カナダで中共の統一戦線拡大 「直接的な対抗措置の欠如が原因」米シンクタンク所長

2026/04/22
更新: 2026/04/22

カナダにおける中国共産党の「統一戦線」工作をめぐり、米シンクタンク「ジェームズタウン財団」のピーター・マティス所長は、中共に対する直接的な対抗措置の欠如が背景にあると指摘した。

マティス氏は今月20日、越境弾圧の世界的影響を調査中のカナダ下院外交委員会の国際人権小委員会で証言した。これに先立ち、ジェームズタウンが2月に報告書を公表し、中共が統一戦線工作に関連する2000以上の組織からなる世界的ネットワークを構築し、カナダ国内だけでも少なくとも575団体が存在するとしている。

委員会でマティス氏は、統一戦線工作が中共の「主要な手段」であり、「政治闘争や対立のための道具」として機能していると説明。社会団体を創設または掌握し、政治目的に利用していると述べた。

さらに統一戦線は、市民団体や富裕層の代理人、大学、企業、政治家、地方政府、メディア、著名人などあらゆる主体を対象としていると指摘。「脅威を特定し、共産党にとって『危険』とみなされる思想を統制するための終わりなきプロセスだ」と表現した。

保守党のシュヴァロイ・マジュムダル議員(小委員会副委員長)は、中共の統一戦線工作部がカナダのような民主主義国家で「人海戦術的なアプローチ」を展開し、「終わりのない24時間体制の政治キャンペーン」を実施していると指摘した。

ジェームズタウンの報告書は、カナダが人口当たりで統一戦線工作部関連組織の密度が最も高い国であると指摘。これらの組織は「脅威と見なした対象の監視、嫌がらせ、直接攻撃」を通じ、越境弾圧にも利用されているとした。

マジュムダル議員は20日の委員会で、カナダにおける統一戦線工作部組織の密度が米国の「5倍」に達するとし、法輪功学習者やウイグル人、香港出身者などが標的になっていると指摘。その上で、北米の安全保障にどのような特有のリスクをもたらすかをマティス氏に質問した。

これに対しマティス議員は、カナダが中共に対して「直接的な対抗措置を取らなかったことが原因だ」と指摘。1997年、カナダ騎馬警察(RCMP)とカナダ安全情報局(CSIS)の合同チームが公表した報告書に言及し、「当時は推測的な試みだったが、何かが起こり得るという認識にとどまっていた」と述べた。

同報告書は、中国の情報機関や富豪、犯罪組織がビジネスや政治への影響力拡大を狙ってカナダに浸透している可能性を調査したものだが、当時は当局により懐疑的に受け止められた。

マティス議員は、今回の報告書が示すのは「対抗措置や調査、議論が欠如した場合に何が起こるか」だと指摘した。

統一戦線は中国共産党の「法宝」

マティス議員は、中共の統一戦線の目的について「友を動員し、党の敵を孤立させ、あるいは打撃を与えること」にあると説明し、1930年代に毛沢東が明確に示していたと述べた。

さらに、統一戦線に対する毛の位置付けは習近平政権に至るまで一貫しており、「国際的・思想的な戦場の中で中共政権の台頭を促進するための『法宝』」とされてきたと指摘した。

また統一戦線工作部は、監視や威圧といった越境的弾圧を支援するほか、民主主義国家の市民と政府の間に「入り込み」、共産党の意向を代弁させる役割も担うとした。

加えて、政治家への影響力行使を通じて意思決定の公正性を損ない、情報活動や技術移転の促進にも利用されていると指摘。「党の関与を隠しながら政治的権力を構築・行使する万能の道具だ」と述べ、「最終的な目的は転覆と統制にある」と強調した。

自由党のズベリ議員からカナダにおける越境弾圧の現状について問われると、マティス氏は統一戦線工作が「着実に拡大している」と説明。以前は少数の個人が標的だったが、現在は「動員の試み」へと変化し、政治家周辺の団体や大学の孔子学院などを通じて統制強化が進んでいるとした。

また、何が合法で何が違法かを明確にする法整備が必要だとし、情報機関や警察には越境弾圧や外国干渉を調査・阻止する責任があると指摘。「容認されない行為であることを示し、直接的な結果を伴わせる必要がある」と述べた。

オタワのシンクタンク「マクドナルド・ローリエ研究所」の上級研究員マーカス・コルガ氏も同日証言し、越境弾圧を「国家安全保障上の脅威」として扱う必要があると訴えた。

コルガ氏は「外国の権威主義体制やその国内の協力者が処罰されないまま活動できる状況を終わらせるべきだ」と強調。そのうえで、警察・情報機関・政府間の連携強化が必要だと述べた。

さらに、「民主主義の健全性と、脅迫や嫌がらせ、威圧から自由に表現する権利の防衛は、すべての国民に関わる問題だ」と訴えた。