米主要情報機関である国家安全保障局(NSA)のティモシー・ホー局長とウェンディ・ノーブル副局長が解任された。複数の政府関係者と連邦議員が確認した。アメリカの国家安全保障体制への影響が懸念されている。
この人事は、米紙ワシントン・ポストが最初に報じ、CNNやAP通信など複数のメディアが独自の情報源により追随報道を行った。
局長・副局長が同時に解任 理由は不明
ティモシー・ホー氏は、NSA局長に加えて米サイバー軍の司令官も兼任しており、軍のサイバー防衛において、中心的な役割を担っていた。
現在のところ、両氏の更迭理由は明らかにされていないが、関係者によると、サイバー軍副司令官のウィリアム・ハートマン中将が、今後NSA局長およびサイバー軍司令官の職務を暫定的に兼務する見通しだと言う。
米国防総省、NSA、サイバー軍は、いずれもこの件に関して公式なコメントを出しておらず、背景に人事刷新の意図があるのかについても現時点では不明だ。
ホワイトハウスでも人事異動 政権内で進む刷新
同日、ホワイトハウス国家安全保障会議(NSC)でも幹部スタッフ5人以上が免職されたと報じられているが、NSAの人事との関連は確認されていない。
トランプ政権は、2024年2月以降、軍高官の更迭を相次いで実施しており、これまでにチャールズ・Q・ブラウン元統合参謀本部議長、リサ・フランチェッティ元海軍作戦部長、ジェームズ・スライフ元空軍副参謀長らが職を解かれていた。
NSAとサイバー軍の重要性
NSAは、暗号解析や通信傍受を専門とするアメリカ有数の情報機関であり、大統領や高官に対して、安全保障上の重要情報を提供している。
一方、サイバー軍は2010年に創設され、外国からのサイバー攻撃への防衛や報復を担う組織として発展して来た。とりわけ、外国勢力による選挙干渉への対処において、中心的な役割を果たしている。
2018年の中間選挙では、サイバー軍がロシアの「インターネット調査機関(IRA)」に対し、一時的な通信妨害を実施し、同組織による選挙干渉を妨げた。2020年米大統領選でも、イランのハッカーによるサイバー攻撃を未然に防いだ実績があった。
民主党議員が強く反発 「国家安全保障を脅かす」
今回の解任を受け、議会内の民主党有力議員らは強く反発した。
上院情報委員会の民主党筆頭議員、マーク・ワーナー氏は、3日夜に声明を発表し、
「ホー氏は卓越した指導者だった。中国による『ソルト・タイフーン』と呼ばれる大規模サイバー攻撃が示すように、我が国は前例のない規模の脅威に直面している。こうした状況下での解任が、安全保障に資するとは考え難い」
と、厳しく批判した。
また、下院情報委員会の民主党筆頭議員であるジム・ハイムズ氏も、
「ホー氏は誠実で率直、法を重んじ、国家の安全を最優先に考える指導者だった。そうした資質こそが、現政権において解任の理由とされてしまったのではないかと懸念している」
と、述べた。
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