米下院の超党派議員24人が、中国・杭州市に本拠を置くロボット開発企業Unitree Roboticsに対する連邦レベルでの調査を求め、国家安全保障上の懸念を表明した。議員らは5月6日付で、ヘグセス国防長官、ルトニック商務長官、連邦通信委員会(FCC)のブレンダン・カー委員長宛てに書簡を提出した。
この書簡は、下院対中国共産党(中共)特別委員会の委員長であるジョン・ムーレナー議員と、同委員会の民主党筆頭議員ラジャ・クリシュナムルティ氏によって主導された。Unitreeが中国人民解放軍(PLA、中共軍)とつながりのある機関や、中国共産党関連団体と「明確な関係を持っている」と指摘している。
ムーレナー議員は5月7日の声明で、「中共軍と関係のあるロボットが、アメリカの刑務所や陸軍の施設で実際に稼働しているという事実は、我々に警鐘を鳴らすものだ」と述べ、「これらのロボットは単なる機械ではなく、中国共産党の支援を受けた潜在的な監視機器でもある」と警告した。
議員らは、3つの機関に対し、Unitreeが中国の軍事目標の推進に果たした役割について、直ちに調査を行うよう要請した。国防総省に対し、同社を「中国軍事関連企業」として指定するよう求めたほか、商務省には同社をエンティティ・リスト(輸出規制対象企業リスト)に加えるよう要請。連邦通信委員会に対しては、同社製品をアメリカの通信インフラで使用禁止とするカバード・リストへの追加を求めている。
Unitree Roboticsは2016年に中国・浙江省で創業され、ヒト型ロボットや四足歩行ロボット(いわゆる「ロボット犬」)を開発している。書簡によると、同社製品は、アメリカ国内の警察や矯正施設、軍関係機関などで導入されている。
例えば、フロリダ州ポートセントルーシー警察は昨年6月、2万5千ドルの補助金で購入したロボット犬を麻薬捜査に投入したと発表。
また、ワシントン州のプルマン市警察も昨年10月に同社製ロボット犬を導入すると発表した。25ポンド(約11キログラム)の荷物運搬や映像・マッピング機能を活用した運用を計画している。
こうした動きを受け、無人機関連の業界団体「AUVSI(全米無人システム協会)」も5月6日に声明で懸念を示した。「ドローン分野で中国製に依存した過去の過ちを繰り返すべきではない」と警鐘を鳴らし、議会の対応を支持した。
懸念事項
下院議員らは書簡で、Unitree Roboticsと中共との深いつながりを詳しく記した。
書簡によると、UnitreeのCEOである王興興氏は、今年2月に中共の習近平と国内の主要企業幹部との間で非公開で行われた会合において、「重要な地位」を占めていたという。
この会合について、香港の経済調査会社Gavekal Dragonomicsの副中国リサーチディレクターであるクリストファー・ベドール氏は、かつて大紀元に対し、「中国(中共)政府がアメリカとの技術競争で民間企業の力を必要としているという暗黙の認識だ」とコメントした。
さらに、Unitreeは中国・杭州市の政府から多額の補助金を受けており、同市の1400億ドル規模の科学技術基金の支援も受けていると報告された。同社はまた、軍民融合プログラムにも参加しており、「杭州ハイテク区」という軍民融合の拠点エリアに拠点を置いている。
米国務省によれば、中国(中共)は合法・非合法を問わず先端技術を入手することで、軍事力の強化と優位性の確保を図っているとされる。
議員らは、中国国防科技大学の資料を引用し、Unitreeが中国のAI分野拡大において、ファーウェイや中芯国際集成電路製造(SMIC)と並ぶ「中核的存在」であると指摘した。なお、ファーウェイとSMICはいずれも、米国防総省が指定する「中国軍事企業リスト」に掲載されている。
議員らが最も緊急性が高いと警告しているのが、Unitree製品の「リモート・デジタル・アクセス機能」だ。
書簡によれば、2025年3月にサイバーセキュリティ研究者が、Unitree製ロボットに「CloudSail」と呼ばれる未公開のリモートアクセス機能が事前にインストールされていることを発見。この機能は初期設定で有効化されており、ロボットが中国国内のUnitreeのサーバーへ自動的に接続されるという。
また、Unitreeのプライバシーポリシーによると、同社はユーザーのデータを中国国内で保管しており、中共の国家情報法やサイバーセキュリティ法に基づき、中共当局がデータ提供を命じることが可能とされる。
さらに、同社のロボットがアメリカ国内の通信インフラにも接続されていることから、議員らは「悪意ある勢力による遠隔監視やデータ収集」を通じて、重要インフラが脅かされるリスクがあると強く懸念を示している。
書簡には、ジョン・ムーレナール議員やラジャ・クリシュナムルティ議員のほか、以下の下院議員らが署名している。
ロブ・ウィットマン、キャシー・キャスター、アンディ・バー、アンドレ・カーソン、ダン・ニューハウス、セス・モールトン、ダリン・ラフッド、ロ・カンナ、ニール・ダン、ミキ・シェリル、ダスティ・ジョンソン、ヘイリー・スティーブンス、リッチー・トーレス、カルロス・ヒメネス、ションテル・ブラウン、ガス・ビリラキス、グレッグ・スタントン、ヤング・キム、ジル・トクダ、ネイサン・モラン、ザック・ナン、アシュリー・ヒンソン。
ヒンソン議員は5月7日、Xで「警察署であれ、ロボットであれ、アメリカ国内に共産党の影響力が忍び込む手段はますます巧妙になっている。Unitreeは、米国民に対する技術の兵器化を行っており、禁止・制裁対象とすべきだ」と投稿した。
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