるインタビュー内容となった。

しかし「民主」といっても、多党政治ではなく一党政権下の話に過ぎず、「政治改革」「普遍的価値」という言葉も、欧米社会で使われる語義とは異なる、というコロンビア大学のアンドリュー・ネイザン(Andrew Nathan)教授の警告を、10月4日付の英紙ガーディアンが紹介している。

一方、中国国内では首相の国外でのインタビュー内容まで「調和」(中国語で「検閲」の隠語)されてしまった。ウォール・ストリート・ジャーナル10月7日付によると、人民日報は温首相の言葉を全く報道せず、2008年と2010年のザカリア氏の質問の違いを比較することで終始したという。

検閲の裏 対立か融和か

温首相は公共の発言で、8月以来40日間で6回も「政治改革」に触れている。しかし、 胡錦涛総書記を始め、全く温首相の発言を支持する動きはなかった。

言論の自由を唱える首相の声まで検閲し、削除してしまう中国共産党政権下のメディア。この検閲の裏にあるのは、温首相と胡錦涛総書記の対立なのだろうか。それとも、欧米向けのリップサービスは国内報道では不向きであるから、当然のこととして検閲されたのだろうか。つまり、温首相は外交、胡総書記は国内統制という役割分担がなされているだけで、効率よく国家を運営しているということなのだろうか。

北京在住の政治アナリスト、ラッセル・レイ・モーゼス(Russell Leigh Moses)

氏は、温首相と胡錦涛総書記が意見が違うからといって、 両者が対立していると帰結することは短絡的としている。

移民、地方の問題、収入格差の是正に関して、温・胡の間に隙間はない。意見が違うのは、政策の違いであって、プラットホームが異なるわけではない。温首相は、2012年の人事交替に向けて、議題の枠を広げ、こもった部屋に空気を入れているだけだと同氏は語る。

また、活動家であり学者でもあるChen Yongmiao氏は、任期あと2年で、実際の牽引力もない温首相が「政治改革」を唱えても、「絵に描いた餅」のような話だと指摘する。温首相には、既得の利権を握る少数の権力者の態度を変える許容はなさそうだ。

(編集・鶴田)
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