ウォール・ストリート・ジャーナルの報道によると、多くの西側ハイテク企業が「Anything But China(ABC)」(「中国以外ならどこでも」)戦略を採用し、中国からのサプライチェーン移転を加速させている。
米中の貿易摩擦が深まる中、企業は従来の「中国+1」戦略にとどまらず、大規模な生産拠点の移転を進めている。
マレーシア半導体産業協会の会長、ウォン・シウ・ハイ氏は「すべての企業が中国の代替拠点を探している」と述べた。企業の生産戦略は、「ジャスト・イン・タイム(Just in Time)」から「ジャスト・イン・ケース(Just in Case)」へと転換しているという。
都市封鎖と半導体規制が転換点に
中国共産党政府が実施した厳格なゼロコロナ政策により、iPhoneや自動車を含む幅広い産業のサプライチェーンが混乱した。これを契機に、多くの西側企業が中国から撤退し、ベトナムやインドへの移転を加速させた。
さらに、米国が中国の半導体産業に対する輸出規制を強化したことで、この動きは一層加速した。以前、業界幹部の間では、「トランプ氏がホワイトハウスに復帰したら、『脱中国』の流れがさらに加速する」との見方が広がった。トランプ政権は、すべての中国輸入品に10%の追加関税を課し、今後さらに引き上げる方針を示している。
組立工場移転から部品サプライチェーンの再編へ
格付け大手S&Pの報告書によると、現在のサプライチェーン移転は、センサーやプリント基板(PCB)、電力電子機器といった重要部品の製造にも及んでいる。これらの生産には多額の初期投資が必要となるため、中国からの撤退は一時的な動きではなく、長期的な傾向として定着しつつある。
米国の対中輸出規制により、中国企業の先端半導体や関連機器の調達が制限され、半導体サプライチェーンの移転が急速に進んでいる。
2022年に米国が中国へのAI半導体輸出を禁止した後、AIサーバーの生産拠点はメキシコやマレーシアへと移行しつつある。さらに、CHIPSプラス法により、米国の補助金を受けた企業は10年間にわたり中国での生産能力を拡大できなくなった。
米半導体製造装置大手のアプライド・マテリアルズやラム・リサーチなどは、中国のサプライヤーを排除する動きを強めている。また、先進エネルギー工業は、中国工場の閉鎖を決定し、生産拠点をフィリピンやメキシコに移す計画だ。
ベトナムは半導体産業への投資誘致を積極的に進めており、税制優遇措置を導入する方針を示している。米半導体大手エヌビディアは、すでにベトナムに研究開発拠点を設置し、マーベル・テクノロジーは同国のエンジニアチームを拡充する一方、中国の開発部門の人員削減を進めている。
電子機器のサプライチェーンが東南アジアへシフト
ススマートフォンからノートパソコンに至るまで、電子機器の供給網も急速に中国以外へと移転している。
米中経済界の調査によると、30%の企業が生産拠点の移転を計画しており、4分の1のハイテク企業はすでに中国のサプライチェーンからの撤退を開始している。
2023年、東南アジアへの海外直接投資は2300億ドルに達し、2018年比で48%増加した。インテルやマイクロン・テクノロジーはマレーシアやシンガポールへの投資を拡大。ヒューレット・パッカードはタイに新たなノートパソコン生産ラインを設置し、マレーシア・ペナン州では最先端のAIサーバーの製造が進んでいる。
従来、中国が世界のノートパソコン生産のほぼ100%を占めていたが、TrendForceの予測では2024年にはその割合が80%まで低下する見通しだ。ベトナムやタイの生産能力が急速に向上しており、タイのノートパソコン輸出量は過去4年間で約8倍に増加している。
米中関係の悪化による影響は中国企業にも及んでおり、西側企業の要請を受けて海外工場を設立する動きも出ている。
例えば、中国の光通信機器メーカーであるEoptolink Technology(新易盛通信技術)は、タイでの生産拠点拡大を進めている。
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