米軍が水面下支援 ホルムズ海峡で商船40隻通過 イラン緊張下の新戦術

2026/06/05
更新: 2026/06/05

海運データによると、ペルシャ湾情勢が依然として緊迫する中でも、米海軍による水面下での調整のもと、過去3週間で数十隻の商船がホルムズ海峡を通過した。

海外メディアは、米軍が従来の公開護衛方式を見直し、通信や遠隔監視を通じて商船が脅威を回避できるよう支援する形へ転換した可能性を指摘している。

ロイズ・リスト・インテリジェンス(Lloyd’s List Intelligence)のデータによれば、過去3週間で、これまでペルシャ湾に足止めされていた約40隻の船舶がホルムズ海峡を通過した。これらの船舶は、水面下で米海軍と調整を行っている。

ロイズ・リストの編集長リチャード・ミード(Richard Meade)氏は4日のブリーフィングで、一部の船主がバーレーンに所在する「海運協力指導機関」(Naval Cooperation and Guidance for Shipping, NCAGS)に通航計画を提出していると明らかにした。

ミード氏は、外部には米軍が商船への脅威を阻止しているとの見方があるとしつつも、「航行判断は完全に船舶運航者に委ねられている。業界関係者によれば、これらの動きは中央で一元的に調整されているわけではない」と強調した。

6月1日、米中央軍の広報部長である海軍大佐ティム・ホーキンス(Tim Hawkins)氏は声明で、「米軍は護衛を行っていないが、ホルムズ海峡を自由かつ安全に通過しようとする商船と継続的に連絡・調整を行っている。これは地域および世界経済にとって極めて重要な国際回廊である」と述べた。

米海軍の技術支援と隠密航行

こうした取り組みは、米側の戦術の転換を示す動きである。5月初旬にトランプ大統領が打ち出した「プロジェクト・フリーダム(Project Freedom)」と呼ばれる従来方針とは異なる。

トランプ氏は同計画をソーシャルメディアで公表し、ホワイトハウスの公式ブリーフィングでも詳細を説明したが、この方針がイランによる攻撃を招き、米・イラン間の脆弱な停戦を崩壊させるリスクを高めたとみられている。

その後、トランプ氏は地域の同盟国から譲歩を迫られたことを受け、この構想を撤回したと述べている。

現在、米側が進めている新たな取り組みには正式な名称はなく、政府もほとんど公に説明していない。しかし、複数の兆候から、米側が詳細な説明を避けつつ海運業者と協力している実態がうかがえる。

CNBCおよびブルームバーグの報道によれば、この「目立たない」支援には、従来とは異なる航行戦略についての助言も含まれる。

関係者および海運データによると、一部の貨物船はAIS(自動識別装置)を停止し、オマーン沿岸に沿って航行することで、イランが設置した機雷を回避している。

ハドソン研究所の上級研究員ブライアン・クラーク(Bryan Clark)氏はブルームバーグに対し、「商船がイラン対岸の海岸線に沿って航行し、AISを停止した場合、イラン部隊はレーダーや監視拠点を用いて動向を探知し、無人機やミサイル攻撃を指示する必要がある」と述べた。

さらに、「米海軍はこうした動きを探知し、イランに対して反撃を行うことが可能である」と指摘した。

シンクタンク「海洋戦略センター」(Center for Maritime Strategy)の海軍専門家スティーブ・ウィルズ(Steve Wills)氏は、米軍がイージス(AEGIS)システムを搭載した艦艇やE-2D早期警戒機を活用し、海域全体をカバーする監視網を構築できると分析する。

ウィルズ氏は、これにより米軍は「距離を保ちながらも直接的な防護」を提供できると説明した。

無人機攻撃と自衛措置

米軍が商船の防護にあたっていることを示す動きは、2日の夜に明らかとなった。当時、米・イラン間の緊張は高まっていた。

米中央軍は声明で、商船を標的としていたイランの攻撃用無人機を撃墜し、その後、ケシュム島(Qeshm Island)にある地上管制施設に対して自衛目的の攻撃を実施したと発表した。

3日、ルビオ米務長官は下院外交委員会の公聴会でこの対応を説明した。

ルビオ氏は、イランの無人機は精度が低く、商船のいずれの部分にも命中する可能性があり、結果として環境災害を引き起こす恐れがあると指摘した。

その上で、「彼らが船舶に発砲しない限り、我々も発砲しない。しかし、攻撃があれば対応せざるを得ない」と強調した。

これに対する報復として、イランはクウェートおよびバーレーンに向けて弾道ミサイルを発射した。クウェート外務省は、クウェート国際空港が3日に攻撃を受け、1人が死亡、複数人が負傷したことを確認している。

一部の船舶は封鎖を突破したものの、ホルムズ海峡の航行量は依然として緊張激化前の水準を大きく下回っている。現在、船主は二重の圧力に直面している。イランが指定する航路を通れば米国の制裁リスクにさらされ、従わなければ攻撃を受ける可能性があるためである。

米国のヘグセス戦争部長官も先週末、この取り組みに言及した。海峡内における米軍の公然・非公然双方の行動により、最終的には海運は正常化に向かうとの見方を示した。

陳霆