米AIを利用した中国企業 中共軍の機密情報まで米側に流出

2026/09/14
更新: 2026/09/14

中国共産党(中共)が米国のAI技術を盗用しようとした結果、自らの機密情報を米国側に流出させていたことが明らかになった。最新の報告書によると、中共軍関係者は中国のAI企業のサービスを利用しているつもりだったが、実際には処理を米国のAI企業に回していた。専門家は、今回の情報流出が中共のAI政策や政治的な制約の問題点を浮き彫りにしたと指摘している。

Anthropicは9月10日、154ページに及ぶ脅威インテリジェンス報告書を公表した。報告書によると、中国のAI企業、月之暗面(Moonshot AI)は、ユーザーに同社のAIモデル「Kimi」を使っていると思わせながら、実際にはユーザーからのリクエストを密かにAnthropicのAI「Claude」に転送し、Claudeが生成した回答を自社の回答としてユーザーに表示していた。

Anthropicによると、Moonshot AIはわずか10日間で、5380の偽アカウントからなる中継ネットワークを通じ、約30万件のリクエストをAnthropic側に送っていた。

ある中共軍関係者は、特定人物を監視するため、防犯カメラ映像のデータベースから監視データを読み込み、追跡対象者に異常な行動がないか分析するようKimiに求めていた。

関連データには、成都市にある数百台の監視カメラの映像が含まれ、中共軍の施設や中国電子科技集団傘下の研究機関に設置されたカメラの映像も含まれていた。

台湾国防安全研究院戦略資源研究所の蘇紫雲所長は、中共がAIを重視する方向性そのものは間違っていないものの、AIを唯一の解決策とみなす一方で、AIに多くの政治的制約を課していることが弱点だと指摘した。

蘇紫雲氏は、「急いては事を仕損じるということだ。AIをひたすら追求した結果、AI産業全体でこうした偽装が生まれている。もはや人工知能ではなく、人工欺瞞だ。偽アカウントを通じて米国のAI企業に接続し、米国企業の回答を自社の回答として装っている」と語った。

蘇氏は、こうした状況について、半導体産業や自動車産業と同様、中共が大躍進期の全民製鉄運動のような手法を繰り返していると指摘した。また、こうしたすり替えの手法が明るみに出たことで、中国自身の国家としての信用も損なったと述べた。

Anthropicの報告書はこのほか、中共による通常兵器の研究開発にClaudeを利用した複数の事例も明らかにしている。

軍事研究機関と関係するユーザーは、Claudeを使って電子戦や敵防空網制圧のためのソフトウェア一式を開発していた。このシステムは、目標の優先順位付けやレーダー妨害のシミュレーションが可能だという。同ユーザーは台湾の12の目標をシステムに組み込んでおり、早期警戒レーダーやパトリオット、天弓ミサイルの配備拠点などが含まれていた。

報告書はさらに、中国のユーザーがClaudeを使い、海軍向け対魚雷システムの仕様策定や火器管制ソフトウェアの開発を進めたほか、外国の高出力マイクロ波兵器について調査していた事例も紹介している。

専門家は、中共関係者がAIツールを利用する際の危険性を十分に認識しておらず、技術上の弱点を露呈しただけでなく、自らの機密情報を米国のサーバーに送る結果になったと指摘している。

Anthropicは中共から送られた資料を当局と共有しており、専門家は、こうした情報だけでも米国や台湾にとって十分な情報価値があるとみている。

蘇紫雲氏は「今回流出した情報には、台湾への攻撃に関連する計画も含まれている。彼らは、それらがすべて米国のAI企業に送られるとは考えていなかった。結果として、中共軍の機密情報を自ら外部に漏らしたことになる」と述べた。

蘇氏は、中共指導部がAIやロボットを過度に重視し、宣伝を続ければ、中国経済の構造が悪循環に陥り、最終的には大躍進期のような非効率な状況に陥りかねないと指摘した。

Anthropicは、DeepSeekも同様の方法を使っていたと指摘している。転送された機密性の高い情報には、中国のテクノロジー企業のAI開発計画や、公安当局の監視システムに関する内容も含まれていた。例えば、中国のある市公安局のIT技術者は、市民の身分証番号を使い、個人の移動履歴と警察記録を照合するツールを開発しようとしていた。

この技術者は事件管理システムの構築にDeepSeekを使っていたが、DeepSeekはそのリクエストをClaudeに転送していた。

台湾国防安全研究院の謝沛学副研究員は、今回の事例について、中国AIの弱点を露呈するとともに、中共が掲げてきた「自立自強」やAIの自主独立という主張にも打撃を与えたと指摘した。

謝氏は「中国の研究者は、複雑で難易度の高い課題を処理する際、依然として米国の先進的なAIモデルに頼らざるを得ない。モデルの蒸留であれ、第三者サービスを介した転送であれ、こうした行為そのものが、自国のモデルが西側の先進モデルに及ばないことを認めているようなものだ」と見ている。

同氏は、これまで中共がさまざまな手段で外国のユーザーデータを収集してきたとの認識が広がっていた一方、今回は逆に、中国の高度な研究に携わる人々が、自ら最も機密性の高い情報を繰り返し米国のクラウドサーバーに送っていたと語った。

Anthropicが把握した、中共軍が台湾を想定して設定した電子戦の標的リストなどは、米国と台湾が中共軍の行動意図を把握する材料になったという。