3月17日、中国安徽省安慶市で医療事故の被害者の女性(34歳)が自殺した。
女性は歯科治療中に医師によって誤って健康な歯を抜かれた(麻酔なし)後、麻酔なしでその抜いた歯を誤ったところへ装着された。痛みに震えて麻酔を求めても断られた女性は術中や術後の激痛などに苦しみ、権利擁護するも病院側は責任逃れをし、関連部門も無作為。そうして絶望の末に自殺をした。
今回の医療事故でも、加害者側や政府機関のずさんな対応と、被害者が声を上げても救われない中国の現状を浮き彫りにした。
泣き寝入り
呉さんは3月12日、病院(「安慶市立病院」)で親知らずの抜歯を受けた。
しかし、医師は親知らず2本と、(誤って)健康な歯を1本抜いてしまった。さらにその後、麻酔なしで誤って抜いた健康な歯を(誤った場所である)親知らずの場所へ装着した。
麻酔は抜く予定の親知らずのところでしていたため、誤って抜かれた健康の歯の場所は麻酔が効いておらず、無理やり抜かれた。
激痛に震える呉さんは、医師に対し、泣きながら麻酔をするよう求めたが拒否された。呉さんは3人によって体を押さえられ、麻酔なしで1時間かけて歯の装着の激痛に耐えた。
術後から、呉さんの顔は腫れ上がり、歯茎からは出血が止まらず、食事ができない状態が続いた。
激しい痛みに耐えながら彼女は何度も病院に掛け合ったものの、医師と病院は責任を認めず、対応を先延ばしにてきた。
関連部門も無作為で、納得のいく対応をしてもらえなかった。
日が経つにつれ、いい加減に装着された箇所などは炎症を起こしてただれ、激痛で5日もごはんを食べられず、睡眠もとれなかったという。
その後女性は3月17日、呉さんは自身のSNSに「このアカウントが更新されなくなった時は、私はもういない(死んだ)ということです」と最後の投稿を残して、その日のうちに飛び降り自殺した。
呉さんの兄は地元メディアの取材に対して、「医師は誤って抜歯したことを認めず、病院側も隠蔽を図りカルテを改ざんしてごまかした。妹は他の病院で診てもらおうとしたが、問題の病院は地元の三甲(最高ランク)病院であるためその病院からの圧力で妹の引き受けを拒否した」と訴えた。
世論の注目や中国メディアの報道もあり、プレッシャーを受けた現地の衛生当局の職員は「確かにそのようなことはあった」と認め、「関連部門は調査している」と答えている。
「命をかけなければ声は届かないのか」
中国では過去にも医療事故で泣き寝入りした被害者は無数おり、こうした悲劇は幾度となく繰り返されてきた。
2023年には河南省で女性患者が誤診により不要な手術を受けた。医療機関は責任逃れをし、彼女は絶望の末に自殺した。
2024年には広東省で男性患者が誤まった治療を受けて重度な後遺症を負った。しかし、病院との裁判で敗訴した。
命をかけなければ声が届かない社会、しかし命をかけたところで、何かが変わるという希望は相変わらず薄い。
モラル欠如、隠蔽体制、利権との癒着、「安定維持」を盾にした権利擁護・抗議者への弾圧…こうした医療被害者を死へと追いやったのは中国社会と言っても過言ではない。

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