米中対立が激しさを増す一方、中国共産党(中共)は依然として、アメリカやその同盟国からの先端技術製品に大きく依存している。さらに、輸出主導型の経済成長を維持するうえでも、アメリカや同盟国の市場を必要としている。このため、アメリカは米中間の経済競争で、今なお重要な構造的優位を握っている。アメリカが同盟国と協力すれば、中共に対して圧倒的な優位に立てるとの分析が示された。
一部では、レアアースをめぐる攻防や半導体の輸出規制を巡り、中共が優位に立ち、アメリカの立場が弱まっているとの見方もある。
しかし、著書『通商の支配 対中競争で続くアメリカの経済的優位』の共著者で、スタンフォード大学ナイト・ヘネシー奨学生のベン・A・ヴェイグル氏と、ダートマス大学政治学教授のスティーブン・G・ブルックス氏は、米外交専門誌「フォーリン・アフェアーズ」への寄稿で、アメリカは中共よりもはるかに大きな潜在的経済力を持っていると指摘した。
両氏によると、2025年初めのレアアースをめぐる対立後、アメリカが中共に対して一時的に抑制的な姿勢を取ったのは、アメリカそのものに根本的な弱点があるためではない。中共が持つ限られた対抗手段が、一時的にアメリカの弱点を突いた一方、アメリカ側はまだ本来の経済力を十分に活用していないためだという。
記事は、アメリカがこうした影響力を発揮するには、アジアやヨーロッパの同盟国と歩調を合わせる必要があると指摘した。ヨーロッパやアジアの同盟国も、中共による経済的威圧や不公正な貿易慣行への警戒を強めている。各国が連携すれば、中共の行動を効果的に抑えられるとしている。
そのためアメリカは、同盟国を遠ざけるのではなく、経済政策で協調し、中共による経済的威圧に共同で対抗すべきだと論じた。
中共が握る三つの対米圧力手段
記事は、中共がアメリカに対して一時的に強力な経済的手段を持っていることは事実だと認めている。一方、その主な手段はレアアース、大豆、銅スクラップの三つに限られると指摘した。
中でもレアアースは、中国が世界の鉱石生産量の約70%、加工能力の約90%を占めている。アメリカもレアアース供給を中国に依存しており、昨年と今年の米中貿易対立では、中共が輸出制限を繰り返し、アメリカに圧力をかけた。
次に大豆がある。大豆はアメリカの主要な農産物輸出品で、2024年にはアメリカ産大豆の輸出量の半分以上が中国向けだった。中共は2025年6月から8月にかけて、アメリカ産大豆の輸入を突然停止した。
中共はブラジルなどから大豆を調達できるため、大豆輸入を対米交渉の手段としてたびたび利用してきた。
しかし記事は、レアアースと大豆は、米中間の幅広い経済的相互依存の中では例外的な分野にすぎないと指摘する。
特にレアアースは、中共が握る典型的な供給上の要所であり、短期的には有効であるものの、武器として使えば使うほど効果は低下するという。
中共の優位は、他国が代替できない独自技術によるものではない。投資とサプライチェーンの整備を進めれば、対中国依存度を下げることは可能だとしている。
レアアース依存の解消には時間
記事によると、中共が2025年4月にレアアースの輸出を制限し、アメリカに圧力をかける以前から、米政府は中共がレアアースを交渉材料として使う可能性を認識していた。
しかし、アメリカは長年にわたり、依存度を下げるための十分な資金や資源を投入してこなかったという。
トランプ2期目政権の発足後、アメリカは中共による供給制限への依存を減らすため、国内外でレアアース分野への投資を進め、代替供給元の育成に乗り出した。
昨年、米国防総省は鉱山会社MPマテリアルズに4億ドルを投資し、その後も追加支援を行った。
同年末には、トランプ政権がレアアース関連企業のバルカン・エレメンツとリエレメント・テクノロジーズに対し、総額14億ドルの融資を提供すると発表した。さらに今年初めには、USAレアアースに16億ドルを投資する方針を示した。
著者らは、中国への依存を減らし、新たなレアアース供給網を構築するには、資金や政治的な取り組みだけでなく、時間も必要だと指摘する。
中共は30年以上にわたり、深刻な環境破壊と巨額の政府補助金を伴う政策を進め、レアアース加工分野で独占的な地位を築いてきた(レアアース1トンを加工する過程で、約2千トンの有毒廃棄物が生じる)。
一方、先進民主主義国では、環境を犠牲にして産業を育成することは難しい。また、中共のように国家主導で巨額の補助金を投入することも容易ではない。
アメリカでは規制制度が複雑で、新たな鉱山や加工施設の許認可に長い時間がかかる。訴訟に発展する恐れもあり、事業資金の調達に影響を及ぼす可能性がある。
記事は、中共がリチウムイオン電池や医薬品原料などの重要産業で支配的な地位を占めているものの、これらを経済的な武器として使えば、相手国だけでなく中国自身も大きな損失を被ると指摘した。
例えば、中共がアメリカへの電池輸出を停止すれば、輸出収入を失うだけでなく、日本や韓国などの競合国に市場シェアを譲ることになる。
