米司法省は5月11日、カリフォルニア州アーケイディア市の中国系市長・王愛琳(アイリーン・ワン、58)が連邦裁判所から中国共産党(中共)政府の非合法代理人として起訴され、罪状認否での有罪答弁と公職辞任に同意したと発表した。
米国法上、外国政府の非合法代理人として活動した場合、最高10年の禁錮刑が科される。
当日、王愛琳はロサンゼルス市中心部の連邦地裁に出廷し、たびたびティッシュで涙をぬぐった。その後、2万5千ドルの保釈金を納めて釈放され、パスポートおよびその他の渡航証明書を没収された。裁判官は、中共駐米大使館関係者を含む中共当局者との一切の接触を禁じた。
現在、連邦捜査局(FBI)が本件の詳細な捜査を進めている。
一)米国の女性市長
アーケイディア市はカリフォルニア州南部ロサンゼルス郡に位置し、ロサンゼルスの北東約21キロにある人口約6万人の都市で、住民の約半数がアジア系だ。
同市は「中国人のビバリーヒルズ」とも呼ばれ、全米トップクラスの公立学区を擁する。高級車が行き交い、高級中国料理店や中国系スーパーが立ち並ぶ閑静な環境が特徴だ。近年は、中共権力層の関係者が数千万ドル規模の豪邸を購入するケースが相次ぎ、中共高官らが米国に居を構える際の有力な選択地となっている。
2022年11月8日、王愛琳は同市第3区議員選挙で約1200票を獲得して当選した。同市の市長職は市議会5人の議員が輪番で担う仕組みであり、2026年2月3日に王愛琳が市長に就任した。
2022年の米中間選挙期間中、中共工作員の孫耀寧(ヤオニン・マイク・サン)は王愛琳に接近・交際し、同居男性かつ選挙参謀を務めた。孫は中共が提供する資金支援を含む各種便宜を最大限に活用してチームを編成・指揮し、中国系コミュニティで票を集めて王の市議当選を実現させた。その後、中共に対して王愛琳は「政治的新星」だと報告。中共から高い評価を受けた。
しかし王愛琳は市長就任からわずか1か月余りで事件が発覚し、アーケイディア市史上最短在任市長となった。
3月30日、王愛琳は法廷の有罪答弁書に署名することに同意した。アーケイディア市当局は直ちに声明を発表し、王愛琳が市議員および市長の職を辞したと発表した。
二)中共のエージェント
連邦検察のビル・エサイリ首席次席検察官は、王愛琳が少なくとも2020年から2022年の間、外国代理人として活動したことを認めたと述べた。中共の指示のもと、他者と連携して米国内で親中共のプロパガンダ活動を展開し、中共の利益を推進したとされる。
有罪答弁の内容によると、2020年末から2022年にかけて、王愛琳と孫耀寧は中共当局者の指揮・統制下で行動し、米国内の関係者と協力しながら親中共メッセージの流布などを通じて中共の利益促進に協力した。
王愛琳と孫耀寧は、地元中国系コミュニティへの奉仕を標榜するウェブサイト「U.S. News Center(アメリカ・ニュース・センター)」を共同運営していた。2人は中共当局者の指示に従って親中共コンテンツをサイトに掲載し、一部の記事は中共当局者の承認を得た上で公開していた。
司法省によると、2021年6月、ある中共当局者がWeChat(ウィーチャット)経由で王愛琳らに連絡し、あらかじめ用意されたプレスリリースを送付した。その中には、当該中共当局者自身が執筆して『ロサンゼルス・タイムズ』に掲載された記事が含まれており、内容は「新疆問題に関する中国の立場、つまり新疆に民族虐殺は存在しない。綿花産業を含む産業に強制労働の実態はない。こうした風説の流布は中国を誹謗し、新疆の安全・安定を損ない、地域経済を弱体化させ、中国の発展を阻もうとするものだ」というものだった。
数分後、王愛琳はこの記事を「U.S. News Center」に転載し、該当中共当局者に掲載URLを報告した。チャットグループの他のメンバーも同様の対応をとった。中共当局者はWeChat経由で即座に「动作真快,谢谢大家(動きが速い、皆さんありがとう)」と称賛した。
2021年8月、王愛琳は同グループの他の3人のメンバーとともに、それぞれの「ニュース」サイトに同一記事のリンクを掲載した。中共当局者の求めに応じ、王愛琳は記事を修正した上でURLを当局者に送付し、その後、同記事の閲覧回数が1万5128回に達したことを示すスクリーンショットも提供した。中共当局者は「よし!」と返信し、王愛琳は「很好!”王则回应:“谢谢领导(ありがとうございます、指導者)」と応じた。
