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「台湾侵攻は避けられない」 習近平の独裁体制に潜む危機感

2025/10/25
更新: 2025/10/25

米軍当局は近年、中国共産党(中共)が台湾に対して武力行使に踏み切る可能性を繰り返し警告しており、2027年を有事の想定時期として防衛計画の策定を進めている。北京大学の元教授は、中共内部の情報筋の話として、中共は2027年の2つの時点で台湾侵攻の可能性を検討していると述べた。習近平は台湾海峡戦争を通じて、中共第21回党大会における4期目の続投を実現しようとしているという。

米インド太平洋軍の元司令官フィリップ・デービッドソン氏は、2021年に米上院軍事委員会で証言し「台湾は中国の戦略的野心の中心にある」と述べ、中共が今後10年、あるいは6年以内(2027年まで)に台湾侵攻を行う可能性があると警告した。この発言は米国防当局に大きな影響を与え、2027年は「デービッドソン・ウィンドウ」と呼ばれるようになった。

元北京大学教授の袁紅冰氏は大紀元に対し、中共の台湾侵攻を理解するには軍事的な観点のみならず、政治的背景を重視する必要があると指摘した。

袁氏によると、習近平は「終身執政」を目指しており、2027年に予定される第21回中共の党大会で4期目を確保できるかどうかが、個人の政治的命運を左右する。「現在、中国国内の矛盾が激化する中で、習近平は権力維持のため、粛清を繰り返している。党大会前に戦争を引き起こし『台湾統一』を成果として掲げることで、党大会の開催を遅らせる、あるいは4期目続投の正当性を主張する狙いがある」と述べた。

袁氏は、こうした構図は過去にも見られたと説明した。習近平は2021年7月1日の中共創立100周年の式典で、中国は「全面的に小康社会を実現し、絶対的貧困を歴史的に解消した」と宣言した。その翌年に開かれた第20回党大会では、慣例を破って3期目を開始した。袁氏は、習近平が台湾統一を次の「歴史的成果」として利用する可能性が高いと分析している。

同氏は習近平の決断は軍事的条件ではなく、イデオロギーと権力延命の観点から下されると語る。「習近平はいわゆる民族復興を掲げているが、実際には国際共産主義運動の復興を目指している。台湾統一は、中共の極権主義的な世界秩序拡張戦略の突破口と位置づけられている」と述べた。

軍内部では粛清が続き、不安定要素が指摘されているが、袁氏は習近平が特務機構を通じて軍を掌握しているとする。第20回党大会後、中央軍事委員会は軍級以上の幹部の秘書任命について、すべて中央の承認を必要とする規定を導入。秘書は中央に直接報告できる立場にあり「習近平の軍中の目と耳」とされている。袁氏は「習近平はこの統制システムによって、戦時においても軍隊を掌握できると確信している」と語った。

また、習近平は台湾有事において中国側が地理的優位を持つと判断しているとみられる。「自国の近海で戦えば誰も恐れない」という発言が軍や国営メディアで繰り返されており、中共側は米軍の介入を抑止できると認識しているという。

しかしその一方で、中国国内では不満が高まりつつある。袁氏は「中国社会は再び大規模な民衆蜂起の瀬戸際にある」と述べ、「もし習近平が戦争を起こせば、その戦争が中共体制崩壊の引き金となる可能性がある」と警告している。

中共の軍事力は米軍に比べ依然として技術面で劣り、軍内部の腐敗によって装備の実戦能力に疑問があるとの指摘も出ている。袁氏は中共は2018年に憲法と党規約を改正し、「台湾統一」を政権の基本方針として明文化している。袁紅冰氏は、習近平が共産主義の復興も台湾の統一も「自分の指導の下でなければ実現できない」と主張し、この論理を根拠に終身的な権力維持を正当化していると指摘した。「こうした視点から見れば、中国国内で経済が低迷しても、官僚機構に腐敗が広がっていたとしても、台湾侵攻に向けた大きな戦略方針が変わることはない」という見方を示した。

さらに、独裁者には反対意見が届きにくい構造があると指摘する。部下は上の意向を忖度し、独裁者が聞きたい言葉だけを伝えるため、指導者は情報の牢獄に閉じ込められ、正確な判断が下せなくなるという。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は当初「一週間で勝利する」と叫んだが、長期化する戦争は独裁者の判断が根本的に誤っていたことを示していると分析した。

一方、袁氏は習近平が軍を完全に掌握しているかのように見えるが、中国では一般市民から共産党幹部に至るまで、独裁体制への強い不満と怒りが渦巻いていると述べた。その空気はすでに臨界点に達しており、わずかな引き金で体制全体が揺らぐ可能性があるという。

袁氏は中共内部の学者の言葉を引用し「中国はいま、全面的な人民反抗と蜂起の前夜にある。必要なのは歴史的な契機だけだ」と述べた。そのうえで、もし習近平が台湾への戦争に踏み切れば、それは単なる台湾海峡の衝突ではなく、中共体制そのものを終焉へと向かわせる引き金となるだろうと強調した。

呉旻洲
清川茜
エポックタイムズ記者。経済、金融と社会問題について執筆している。大学では日本語と経営学を専攻。