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中共外相の欧州訪問で本音が露呈 米国が中国に矛先を向けることへの懸念

2025/07/07
更新: 2025/07/07

『サウスチャイナ・モーニング・ポスト』は関係者の話として、中国共産党(中共)の外交部長・王毅氏は、最近行われた欧中ハイレベル戦略対話の場で、欧州連合(EU)のカラス外交安全保障上級代表に対し、「中共はロシアがウクライナ戦争で敗北することに耐えられないと述べた。なぜなら、それによってアメリカの戦略的重心が中共に向けられることになるからだ」と述べたと報じた。

この発言は、中共が世界のパワーバランスや自国の安全保障に対して強い懸念を抱いていることを示していると分析されている。

『サウスチャイナ・モーニング・ポスト』は7月3日にこのニュースを報じ、王毅がEU外交のカラス氏と一対一で会談した際にこのような発言をしたと伝えている。王毅の発言は、EUが把握している中共の立場と、中共が公の場で示している立場とが一致していないことを裏付けるものでもある。

ロシア・ウクライナ戦争が始まって以来、中共は一貫して「中立的な立場」を主張してきたが、実際には長期間にわたりロシアへ軍需物資を供給してきたと見られている。

専門家によると、ロシアは中共にとって戦略的なパートナーであり、アメリカからの圧力をある程度分散させる役割を果たしている。王毅の発言は、中共が国際的な勢力均衡や国家の安全保障に深い懸念を抱いていることを反映している。

アメリカの時事評論家・唐靖遠氏は次のように述べている。
「中共はロシアが迅速かつ圧倒的な勝利を収めることを望んでいない。なぜなら、それはロシアを非常に強大な存在にし、中共の利益と相反するからだ。しかし一方で、ロシアが急速に敗北することも望んでいない。そうなれば中共にとっても大きな損失となるからだ」

王毅とカラス氏の会談はおよそ4時間にわたって行われたが、その中で中共側は「アメリカが間もなく全ての力を共産中国に向けるだろう」との見解を示した。これによりEU側の官僚は、王毅がカラス氏に政治的な抗議を行っていると受け取った。

また、中共がアメリカの戦略転換を利用して欧米間の連携を分断し、ロシア・ウクライナ戦争を長期化させてアメリカの力を分散しようとしているとみなしている。

時事評論家の鄭浩昌氏は次のように指摘している。
「ロシア・ウクライナ戦争は、アメリカの力を牽制する防波堤となっている。王毅がカラス氏に語った内容は本音だろう。ただ、EUはこれまで中国がそこまで非道徳的な行動を取るとは一方的には考えていなかったと思う。しかし、中共は利益のためなら立場を簡単に翻すならずものの政権なのだ」

唐靖遠氏はさらに次のようにも述べている。
「中共にとって最も理想的な状態は、ロシアとアメリカ、ヨーロッパ、そしてウクライナがヨーロッパで膠着し、長期にわたって戦争を続けることだ。これが中共にとって最も有利な状況なのだ。同時に、アメリカの多くの資源と精力をヨーロッパに向けさせることで、中共はアジア太平洋地域や台湾海峡での圧力を大きく緩和できる」

欧中間の最大の摩擦の一つは、ロシア・ウクライナ紛争における中共の立ち位置だ。EUは長年にわたり、中共がロシアに軍需物資を提供していると批判しているが、中共側はこれを認めていない。

また、台湾海峡の平和に関しても、カラス氏は改めて深い懸念を表明し、中共による武力行使による台湾侵攻に明確に反対の立場を示した。

さらに、『ブルームバーグ』は関係者の話として、中共当局が今月末に予定されていた欧中首脳会議の一部議程をキャンセルし、当初2日間の予定を1日に短縮したと報じている。これは、EUと中共との緊張関係が一層強まっていることを浮き彫りにするものだ。

最近、中共はレアアースなどの重要鉱物の欧州向けの輸出を制限し、EUが中共に対して強硬な姿勢を取ることへの報復や脅しを行っている。中共は重要鉱物を使って欧州を圧迫し、ウクライナ支援の規模を抑制しようとしている。

唐靖遠氏は次のように述べている。
「欧州はレアアースやその他の非常に重要な資源のサプライチェーンを中国に大きく依存している。中共はこのカードを使って欧州に圧力をかけ、ウクライナ支援の規模を抑えようとするだろう。ロシアとウクライナの戦争がほぼ均衡したまま維持されることが、中共にとって最も望ましいのだ」