医薬品原料についても、アメリカは医薬品有効成分を備蓄することで、中共に供給を止められるリスクを軽減できるという。
有効成分は完成した医薬品に比べて保管費用が低く、長期間品質を維持しやすいうえ、必要に応じて別の用途にも転用しやすいとしている。
先端技術で優位に立つ米国陣営
記事は、中共の優位性ばかりが強調される背景には、中共自身が抱える弱点が見落とされていることがあると指摘する。
アメリカは、半導体設計、民間航空機の製造、大規模発電設備に使われる大型ガスタービン、最先端の科学研究に用いられる電子顕微鏡や各種装置など、幅広い先端技術分野で中国を大きく上回っているという。
記事が示したデータによると、昨年、世界の先端技術産業の利益の58%をアメリカ企業が占めた。
NATO加盟国と、アメリカの東アジアの同盟国・パートナー国の企業は、合わせて26%を占めた。
これに対し、香港を含む中国企業の割合は8%にとどまった。
先端技術製品の販売力でも、アメリカと同盟国は中国を大きく上回っている。
中国は、アメリカ製の半導体設計ソフトや、アメリカの同盟国・パートナー国が供給する製造装置に依存しており、最先端半導体を独力で設計・量産することはなお難しい。
中国が独自開発した代替品は、アメリカ製品に比べて大幅に遅れているか、効率的な大量生産が困難だと指摘した。
また、アメリカの同盟国は、中国が輸入する中間財の主要な供給元でもある。
中共は過去10年以上にわたり、自給自足を目指す政策を進めてきたが、中国の製造業は現在も、他の製品を生産するために必要な中間財を大量に輸入している。
例えば、半導体製造に使われるフォトレジストなどのリソグラフィー用化学品は、中国国内での生産にコストや技術面の課題があり、輸入への依存が続いている。
こうした材料は製造工程に欠かせず、供給が途絶えれば、関連する製造工程や産業に深刻な影響が及ぶ可能性がある。
中国は毎年、世界から約2兆ドル相当の中間財を輸入している。そのうちアメリカからの輸入額は1280億ドルにすぎない。
このため、中間財を経済的な交渉手段として活用するには、アメリカ単独ではなく、アジアやヨーロッパの同盟国との連携が不可欠だと記事は指摘した。
輸出依存が中共経済の弱点
記事によると、中共の成長モデルは輸出への依存度が高く、財政基盤も外需の影響を受けやすい。
中国は毎年、アメリカとその同盟国に総額1兆9千億ドル相当の商品を輸出している。
近年、中国経済が低迷し、国内消費が弱く、新規投資によって得られる利益も低下する中、中共は海外市場への依存を一段と強めている。
アメリカが同盟国と協力して中国製品の輸入を減らせば、中国経済が受ける打撃は、アメリカが単独で同様の措置を取った場合よりもはるかに大きくなる。また、アメリカ側が受ける損失と比べても、中共の損害は大きくなるという。
記事は、2025年の米中経済力のバランスを想定したシミュレーション結果を紹介した。
アメリカが単独で中国とのすべての貿易を停止した場合、中共の損失はアメリカ側より約3分の1大きいにとどまり、中国経済に決定的な影響を与えるには至らない。
しかし、アメリカと同盟国が共同で中国との貿易を停止した場合、中国経済に生じる損害は、アメリカ経済が受ける損害の5倍から11倍に達するとしている。
対中政策の鍵を握る同盟国連携
過去10年以上にわたり、アメリカは同盟国に対し、中共による不公正な経済慣行に共同で対抗するよう働きかけてきた。
中共は巨額の政府補助金を投入し、人民元相場を輸出に有利な水準へ誘導することで、中国国内の過剰生産能力を拡大させてきたと記事は指摘する。
その結果、東アジアやヨーロッパの製造業が圧迫され、共同で対応する必要性を認識する国が増えている。
記事は、トランプ政権が同盟国への関税措置を控え、対中政策に重点を置くべきだと主張した。同盟国との関係を悪化させれば、アメリカは単独で中共に対抗しなければならなくなるためだ。
一方、現状でもアメリカは同盟国と協力し、巨額の補助金や輸出優遇策を通じて自国産業を支える中共の経済政策を抑える取り組みを進めているという。
記事はその例として、アメリカが主導して発足させた国際枠組み「Pax Silica」を挙げた。
この枠組みは、AIを支える供給網の安全を確保し、レアアース、データインフラ、先端製造業などで中共の影響力を弱めることを目的としている。
著者らは、Pax Silicaは始まりにすぎないと指摘した。
アメリカと同盟国は、同様の枠組みを医薬品、電池、ドローンなどの重要分野にも広げ、中共による経済的威圧を弱めることができるという。
そうすることで、中共にサプライチェーンの要所を握られるリスクを避けるだけでなく、巨額の補助金や輸出優遇策を通じて自国産業を支える中共の経済政策を共同で抑制し、危機発生時に対中制裁を調整する能力も構築できると結論づけた。
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