天安門虐殺から37年が過ぎた。
民主化を求める学生や市民に対し、中国共産党政権が示した答えは「対話」ではなく「銃弾」だった。
民主化への希望は木っ端みじんに打ち砕かれ、学生リーダーたちは投獄されるか海外へ逃れることを余儀なくされた。
中国共産党(中共)は37年間にわたり事件の真相を隠し続けてきた。民主化を求めた学生たちの平和的な訴えは「反革命暴動」と決めつけられ、軍が市民に向けて発砲した事実も否定されてきた。追悼はいまも許されず、事件そのものが禁句となっている。

しかし、中国社会から不満や自由を求める声が消えたわけではなかった。
2022年には厳しいゼロコロナ政策への不満を背景に、若者たちが白紙を掲げて抗議した。この「白紙革命」は全国へ広がり、最終的にはゼロコロナ政策の終結につながった。
多くの専門家は、人々の抗議が中共政権の政策変更につながった数少ない事例の一つとして、この運動を重要な転機と位置付けている。

だが、中国社会の表面だけを見れば、そのような空気は感じられない。
テレビから流れるのは、豊かで安定した中国、そして今日の繁栄はすべて中共のおかげだと繰り返し訴える番組ばかりだ。
一見すると社会は平穏で、人々は豊かになり、天安門事件など遠い過去の出来事になったかのようにも見える。
しかし、その静けさの下で、中国人の民主化への思いは本当に消えたのだろうか。
天安門事件後に13年間服役した民主活動家の王軍濤氏の答えは明確だ。
「消えていない」
消えなかった火種
王氏は、現在の中国社会について次のように分析する。
当時広場にいた学生たちはその後、政府機関や企業、学界など社会の各分野へ散っていった。しかし、民主化への思いまで消えたわけではなかった。天安門事件の火種は今も彼らの心の中に残っているという。
近年、習近平による統制強化や民間企業への締め付けが進み、中国社会では不安が広がっている。幹部の粛清や企業家・富豪の失脚が相次ぐ中、多くの知識人や社会のエリート層が改めて中国の将来を考え始めている。
「民主も法治もない社会では、何十年かけて築いた成果が一夜で失われることもある。以前より悪い状況に陥ることさえある」。こうした危機感の広がりが、社会変化を求める力になりつつあるという。
また、中国国民は決して黙ってきたわけではない。労働問題や強制立ち退き、土地の強制収用をめぐる抗議は長年にわたって各地で続いてきた。現在の若者たちは、出世競争から距離を置き、最低限の生活で生きる「寝そべり」を選び、極端な場合には社会への無差別的な報復に走る者もいる。
こうした現象もまた、社会への不満の表れだという。
さらに、民主化を求める運動は一度弾圧されても終わらない。変化を起こせなかった場合でも、その思いは一世代、二世代とかけて受け継がれ、再び社会を動かす力になるという。
そのうえで王氏は、特に2022年末の「白紙革命」以降、中国では政治的な大きな転機が訪れている。中国の民主化に向けた新たな波が、いままさに到来しつつあると指摘する。

受け継がれる思い
テレビには映らず、教科書にも載らない。それでも王軍濤氏は、「37年前に灯った火は消えていない」と語る。
中国社会の表面は静かに見える。しかし、その底流では今も変化を求める思いがくすぶり続けている。
多くの中国問題の専門家が口をそろえて語るのは、大きな変化はいつも小さなきっかけから始まるということだ。
一つの火種が野原を焼き尽くす大火へと広がるように、歴史は時に誰も予想しない形で動き出す。
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