「首都を守る壁」の向こう側にいるのは、外国の軍隊ではない。北京へ向かう、ごく普通の中国の人々だ。
中国の首都・北京を取り囲む河北省との境界で、刃付き有刺鉄線のフェンスや監視カメラなどを設置し、相次いで道路封鎖している。
これまで自由に行き来できた村の道は閉ざされ、北京へ入る人や車への検問も一段と厳しくなった。その光景に、ネット上では「北京は巨大な監獄になった」「政府は国民を最大の敵と見ている」といった声が広がっている。
SNSで拡散された映像には、河北省香河県と北京市通州区の境界に、高いフェンスと刃付き有刺鉄線が延々と続く様子が映っていた。周辺には監視カメラが並び、一部の道路は鉄門やコンクリートブロック、車両で封鎖されている。
現地住民によると、以前はコロナ対策で設置した仮設フェンスだった、最近になって恒久的な設備へと造り替えられたという。バイクで北京へ入る人は身分証や運転免許証、車両書類の提示が求められ、生活道路だった場所が事実上の「検問所」になっている。
本紙の取材に応じた河北省に住む女性は、「通勤や買い物、親戚を訪ねることも不便になった。政府は住民の暮らしを良くすることより、住民を監視し、行動を制限することばかりに力を入れている。本当に情けない」と話す。特に北京へ陳情に向かう人たちにとっては、首都へ近づくこと自体が以前より難しくなったという。
中国では毎年、全国人民代表大会(全人代)や国慶節(建国記念日)など、政権にとって重要な行事や記念日が近づくと、陳情に訪れる人や人権活動家への監視、移動の制限を強化する。今年も建軍記念日(8月1日)を前に、北京周辺の警戒態勢が一段と厳しくなっているとみられる。
この状況について、北京在住の民主活動家は本紙の取材に対し、こう語る。「以前から天安門広場は厳重な警備のため『監獄のようだ』と言われてきたが、今では北京の街全体が監獄になりつつある。ここまで厳重な警備は、当局が普通の市民まで『潜在的な脅威』と見なしている証拠だ」
外国の侵入を防ぐためではなく、自国民が首都へ集まることを警戒して壁を築く。北京を囲む有刺鉄線は、中国共産党が最も恐れている相手が誰なのかを、静かに物語っている。
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