アメリカ政府の行政効率向上を目的とする政府効率化省(DOGE)は、多様性、公平性、包括性(DEI)に関連する104件の契約を解除し、10億ドル以上の政府支出を削減したと発表した。
DOGEは1月31日、Xで最新の活動報告を更新し、DEI関連の契約を解除した25の連邦機関と、それに伴う削減額の一覧を公開した。
25の連邦機関でDEI関連契約を解除 人事管理局の削減額が最大
今回の契約解除で最も多くの契約を取り消したのは財務省で、21件の契約を解除し、2524万7783ドル(約39億1846万円)を削減した。次いで保健福祉省が15件の契約を解除し、2818万7448ドル(約43億7469万円)の削減となった。
特に人事管理局は、3件の契約を解除し、総額4億9495万6233ドル(768億1721万円)を削減。これは1件あたり約1億6500万ドル(約256億800万円)に相当し、今回の削減額の中で最も大きな割合を占めた。
DOGEによると、これら104件の契約解除により、総額10億600万7792ドル(約1553億円)が削減されたという。
トランプ大統領の行政命令でDEIプログラムの廃止が加速
最近のインタビューで、マスク氏はDOGEが連邦政府の支出が最大2兆ドル削減につながると期待していると述べた。また、1月31日に発表したDOGEの最新の活動報告では、この取り組みが成果を上げ始めていることが示されている。
DOGEの今回の措置は、ドナルド・トランプ大統領が1月20日に発出した行政命令に基づいている。
この行政命令は、連邦機関におけるDEIおよびDEIA(多様性、公平性、包括性、アクセシビリティ)プログラムの即時廃止を指示し、「違法かつ不道徳」であり、「莫大な税金の浪費」と「逆差別を助長するもの」だと批判されている。
トランプ氏は大統領令の中で、「この状況は本日をもって終わる。アメリカ国民は、すべての人に平等な尊厳と敬意をもって接し、貴重な税金を『アメリカを再び偉大にする』ためだけに使う政府を持つべきだ」と強調した。
これを受け、人事管理局は、すべての連邦機関に対し、DEI関連の研修やプログラムの即時中止、さらにはDEI担当職員の解雇を含む措置を直ちに講じるよう指示している。
DEIに批判的な人々は、こうしたプログラムが能力主義を損ない、特定のグループを優遇することで逆差別を生むと主張する一方、支持派はこのような方針は多様性を高め、それによって組織が強化されると訴えている。
DOGEの設立経緯 マスク氏が主導し、2兆ドルの支出削減を目指す
DOGEは、トランプ氏が1月20日に発出した大統領令により設立し、オバマ政権時代に創設した「アメリカデジタルサービス」を「アメリカDOGEサービス」に改称する形で発足した。
当初、DOGEのトップにはバイオテクノロジー企業家のヴィヴェック・ラマスワミ氏も指名されていたが、その後、プロジェクトから外れ、現在はマスク氏1人が主導している。
マスク氏は最近のインタビューで、DOGEの最終目標として、連邦政府の支出を最大2兆ドル削減することを目指していると発言。今回のDEI関連契約の解除は、その第一歩であると示唆した。
DOGEの構想は、2024年11月にマスク氏とラマスワミ氏がウォール・ストリート・ジャーナルに共同寄稿した記事でも言及していた。彼らはそこで、「肥大化し続ける官僚機構は、わが国の共和制にとって存亡の危機となっている。政治家たちはそれを長年黙認してきた」と批判し、DOGEの目的は「単なる報告書を作成したり、記念式典でリボンを切ったりするのではなく、実際に政府支出を削減することだ」と強調していた。
各連邦機関にDOGEチームを設置、財政効率化を推進
大統領令では、各連邦機関にDOGEチームを設置することを義務付け、最低4名の職員を配置するよう指示している。
これらのチームはDOGEと連携し、行政の効率化、政府技術の近代化を推進する役割を担う。最終的には政府支出の削減と業務の最適化を目的としている。
民間企業でもDEI見直しの動きが進行
DEIに対する見直しの動きは政府にとどまらず、民間企業にも広がっている。
キャタピラー、マクドナルド、サウスウエスト航空、トヨタ、ウォルマートなどの大手企業も、DEI関連の取り組みを縮小している。
この動きの背景には、2023年7月のアメリカ最高裁の判決がある。最高裁はこの判決で、大学入学におけるアファーマティブ・アクション(積極的差別是正措置)を違憲と判断した。この決定を受けて、企業の間でもDEIの在り方について再評価が進んでいる。
一方、こうした反DEIの動きに対し、民主党議員や人権擁護団体からの反発もある。
人権キャンペーンは、「企業のDEI撤退は、ビジネスの成功や多様な人材の確保に悪影響を及ぼす」と警鐘を鳴らしている。
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