国交省が白書を公表 交通網維持へ自動化とDXを加速 人手不足に危機感国交省白書

2026/07/17
更新: 2026/07/17

国土交通省は2026年7月、「令和8年版交通政策白書」を公表した。白書が示したのは、人口減少と担い手不足によって、国民生活や経済活動を支える交通網が全国規模で揺らいでいる現状だ。国は、自動運転やデジタルトランスフォーメーション(DX)の導入と、地域にある既存の輸送資源の活用を両輪に、交通網の維持を図る方針だ。

とりわけ深刻なのが、全国で移動手段が失われる「交通空白」が発生していることである。バス路線の廃止が相次ぐ一方、高齢者の運転免許返納や学校、病院の統廃合によって、住民の移動需要はむしろ高まっている。

交通手段の不足は、単なる不便にとどまらない。家族による送迎の負担が増えれば、就業機会が失われる可能性がある。外出が減れば消費が低迷し、高齢者の健康悪化を通じて医療や介護の負担が増える恐れもある。白書は、交通空白を地域の衰退を加速させる「見えない壁」と位置付け、解消を成長戦略上の重要課題としている。

政府は「5本の矢」と呼ぶ施策を進める。2026年6月に成立した改正地域交通法を活用し、岐阜県白川町のようにスクールバスをデマンドバスとして利用するなど、地域の輸送資源を最大限生かす。計画策定から実装まで切れ目なく財政支援を行うほか、官民連携プラットフォームを通じた事業者のマッチングや地域交通DXも推進する。

人手不足が深刻なバス、タクシー、トラックでは、自動運転の実用化を急ぐ。交通死亡事故の9割以上で運転手の法令違反が認められることから、安全性向上の面でも期待が高い。政府は2030年度における自動運転サービス車両(バス、タクシー、トラック)を1万台とする数値目標を設定した。

神奈川県平塚市では都市部の定時定路線運行、石川県小松市では一般車両が走る道路で駅と空港を結ぶ運行、横浜市ではオンデマンド型移動サービスの実証が進む。交差点のセンサーで対向車を検知する「路車協調システム」など、走行を支えるインフラ整備も進める。

物流分野では、2024年に懸念された輸送力不足はおおむね克服されたものの、将来の担い手不足を見据え、2030年度までを「集中改革期間」とした。道路空間を利用して荷物を運ぶ「自動物流道路」の実証に加え、トラック・物流Gメンが悪質な荷主への監視と是正指導を行う。中継輸送施設や大型車向け駐車スペースも整備し、限られた人員で物流網を維持する構えである。

航空分野では、2030年の訪日外国人旅行者数6千万人という目標を見据え、成田空港のB滑走路延伸とC滑走路新設、羽田空港のアクセス線工事などを進める。空港業務の人手不足に対応するため、自動運転トーイングトラクターや自動ボーディングブリッジの導入も拡大する。

日本の貿易量の99%を担う海上輸送では、造船業の再生を図る。政府は2035年に1800万総トンの船舶建造能力を確保する方針で、設備導入やAI造船ロボットの研究開発、ゼロエミッション船の導入を支援する。港湾では遠隔操作式の荷役機械を導入し、国際基幹航路の日本寄港の維持・拡大を目指す。

白書が描くのは、人手不足を前提としながらも、自動化とDX、既存資源の再編によって交通網を支える姿である。地域の日常交通から物流、空港、海運まで、交通政策は今後、限られた人員で機能を維持できる仕組みへの転換が問われることになる。

エポックタイムズの記者。東京を拠点に活動。政治、経済、社会を担当。他メディアが報道しない重要な情報を伝えます