X(旧Twitter)上でメディア関係者のVivian Wu氏はこう述べた。「この『ありがとうございます、指導者』という一言は、あまりにも異常だ。米国の地方公選職が、自分の有権者ではなく外国の当局者に成果を報告している。吐き気がする」
長年アーケイディア市に住み、王愛琳を知る市民の一人はこう語った。
「王愛琳は無実ではない。積極的に、しかも目立つ形でそういった活動をしていた。グループ中にばら撒いていた」「中共の党校の修了証を皆に見せびらかし、自分が2週間の党校に通ったことを自慢していたこともある」
王愛琳のX(旧Twitter)アカウントによると、2021年は「U.S. News Center」の記者、2022年には同サイトの社長、および米国南カリフォルニア中国人商工会議所会長を名乗っていた。
三)女性市長の周辺人物
有罪答弁の内容と日常的な交際範囲から見ると、王愛琳の背後には複雑な関係網が存在する。主要人物として、同居男性で既に実刑判決を受けた中共工作員の孫耀寧、同じく実刑判決を受けた中共工作員の陳軍、そしてロサンゼルス地域の著名な親中共系華人団体関係者らとの密接な往来が確認されている。
現在65歳の孫耀寧は、中共軍に服役後、1990年代初頭に渡米し、カリフォルニア州サンバーナーディーノ郡チノヒルズに居住している。
王愛琳と「恋愛関係」に陥った孫耀寧は、文化・芸術関係者を装って地元で活発に活動し、王の選挙資金に中共の資金を注入するとともに、選挙参謀も務めた。
別の地元住民によると、王愛琳と孫耀寧は非公式のカップルとして各種行事に公然と出席しており、記録によれば、孫耀寧がカリフォルニア州自動車局(DMV)に登録した最終住所は、王愛琳所有の住宅だったという。
2人は複数の団体を共同設立しており、その一つが2018年設立の南カリフォルニア中国人商工会議所である。設立趣旨は「米国南西部の人々と中国との交流促進」とされているが、実態は中共の代弁機関だった。
孫耀寧は「米国華人大型イベントの総合ディレクター」を自称し、長年にわたって大規模イベントを企画・主催し、中共の語り口を広める宣伝活動や中共の重要記念日の祝賀行事を行ってきた。
孫耀寧は2024年12月に逮捕され、2025年10月に中共政府の非合法代理人として活動したことを認め、今年2月、連邦地裁から禁錮4年の判決を受け、現在服役中だ。
検察の量刑意見書は、孫耀寧が長年にわたり「意図的かつ継続的に」中共の秘密代理人として活動し、報告書の作成、資金調達の申請、組織動員および世論工作を通じて、米国の地方政治と中国系コミュニティに影響を及ぼしてきたと指摘している。
孫はまた、別の中共工作員・陳軍と共謀し、米国の地方政治への浸透、台湾関連議題への影響行使、および法輪功修煉団体への反対活動を図っていた。
法廷文書によると、2021年、王愛琳は中共工作員・陳軍と接触している。
陳軍は中共空軍第46師団に6年間服役後、除隊し、天津市政府の駐米西海岸貿易首席代表を務めた。1992年に渡米し、南カリフォルニアで一連の親中共組織を設立して著名な親中共系華人団体代表者となった。
米国の声(VOA)の報道によると、王愛琳は2021年8月、閲兵式など中共の各種行事に頻繁に参加し、習近平とも面会したことのある陳軍と連絡をとった。王愛琳は陳軍に対して自分のウェブサイトの「ニュース」記事の拡散を依頼し「これは(中共)外交部が発信したいものだ」と記した。
2023年5月26日、陳軍はロサンゼルスで逮捕された。2024年11月19日、72歳の陳軍は、中共の指示のもと米国内国歳入庁(IRS)に賄賂を贈り法輪功信仰団体への打撃を図ったとして、連邦地裁から禁錮20か月の判決を受けた。
『カリフォルニア・ポスト』紙の報道によると、陳軍は連邦刑務所での服役中、同房の受刑者に対して自分は「中国のスパイ」であり、自分たち中共のスパイは「FBIより100倍強い」と語ったという。
地元中国語メディアの報道には、親中共系華人団体関係者の張素九、鹿強、宣国軍らが王愛琳の選挙活動を支援する写真が繰り返し登場している。いずれも中共と何らかの関係を持つ人物だ。
張素九は米国華人社団連合会を設立し、中国総領事館と極めて密接な関係にある。鹿強は上海市海外華人聯合会(僑聯)海外委員を務め、中共全国政治協商会議(政協)にも招待されている。宣国軍は米国新疆総商会会長で、かつて中共全国人民代表大会(全人代)代表および新疆企業家協会副会長を歴任した。
四)米国は網を閉じつつある
2017年の時点で、FBIはすでに王愛琳の関係網への聴取と裁判所認可の捜索に着手しており、電信送金と中共のカリフォルニアにおける秘密工作に関して、王の共犯者を含む関係者を重点的に調査していた。
陳軍、孫耀寧が相次いで拘束された後、FBIは王愛琳を捜査対象に絞り込んだ。
2025年4月1日、王愛琳は「外国政府の非合法代理人として活動した」として起訴されたが、起訴状はその時点では封印されたままだった。
2026年3月30日、王愛琳は有罪答弁を行った。5月11日にロサンゼルス市中心部の連邦地裁に初出廷し、同日、米司法省が本件を正式に公表した。
王愛琳が中共の代理人として活動した件について、米国土安全保障省(DHS)のケイティ・ザカリア報道官はFOXテレビの取材に応じ、これは氷山の一角に過ぎない可能性があると述べた。
「徹底的に調査する必要がある。永住権(グリーンカード)保有者だけでなく、敵対国出身の(米国市民も含めて)だ」
「こういったことをした永住権保有者には全面的に取り締まりを行う必要があり、母国に送還されるべきだ」
ザカリア報道官は「米国市民として、私は憤りを感じる」と述べた上で、「この人物は中国共産党の外国代理人として活動しており、甘い対応は許されない。本当に中国へ送還されるべきだ」と語った。
カリフォルニア州中部地区連邦検察のビル・エサイリ検察官は声明の中でこう述べた。
「我が国において外国政府の命に密かに従う者たちは、民主主義を蝕んでいる」
「この司法取引は、中国(正しくは中共)が我々の機関を腐食しようとする企てに対し、断固として国土を守るという我々の最新の成果だ」
FBI反スパイ・情報収集部門のロマン・ロジャフスキー次席局長は声明でこう述べた。
「本件を明確な警告としてほしい。外国政府を代理して我が国の民主主義に影響を及ぼそうとする者は誰であれ、発見され、捜査を受け、法の裁きを受けることになる」
5月11日、FBIのカッシュ・パテル長官はSNSでこう強調した。
「FBIおよびその他の連邦機関は、全国規模でこうした米国の機関への影響工作を積極的に排除しつつある」
おわりに
かつて中共は中国大陸において中華民国を打倒するにあたり、中共地下党員を中華民国の中央から地方に至る党・政・軍の各機関に隈なく潜入させ、政権奪取のために命を賭けさせた。これが重要な手段の一つだった。
しかし中共が政権を掌握すると、これらの地下党員は直ちに過去の功績を踏みにじられ、度重なる政治運動を通じて痛められ多くの者が家族を引き裂かれ、家庭を崩壊させられた。
中共は政権獲得後、国際的な最大の敵である米国に対しても同じ手口を演じてきた。大量の代理人を送り込み、米国政府に隈なく浸透させ、中共による米国転覆・世界支配という政治目的に奉仕させている。
だが、これら中共代理人が事件を起こすや、中共は即座に彼らを切り捨て、米国の法による制裁に任せる。先述した中共工作員・陳軍は、盗聴された電話で自分は「一歩一歩この地位まで這い上がった」「習主席に10年間で3度召見された」と誇らしげに語っていた。
陳軍のiCloudには習近平との写真も保存されていた。陳軍が禁錮20か月の判決を受けたとき、習近平は陳軍のために一言でも口を利いたのだろうか? 否。中共当局者の誰か一人でも陳軍のために声を上げただろうか? 否。
陳軍は中共が米国で展開する統一戦線・浸透工作の一つの駒に過ぎない。事が露見すれば、中共は使い古した雑巾を投げ捨てるかのように切り捨てる。
陳軍が倒れ、孫耀寧が倒れ、王愛琳もまた倒れた。先人の轍は、深く戒めとすべきである。
(大紀元初出)
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